3月21日 編集手帳
ベトナムのことわざという。
<剣には二枚の刃、
人の口には百枚の刃>。
もう何か月になるだろうか。
相撲協会と貴乃花親方が険悪な関係になってからというもの、
親方の言動を耳にするたびコラムに引きそうになった。
それはそうと、
思い起こせば事情聴取を拒むなど、
あまりに何も言わないせいで世間を困惑させた時期もある。
それがどうだろう。
弟子の十両・貴公俊(たかよしとし)(20)の暴行事件が起こった後、
親方には明らかな変化がうかがえよう。
「深刻なことです」
「言い訳がつきません」。
記者に囲まれながら、
久しぶりに“刃”のない言葉で語る姿をテレビで拝見した。
今場所早々から無断欠勤を繰り返すという不可解な態度も影を潜めたか。
協会に謝罪し事情聴取も長時間にわたり受けたという。
師弟とも処分は免れないものの、
せめてもの慰めは暴行を受けた付け人のけがが軽いことだろう。
これを機に協会と歩みよって真の暴力根絶をめざす取り組みをファンは望んでいよう。
なにせこの数か月間に被害者、
加害者の両方の側を経験したのだから。
むろんいい話ではないが、
今のところは不思議とほっとする。