2021年6月3日 読売新聞「編集手帳」
一夏の子供たちの冒険を描く米映画『スタンド・バイ・ミー』(1986年)が先週、
地上波で放送された。
また見てしまった。
大人になった主人公が冒険の旅で心を開いて打ち解け合った友の訃報に接し、
思い出と共に悼む場面が有名だ。
心の中でつぶやく。
「12歳だったあの時のような友達はそれからできなかった。
誰でもそうなのではないだろうか?」
この問いは何も、
「12歳」という年齢に狭くかかるものではあるまい。
少年期には大なり小なり、
人生に影響する友達との出会いが「誰でも」あるということだろう。
3人組の人気バンド「いきものがかり」のうち水野良樹さん(38)と山下穂尊さん(38)は小学生の頃、
金魚にエサをやる「生き物係」をしていた。
バンド名はそこから来ている。
『ありがとう』などのヒット曲の向こうに、
「スタンド・バイ・ミー(そばにいて)」を地でいく友情を浮かべてきたファンにはさみしいニュースだろう。
2人がそれぞれの道を歩むことになった。
山下さんが脱退し作曲などの活動に専念するという。
いい別れになってほしい。
出会いのまぶしさが消えないように。