2021年4月22日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
ベトナムでは海外で働きたい人の渡航先として日本の人気が高まっていて
2019年には全体の半数を超える約8万人が日本に渡った。
しかしいま新型コロナウィルスの感染拡大の影響によって
渡航先を別の場所に帰る“日本離れ”が進んでいるという。
ベトナムの首都ハノイ。
3月 日本の新たな在留資格を取得するための試験が初めてベトナムで実施された。
この日は学科試験に加え鉄筋の加工などを行う実技の試験が行われた。
日本政府が一昨年
人手不足の解消につなげようと始めた新たな制度。
これまで技能実習生も含め多くの人材を日本に送り出してきたベトナムは
その重点国のひとつである。
(受験者)
「しっかり準備してきたので合格できると思います。
生活を良くしたいです。」
しかしいま新型コロナウィルスの感染拡大の影響が日に日に深刻になっている。
首都ハノイにある日本に技能実習生を送り出している企業。
ベトナム各地から集まった若者が日本で働くことを希望し
日本語の習得に励んでいる。
しかし日本とベトナムとの行き来が制限されているため
日本への入国ができない人が相次いでいる。
(去年10月に日本へ入国する予定だった女性)
「私の渡航のために家族がお金を借りているので
日本に行けない状態っが続き心配です。」
この企業で日本への送り出しを担当しているグーさん。
日本への渡航を諦めないようサポートを続けている。
(グーさん)
「日本のお客さんと連絡を取っているので
情報が入り次第お伝えしますね。」
さらに日本で働きたいという人を見つけるのも難しくなっている。
渡航の見込みが立たないだけでなく
感染が拡大する日本で生活をするのjが怖いという感情が広がっているためである。
(担当者)
「先週 申込者がいたと言っていたけど
どうなった?」
(リクルーター)
「検討すると言っていたけれどたぶん無理ですね。」
「今は誰も紹介できない?」
「厳しいですね。」
(リクルーター)
「日本はいま感染者が多く
行くことに不安を感じています。
コロナの影響は本当に大きいですよ。」
一方 感染を抑え込んだことで海外で働きたいという人たちをひきつけているところが台湾。
3月 グーさんの企業で台湾で働くための説明会が行われた。
集まったのは若者約50人。
このところの台湾の新たな感染者は1日数人程度である。
(参加者)
「台湾の感染状況は安定しているので台湾に行きたいです。」
もともとは日本で働きたいと考えていた男性。
しかし父親を亡くし
家族を支えるためにも
少しでも早く渡航できる台湾に行くことにしたという。
「日本の感染状況は悪化していて
いつ行けるか分かりません。」
海外で働こうというベトナム人の間で広がり始めた日本離れ。
グーさんは焦りを感じている。
(海外に人材を送り出す企業 グーさん)
「海外で働きたい多くの人は
なるべく早くお金を稼ぎ技術を学びたいと思っています。
日本政府が入国緩和のような政策を実施し
ベトナムから出国できない人たちの問題を解決するために注力してほしい。」
感染が抑え込めているかどうかがベトナムの労働者に影響を与え始めている。
ベトナムの人たちが感染拡大のリスクも重視している背景には
ベトナムで感染拡大の抑え込みを実感できていることがある。
4月にホーチミンで開かれたイベントでは大勢の人が飲食などを楽しんだ。
ベトナム国内の感染者数は累計で約2,800人。
ベトナムでもこの1年の間に市中感染が広がったことはあるが
当局などはそのたびに感染者の行動を洗い出し
接触した人やさらにその接触した人と接触した人にも連絡を取り
PCR検査の実施や隔離を行うなど徹底した対策を一貫して続けてきた。
こうしたことで拡大を抑え込んだ日常を維持しているベトナムの人たちからすれば
感染拡大が続く日本に行くのをためらう気持ちが強くなっているのである。
海外にベトナムの労働者などを送っている関係者は
日本は引き続き有望な派遣先であり続けるだろうとみている。
それは日本はまだ比較的高い稼ぎが期待できると受け止められていて
その魅力自体が失われているわけではないからである。