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オウム無差別テロの“あの朝”

2015-03-22 07:30:00 | 編集手帳

3月20日 編集手帳

 

その人は数年前、
東京都内の小学校から命を考える催しに招かれた。
児童たちの前で1枚の白い紙をくしゃくしゃに丸め、
静かに広げた。

「このシワはいくら伸ばしても消えません。
 これが犯罪被害者の心の傷です」。
高橋シズヱさ ん(68)である。
地下鉄サリン事件で、
霞ヶ関駅の助役をしていた夫(当時50歳)を奪われた。

オウム真理教による無差別テロから、
きょうで20年になる。
13人が亡くなり、
6000人を超す負傷者が出た。
たまたま乗った地下鉄で事件に遭い、
いまも寝たきりの人がいる。
深い傷痕は心にとどまらない。

宗教 に名を借りた犯罪者の集まりであること。
若者をたぶらかす術策を心得ていること。
人の命を虫けらのように扱って恥じないこと。
現在の世相に過去の悪夢を重ねて映す人もいるだろう。
いまもまた、
海外から届いたテロ事件の報道に心を凍らせつつ迎えた“あの朝”である。

〈あたまには電極立つる微電流たえずながせるむごたらしくも〉(小池光)。
オウムが洗脳に用いた電極付きのヘッドギアが詠まれている。
無数の白い紙をくしゃくしゃにした狂気を、
時空を超えて憎む


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