11月1日 NHK[おはよう日本」
社会人向けに開発された
あるボードゲームが注目されている。
ロケットの打ち上げプロジェクトをなぞりながら
科学技術が社会情勢に影響を受けることを理解してもらおうというもので
ビジネスの世界でも活用が始まっている。
科学技術の粋を集めたロケットの打ち上げ。
成功させるには乗り越えなければならないさまざまなミッションがある。
その司令塔
いわゆる“プロジェクトマネージャー”を
疑似体験できるのがこのボードゲームである。
プレーヤーはロケットの打ち上げに必要な技術やミッションが描かれたカードを引く。
そしてトランプのポーカーのようにカードの種類や数字をそろえていく。
定められた期間により多くのロケットの打ち上げを成功させた人が“勝ち”となる。
このゲーム
鳥取大学の理系と文系の研究者が異色のタッグを組んで開発した。
“宇宙開発”というと専門家任せになっている現状を肌で感じ
一般の人たちにももっと関わってもらいたいという思いを強くしていた。
(鳥取大学 宇宙工学 三浦政司助教)
「専門家に任せきりで
専門家がいい感じでやってくれるだろうと思っていたら
原発事故のようなことが起きた時に
われわれ自身の生活に影響してくる。」
(鳥取大学 社会学 前波晴彦准教授)
「特に科学技術に関する社会的な判断は
国民からかなり遠く感じられているのが現状。
科学技術と社会の関係っていうのを考えるきっかけになってほしい。」
ふたりが重視した
科学技術を社会の関わり。
それを最も表しているのが予算である。
ゲームでは
国民の支持と個人の評価により予算が決まる仕組みにした。
プレイヤーが引くカードには
政権交代や世界恐慌など
さまざまな世界情勢の変化が盛り込まれている。
それが国民の支持につながり
予算に反映される。
たとえば“政権交代”のカードを引いた場合
社会福祉を重視する野党に政権交代し
宇宙開発にとっては逆風の情勢になってしまう。
「予算が・・・予算が全然足りない。」
国民支持の低下
さらに予算も減らされると
高い技術のカードを持てなくなり
ロケット打ち上げができなくなる。
こうしたゲームの流れを通じて
一般の人たちの意思決定が宇宙開発に大きく影響することを知ってもらおう
というのである。
ゲームに初めて参加した学生からは
(大学生)
「国民の評価や世論の評価がすごく大切ということが
こういうボードゲームを通して学べた。」
このボードゲーム
招来宇宙ビジネスに携わろうという人たちからも関心が寄せられている。
大手電機メーカー パナソニック。
若手社員の雄姿を集めた勉強会でこのボードゲームが取り入れられた。
さまざまな社旗情勢に翻弄され
限られた予算で
ロケットを打ち上げなければならない状況に苦労する。
「ロケット開発遅延。
やってしまった。」
「政権交代になったぞ。
今まで国民支持が良かったのにすいません。」
「補正予算がつく。
個人評価プラス2。」
ゲームの想定が現実的なだけに
改めて予算や社会情勢の重要性を知ることになった。
(宇宙ビジネスに関心がある社員)
「自分はいいと思って研究や開発をやっているが
お金の影響力を持っている側にアピールが重要と改めて認識させてもらった。」
「予算や社会のことはあるが
それとは別に
科学技術は動いていると思っていたので
社会情勢なども気にしなければいけないと勉強になった。」
宇宙開発を広く知ってもらいたいと
研究者2人の異色のタッグから生まれたゲーム。
その活用方法がいま大きく広がろうとしている。