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日本の動物園に“変革の波”

2020-01-02 07:00:01 | 報道/ニュース

12月3日 NHK「おはよう日本」


動物たちの生き生きとした姿が人気の北海道 旭山動物園。
来年4月から入園料を20%値上げし
公立の動物園では最も高い1,000円になる。
実は値上げの背景にあるのが欧米からの批判である。
飼育施設が狭いなどと指摘され
さらなる施設の充実を求められているのである。
(外国人観光客)
「刑務所みたい。」
いま日本の動物園に“変革の波”が押し寄せている。

旭山動物園の「もうじゅう館」。
ここにいるヒグマの飼育環境が欧米の批判を受けている。
このヒグマは“常同行動”と呼ばれる
檻の中で同じ場所をぐるぐる回る動きをしている。
施設の狭さなどからくるストレスで異常な動きをしていると批判されているのである。
(旭山動物園園長)
「この空間だと
 こういう動きしか使う必要がないからこういう動きしかしなくなる。」
欧米の批判の根拠は
ここ数年で世界的に広がっている“動物の福祉”という考え方である。
動物本来の動きができるよう
自然をそのそのまま切り取ってきたかのような飼育環境を作り
十分な広さを確保するとともに
群れで生きる動物は群れで飼うべきだとしている。
ホッキョクグマについては飼育のガイドラインもすでに定められ
広さは500㎡以上
エサを自分で探して食べられる環境を整えるよう求めている。
危機感を強めた旭山動物園。
施設を拡大するために
値上げで得る資金の活用を決めた。
ヒグマの飼育施設を数億円かけて今の3倍以上の500㎡に拡大。
さらに川を作ってヒグマが魚を捕食できるようにする計画である。
(旭山動物園園長)
「飼育の仕方や動物の生活の質をしっかり整えないといけない時代になってきている。」
“動物の福祉”への取り組みが不十分で
新しい動物を確保できなかったケースも出ている。
札幌市の円山動物園は
ホッキョクグマの飼育施設の広さが欧米のガイドラインの半分しかないという理由で
繁殖のためのクマの提供を拒否された。
このため20億円以上かけて施設を拡大。
エサを地面に埋めて隠すなど
野生に近づける工夫もし
ガイドラインに沿った整備を進めている。
専門家は
いまや“動物の福祉”への取り組み無くして動物園は成り立たないという。
(帝京科学大学アニマルサイエンス学科 佐渡友陽一講師)
「信頼関係の中で動物を貸し借りする
 “ブリーディングローン”がふつうになっていて
 信頼関係が無かったらやっていけない。
 欧米の動物園の信頼関係の輪の中に日本の動物園は入っていけますか
 というのが問われる。」

この数年で欧米の考え方が急速に広まっている。
この流れの中で欧米では次々と動物ごとに飼育のガイドラインを策定していて
それを世界のルールとして広げていこうとしている。
欧米の動物園は施設の整備費を確保しやすい。
入園料の平均は日本の約4倍。
欧米 約2,000円
日本   約500円
また収入の3分の1が寄付というところもある。
一方 日本では旭山動物園のように値上げできる動物園はごくわずかである。
各地にある規模の大きくない動物園の大半では
値上げが入園者の減少につながるなどとして
今の施設のままで対策を見出そうとしている。

福岡県の大牟田市動物園。
予算が限られるなか
今ある施設で“動物の福祉”の充実を図ろうとしている。
その1例がレッサーパンダである。
かつて檻の中に木は数本しかなかった。
そこで木を大幅に増やすとともに壁には取っ手をつけて
縦にも横にも動けるよう工夫した。
(飼育員)
「天井もぎりぎりまで高く使えて
 壁も上ったり
 スペースを有効活用して飼育している。」
子どもたちに大人気のモルモット。
ストレスを最小限にする展示に切り替えている。
名づけて“自由出勤制度”。
展示スペースまで出ていくかどうかモルモットに任せることで
“動物の福祉”を高めようと考えた。
日本ならではの“動物の福祉”を追求する動物園もある。
甲府市の游亀公園付属動物園。
人間でいえば90歳ほどにもなる高齢のライオン。
視力はほとんどなくエサも自分で食べることが出来ない。
(入園者)
「左目が痛々しくてかわいそうですけど
 長生きしてもらいたい。」
欧米では安楽死させて苦しみを取り除くことが動物のためだと考える。
しかし日本では少しでも長生きしてもらうことが動物の幸せにつながると考えてきた。
国内の動物園で作る団体は
日本の価値観を認めてもらう必要性を強調している。
(日本動物園水族館協会)
「欧米からいろいろ言われていますけれども
 “動物の福祉”に対する考え方の違いで
 どちらが遅れているとか進んでいるということではない。
 “日本ではこうなんですよ”というのは発信していかないといけない。」

欧米のガイドラインの全てが国際的なルールとして認められているわけではない。
いわばルール自体が策定の途中の段階である。
そのため日本の動物園の取り組みや価値観を反映できる余地は十分ある。
ただ“自然のような飼育環境を”という欧米の指摘はもっともで
日本も不十分なことがあることは否めない。
だからこそ各地の動物園は謙虚に受け止めて改善に取り組んでいる。
対応が遅れれば各地の動物園から動物が次々と消えていき
動物園そのものがなくなる可能性すらある。
動物園は
自然を身近に感じ
その素晴らしさを学べる場であるとともに
希少な動物の繁殖という自然保護の役割も担っている。
動物園をどう改善していくべきか
利用者である我々も考えていく必要がある。






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