4月5日 編集手帳
昭和の映画スター、
鶴田浩二さんは貧しかった幼年時代を一言でこう語った。
「私は夕焼けが嫌いな子供でした」と。
親の事情で目の不自由な祖母と二人きりで暮らし、
友だちと別れて帰る家で温かい食事が待つことはなかった。
家は暗くなって電気がともることもなく、
帰ってまず触るのは裸電球のスイッチだった。
あるとき電気をつけると、
光の下にこたつで眠る祖母の姿があった。
声をかけても何も言わない。
体をゆすると、
冷たかった。
はるか戦前のことである。
同じモノサシでは測れないが、
今の貧困家庭に育つ子供たちの目に映る夕焼けはどんなだろう。
貧しさはまず嘆くのが筋だけれど、
間違いなくいいニュースといえる。
民間の調査で、
無料または数百円で食事を提供する「子供食堂」が全国で2286か所にのぼることがわかった。
ここ数年で急増したという。
運営はNPO法人や個人など様々で、
貧しさばかりではなく、
見守りや共働き家庭の「孤食」の解決に手を貸す人もいる。
それにしてもこの数、
全国の市町村の数をゆうに超えている。
夕焼けが好きな子供をどんどん増やしたことだろう。