2月21日 国際報道2017
去年12月
韓国釜山の日本総領事館の前に設置された慰安婦問題を象徴する少女像。
日本政府は対抗措置として
韓国駐在の大使や釜山の総領事を一時帰国させ
問題は長期化する様相を見せている。
その釜山に住むイ・ソンテさんと妻のシン・ユンチャンさん。
16年前に東京の新大久保駅で
ホームから転落した男性を助けようとして亡くなったイ・スヒョンさんの両親である。
(スヒョンさんの母 シン・ユンチャンさん)
「息子はやりたかったことが何もできませんでした。
それがつらいです。」
事故の後
スヒョンさんの勇敢な行為に胸を打たれた大勢の人たちが
日本からも墓参りに訪れたと言う。
(スヒョンさんの父 イ・ソンデさん)
「私の息子だけど尊敬しています。
私たちにたくさんのことを教えてくれました。」
今月から公開が始まった
スヒョンさんの人生をテーマにした映画「かけはし」。
東京や大阪などで公開されている。
日本語を学ぶために留学したスヒョンさん。
映画では
日本人の公衆道徳に感銘を受け
率先してゴミ拾いを行うようになったエピソードなど
日本での様子が紹介されている。
スヒョンンさんはいつしか
「大好きな日本と韓国の懸け橋になりたい」と周囲に話すようになった。
映画を製作したプロデューサーの中村里美さん。
冷え込む日韓関係に危機感を覚え
スヒョンさんが残してくれたものは何だったのかとあらためて自らに問いかけ
制作を始めたと言う。
(映画プロデューサー 中村里美さん)
「日韓の深刻な問題が多いが
心の通訳の大切さ
ことばの通訳も大切だがそれ以上に心の通訳
“かけはし”となる存在の大切さを感じていた。」
映画ではスヒョンさんの足跡をたどろうと22人の釜山の大学生が日本を旅をする。
韓国の若者たちは日本の人たちと時間を共にする中で
隣国への理解を深めていく。
今も対立の原因ともなる歴史問題について率直に意見を交わす場面もあった。
(韓国の大学生)
「謝罪はしたと思います。
したんですけれどもその思いが伝わっていないということ。」
(日本の大学生)
「それをどうお互い理解し合って前に進んでいくか。」
中村さんは
若者たちがお互いに本音でぶつかり合うことで友好を深めてほしいと考えている。
(映画プロデューサー 中村里美さん)
「これからの未来を作っていくのは若者たち。
両国の懸け橋となっていく存在を応援したり
生み出していくことの大切さを感じている。」
1月26日
スヒョンさんが亡くなった新大久保駅で追悼式が行われた。
スヒョンさんの両親のほか
一時帰国している森本康敬総領事の姿もあった。
イ・ソンデさんは
日本と韓国の懸け橋となることを夢見た息子の思いを知ってもらうためにも
両国の若者に映画「かけはし」を観てもらいたいと願っている。
(イ・ソンデさん)
「日本と韓国は一番近い国同士なのに歴史問題のせいでいつもうまくいきません。
映画が交流を深める良いきっかけになってほしいです。」
オ・スヒョンさんが亡くなった後
お見舞金をもとに
日本で学ぶ留学生を支援する奨学金制度が設けられた。
これまでに790人が支援を受けたということだが
寄付金の額は年々減少していて
事故直後の半分以下にまで落ち込んでしまっている。
プロデューサーの中村さんはこの映画「かけはし」を
東京大阪に次いで全国で上映していきたいを話している。