12月24日 NHKBS1「国際報道2019」
ウズベキスタンの首都タシケントの地下鉄。
見上げると天井を彩る美しい装飾に目を奪われる。
旧ソビエト時代の1977年に開通したこの地下鉄
東西冷戦のもと国威発揚のため
中央アジアの技術・芸術・文化・富を注ぎ込み
巨大な芸術作品ともいえる駅舎を建設した。
現在も人々の生活や経済を支える庶民の足として1日23万人が利用する。
3路線29駅すべてがそれぞれ独自のテーマを持って作られている。
テロ対策のため行われる手荷物検査はものものしいが
それでも最近はずいぶん開放的になった。
かつてこの地下鉄は核シェルターの役割も担っていたため
軍事施設として
構内での撮影が長年禁止されていた。
それが観光立国を目指す国の方針によって2年前に撮影が解禁されたのである。
建設に関わったひとりの建築家セルゴ・スチャーギンさんは
国内外の大型施設を手掛けてきたウズベキスタンを代表する建築家である。
セルゴさんがデザインしたコスモナフト(宇宙飛行士)駅のテーマは
“ウズベキスタンの夜空と宇宙”。
タシケント地下鉄を代表する作品の1つである。
(建築家 セルゴ・スチャーギンさん)
「子ども時代
草の上に寝転がって夜空を見上げていました。
限りない宇宙の魅力と神秘にいつも心惹かれていました。」
壁には世界初の有人宇宙飛行を行ったガガーリンや
女性初の宇宙飛行士ワレンチナ・テレシコワなど
旧ソビエトの宇宙開発を象徴する英雄たちが描かれている。
(建築家 セルゴ・スチャーギンさん)
「最も難しかったのはこうした柱の部分で
クリスタルガラスを作るのが大変でした。」
クリスタルガラスでできた柱は
表面を銀で覆って輝きを増す加工を施し
宇宙にほとばしるエネルギーを表現している。
(建築家 セルゴ・スチャーギンさん)
「この駅が古びることなく
私たちがいなくなった後も今のように魅力的であり続けてほしいと思います。」
ムスタキリーク駅は1977年にできた最初の駅で
大理石と彫刻で宮殿のようなつくりである。
ウズベキスタン駅の照明は特産品の綿花がモチーフである。
綿花・蚕・ザクロがモチーフのタイルは国土の豊かさを表現している。
アリシェル・ナボイ駅のテーマは“国民に愛されている中世の詩人”。
その詩の世界観に浸ってもらおうと
今年8月には読書スペースを設ける工夫も取り入れられた。
(高校生)
「15~16世紀の雰囲気を感じられて
とても居心地がいいです。」
(地下鉄の広報)
「地下鉄は単なる交通手段ではなく
人々に文化を届ける役目も担っているんです。」
開通から40年以上を経てタシケント地下鉄は
かつての知る人ぞ知る存在から
開かれたウズベキスタンの象徴として
新たな魅力を発揮し始めている。