昨年度、新書で話題になった本だ。
あまりにもうるさく平積みされていたので、衝動買いした。
例によって積ん読していたので、この時期に読了となった。
内容自体はそれほどの衝撃度はない。
ただ、この内容が、タブー視されており、それを敢えて書いて出版したことに大きな意味があるかもしれない。
▼ネタバレあり▼
早くから言われていたことだが、精神疾患や知能については遺伝する。
この本によると、身長や体重よりも、もっと高い確率で。
それが差別になってしまうのは、こう変換されてしまうからだ。
「お前は頭が悪い、だから子どもを作らないほうがいい」
「ガタカ」などの映画では、遺伝子によって選別され、権利を侵害されていく様子が描かれている。
だが、どこかで「遺伝子によって全てが決まるというのはあり得ない」と信じたい自分がいる。
それはだれもがそうだし、だれもが自分の意志で生きていること、そのものを否定するような事実は知りたくない。
だが、遺伝子の力がどれほど強力なものなのか、人間は次第に解き明かすようになってきた。
本の中に、「知識社会とは、知識を持つ者が、知識を持たない者を搾取する社会のことだ」という指摘がある。
だが、全くその通りになりつつある。
知識のあるものは、危険なものを口にしないし、安易な誘惑を避ける。
逆に、知識なく欲望の社会に漂うものは、知らぬ間に享楽主義に陥り、結果搾取される。
搾取されることが完全な悪なのか、それさえも難しい議論だ。
「愛と幻想のファシズム」にも書かれてあったが、人間は自ら奴隷に成り下がる生きものだ。
享楽主義に陥り、搾取されているとしても、それさえも是とする考え方もあるかもしれない。
禁欲的に、文化性の高い、特定の地域に住むような人々が、必ずしも幸せとも限らない。
ネットやSNSが当たり前になった時代、私たちはあらゆることを知り得ると思い込んでいる。
だが、実際には巧みに事実は隠され、「言ってはいけない」社会の中で生きている。
何が大切なのかを、探し続けて、調べ続けて、考え続けて、問い続けるしか、自分を生きることは難しいのかもしれない。
最近、それはそれで幸せなのかもしれないと思ったりもする。
いつ映画館にいけるのか悲しくなってきました。
とりあえず、小説を読み続けることで自分を癒やしています。
>せがーるさん
格差社会というのが、基本的にマイナスの文脈で語られるけれども、本当にそうなのか、一概に言えないと思うのです。
これだけ知識を入れる機会がある日本において、「あえて知らないでいる」ことを能動的に選択しているのではないかと。
といいつつ、SNSを何気なく見たり、ドラクエをほしいな、と思う自分もいるわけですね。