評価点:64点/2013年/アメリカ/120分
監督:アントワーン・フークア
まるで「ダイ・ハード」? いえいえ、まんま「ダイ・ハード」です。
シークレットサービスのマイク・バニング(ジェラルド・バトラー)は大統領夫婦が巻き込まれた自動車事故で夫人を救えなかったことが契機で一線から離れていた。
そんなある日、韓国首相とアメリカ大統領アッシュ(アーロン・エッカート)がホワイトハウスで会談するとき、突如正体不明の機体が現れ、警告を無視しホワイトハウスを襲撃した。
非常事態となり、地下核シェルターに韓国首相と大統領、副大統領らを避難させたが、数十人のテロリストたちがホワイトハウスを占拠してしまう。
シークレットサービスらが全滅する中、一人異常に気づいたマイクは、大統領救出のためにホワイトハウスに侵入する。
この映画の前にあった予告で、「ホワイトハウス・ダウン」という作品が流された。
「ん? 今からやる映画の予告?」と見紛うほどの類似作品だが、別物らしい。
見るものがあまり思いつかなかったので、とりあえず「アフター・アース」よりはましだろう、ということで見ることにした。
いろいろな意味で趣深い作品となっている。
一人で閉鎖的な状況を打破するという意味ではまるで「ダイ・ハード」だが、どちらかというと、まんま「ダイ・ハード」である。
アクション映画が好きな人は、楽しめるはずだ。
こんなどうでもよい映画にモーガン・フリーマンが相変わらずまじめに演じているその役者魂を見るだけでも価値はある。
▼以下はネタバレあり▼
こういう映画を見ていると、アメリカって本当にいい加減な国なのだろうと思えてくる。
こういう映画がリアリティをもって迫ってくる程度なのだから、国際情勢については日本人のほうがより詳しく関心をもっているのではないだろうか。
そう、しみじみと感じられる、趣深い映画になっている。
北朝鮮がアメリカ社会を脅かす、という設定はどれくらいリアルなのだろうか。
中東という今まさに戦争が起こっている地域を舞台にした、題材にした映画はこれまで数多くあった。
シュワちゃんの「コラテラル・ダメージ」はアメリカの9.11よりも前に撮られた映画だが、すでにその首謀者はアラブ人だった。
これまでテロリスト像の多くは、北朝鮮をモティーフにしたものではなかった。
それが、最近の核開発や挑発的言動を受ける前に、この映画が企画されて制作されたのは趣深い。
しかも、それがかなり間違った形の偏った知識に基づくものだから笑える。
そのあたりの笑えるツボは、「前田有一の超映画批評」に詳しくあるので、繰り返すまい。
アメリカ軍が韓国から撤退したこと=韓国が北朝鮮に侵略を受けて戦場となるという描写には笑わずにはいられない。
韓国は米国ほど大きくはないにしてもアメリカの庇護になければ戦線を守れないほど脆弱でもないだろうに。
今回のテロリストは、北朝鮮(らしい)である。
彼らはアメリカホワイトハウスを占拠し、大統領、副大統領、国務長官を人質に、アメリカの第七艦隊の撤退を要求する。
また、同時に三人が持っているケルベロスコードを用いて、核兵器のすべての自爆を計画する。
そうすることで、アメリカを核の汚染で壊滅させようと考えるのだ。
周到に計画された彼らの行動は、13分でホワイトハウスを陥落させてしまう。
そこで一人ホワイトハウスに残されていたのは、ジョン・マクレーンだった。
いや、違った、ジャック・バウワーだった。
いや、それも違った。
バニングだったのだ。
(冗談抜きで、SSだったフォーブスがバニングをおびき出すために登場するシークエンスは、まんま予期せずにマクレーンと出会ってしまったハンスに見えた。)
アメリカのボストンをおそったテロ事件は記憶に新しい。
これだけたくさんの防衛費を費やしても、これだけ厳重に警備を強化しても、やはり絶対の安全はない。
ホワイトハウスの襲撃は、まさに絵に描いた餅のようにリアリティはないけれども、それでもCGを駆使するとどこか説得力のある餅に見えるものだ。
だが、それにしてもこの13分の流れはリアリティに欠ける。
これだけ警戒している空域に簡単に侵略され、チープなCGによる民間人襲撃。
その後、どこで兵器を用意したのか超重量武装のテロリストが40人もホワイトハウスを取り囲む。
もう少し映像が丁寧であればそれほど違和感もなかったのかもしれないが、いかんせんチープすぎる。
この冒頭が説得力あるように描くための工夫が中盤以降もない。
なぜあれだけの兵隊たちがアメリカに入国できたのか。
なぜ韓国首相の警護につけたのか。
韓国のセキュリティはそこまでざるなのか?
そのあたりの説得力が全くない。
その割にはホワイトハウスの厳重な警備が強調され、「それでも陥落してしまう恐怖」を演出しているのだが、「なぜ陥落できるのか」はすっぽりと抜け落ちている。
だから、完全なフィクションとして笑いさえ誘うことになる。
これなら「ザ・ロック」のように退役軍人をテロリストに仕立て上げて、内部に精通している者たちが首謀者としたほうがまだ説得力があったのではないか。
その協力者に北朝鮮を加味すればよかったのではないだろうか。
一人をヒーローにしたいという設定はいつまでの健在だ。
今回も大統領夫人を事故で救えなかったというトラウマのバニングがヒーローとなる。
敵に明確なテーゼがないということに対して、ヒーローにもテーゼがない。
夫人を救えなかったということ以外に彼の個性がないから、全く感情移入できない。
それでもアクションだけで見せてしまうのは、さすがハリウッドである。
バウワーやマクレーンのようなキャラクターが立っていない。
テロリストもあほだから、彼の存在に気づいたのに、大統領という人質を利用することをしない。
「出こないと大統領を殺すよ」と言えばそれで済んだのではないか。
もしくはシェルターに閉じこもっていれば全く影響はないのだから、完全無視でも良かった気がする。
挙げ句の果てに、のこのことシェルターから出てきて、逆にバニングに襲撃される。
なんちゅう、あほやねん。
突っ込みどころが多すぎて、それでも役者のみなさんが真剣に演じていることが笑えてしまう。
敵も味方も虐殺に次ぐ虐殺で、私が最も嫌いな「死の氾濫」が起きている。
それでも、はらはらどきどきしてしまうのがすごいところだ。
アクションをみて楽しむこともできるし、アメリカの国際情勢のイメージ図を垣間見ることでも楽しめる。
そして、アメリカがいかにテロに対してナーバス(神経質)になっているかも理解できる。
いろいろな角度で楽しめる、希有なB級映画だ。
監督:アントワーン・フークア
まるで「ダイ・ハード」? いえいえ、まんま「ダイ・ハード」です。
シークレットサービスのマイク・バニング(ジェラルド・バトラー)は大統領夫婦が巻き込まれた自動車事故で夫人を救えなかったことが契機で一線から離れていた。
そんなある日、韓国首相とアメリカ大統領アッシュ(アーロン・エッカート)がホワイトハウスで会談するとき、突如正体不明の機体が現れ、警告を無視しホワイトハウスを襲撃した。
非常事態となり、地下核シェルターに韓国首相と大統領、副大統領らを避難させたが、数十人のテロリストたちがホワイトハウスを占拠してしまう。
シークレットサービスらが全滅する中、一人異常に気づいたマイクは、大統領救出のためにホワイトハウスに侵入する。
この映画の前にあった予告で、「ホワイトハウス・ダウン」という作品が流された。
「ん? 今からやる映画の予告?」と見紛うほどの類似作品だが、別物らしい。
見るものがあまり思いつかなかったので、とりあえず「アフター・アース」よりはましだろう、ということで見ることにした。
いろいろな意味で趣深い作品となっている。
一人で閉鎖的な状況を打破するという意味ではまるで「ダイ・ハード」だが、どちらかというと、まんま「ダイ・ハード」である。
アクション映画が好きな人は、楽しめるはずだ。
こんなどうでもよい映画にモーガン・フリーマンが相変わらずまじめに演じているその役者魂を見るだけでも価値はある。
▼以下はネタバレあり▼
こういう映画を見ていると、アメリカって本当にいい加減な国なのだろうと思えてくる。
こういう映画がリアリティをもって迫ってくる程度なのだから、国際情勢については日本人のほうがより詳しく関心をもっているのではないだろうか。
そう、しみじみと感じられる、趣深い映画になっている。
北朝鮮がアメリカ社会を脅かす、という設定はどれくらいリアルなのだろうか。
中東という今まさに戦争が起こっている地域を舞台にした、題材にした映画はこれまで数多くあった。
シュワちゃんの「コラテラル・ダメージ」はアメリカの9.11よりも前に撮られた映画だが、すでにその首謀者はアラブ人だった。
これまでテロリスト像の多くは、北朝鮮をモティーフにしたものではなかった。
それが、最近の核開発や挑発的言動を受ける前に、この映画が企画されて制作されたのは趣深い。
しかも、それがかなり間違った形の偏った知識に基づくものだから笑える。
そのあたりの笑えるツボは、「前田有一の超映画批評」に詳しくあるので、繰り返すまい。
アメリカ軍が韓国から撤退したこと=韓国が北朝鮮に侵略を受けて戦場となるという描写には笑わずにはいられない。
韓国は米国ほど大きくはないにしてもアメリカの庇護になければ戦線を守れないほど脆弱でもないだろうに。
今回のテロリストは、北朝鮮(らしい)である。
彼らはアメリカホワイトハウスを占拠し、大統領、副大統領、国務長官を人質に、アメリカの第七艦隊の撤退を要求する。
また、同時に三人が持っているケルベロスコードを用いて、核兵器のすべての自爆を計画する。
そうすることで、アメリカを核の汚染で壊滅させようと考えるのだ。
周到に計画された彼らの行動は、13分でホワイトハウスを陥落させてしまう。
そこで一人ホワイトハウスに残されていたのは、ジョン・マクレーンだった。
いや、違った、ジャック・バウワーだった。
いや、それも違った。
バニングだったのだ。
(冗談抜きで、SSだったフォーブスがバニングをおびき出すために登場するシークエンスは、まんま予期せずにマクレーンと出会ってしまったハンスに見えた。)
アメリカのボストンをおそったテロ事件は記憶に新しい。
これだけたくさんの防衛費を費やしても、これだけ厳重に警備を強化しても、やはり絶対の安全はない。
ホワイトハウスの襲撃は、まさに絵に描いた餅のようにリアリティはないけれども、それでもCGを駆使するとどこか説得力のある餅に見えるものだ。
だが、それにしてもこの13分の流れはリアリティに欠ける。
これだけ警戒している空域に簡単に侵略され、チープなCGによる民間人襲撃。
その後、どこで兵器を用意したのか超重量武装のテロリストが40人もホワイトハウスを取り囲む。
もう少し映像が丁寧であればそれほど違和感もなかったのかもしれないが、いかんせんチープすぎる。
この冒頭が説得力あるように描くための工夫が中盤以降もない。
なぜあれだけの兵隊たちがアメリカに入国できたのか。
なぜ韓国首相の警護につけたのか。
韓国のセキュリティはそこまでざるなのか?
そのあたりの説得力が全くない。
その割にはホワイトハウスの厳重な警備が強調され、「それでも陥落してしまう恐怖」を演出しているのだが、「なぜ陥落できるのか」はすっぽりと抜け落ちている。
だから、完全なフィクションとして笑いさえ誘うことになる。
これなら「ザ・ロック」のように退役軍人をテロリストに仕立て上げて、内部に精通している者たちが首謀者としたほうがまだ説得力があったのではないか。
その協力者に北朝鮮を加味すればよかったのではないだろうか。
一人をヒーローにしたいという設定はいつまでの健在だ。
今回も大統領夫人を事故で救えなかったというトラウマのバニングがヒーローとなる。
敵に明確なテーゼがないということに対して、ヒーローにもテーゼがない。
夫人を救えなかったということ以外に彼の個性がないから、全く感情移入できない。
それでもアクションだけで見せてしまうのは、さすがハリウッドである。
バウワーやマクレーンのようなキャラクターが立っていない。
テロリストもあほだから、彼の存在に気づいたのに、大統領という人質を利用することをしない。
「出こないと大統領を殺すよ」と言えばそれで済んだのではないか。
もしくはシェルターに閉じこもっていれば全く影響はないのだから、完全無視でも良かった気がする。
挙げ句の果てに、のこのことシェルターから出てきて、逆にバニングに襲撃される。
なんちゅう、あほやねん。
突っ込みどころが多すぎて、それでも役者のみなさんが真剣に演じていることが笑えてしまう。
敵も味方も虐殺に次ぐ虐殺で、私が最も嫌いな「死の氾濫」が起きている。
それでも、はらはらどきどきしてしまうのがすごいところだ。
アクションをみて楽しむこともできるし、アメリカの国際情勢のイメージ図を垣間見ることでも楽しめる。
そして、アメリカがいかにテロに対してナーバス(神経質)になっているかも理解できる。
いろいろな角度で楽しめる、希有なB級映画だ。
はじめまして。紀平と申します。
私は現在「映画ベース」という映画のサイトを開発しており、
是非、映画に関心のある方からの映画のレビューや、
サイトをご利用頂いてのご意見やご感想などを頂きたいと思っております。
「映画ベース」
http://kota.lolipop.jp/eigabase/
まだまだ未熟なサイトではありますが、
面白い映画を見つけられる、そして面白い映画を面白いと言えるサイトに
何としてもしていきたいですので、
どうか「映画ベース」にご登録頂き、
ご覧になった映画の評価やレビューを投稿して頂けないでしょうか?
突然の勝手なお願いではありますが、
一度サイトにお越し頂き、ご利用をご検討頂けますと幸いです。
どうぞよろしくお願い致します。
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// 映画ベース
// http://kota.lolipop.jp/eigabase/
//
// 紀平 光太
// kihira@kota.lolipop.jp
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出張やらなんやらで、見た映画の批評を認めるのもままならない状態です。
さらに来週から出張です。
その準備で倒れます。
はやくギャツビーが観たい。
>紀平 光太さん
返信遅れました。
というかほとんど無視したような状態になってしまい申し訳ありません。
貴サイトへの投稿の件ですが、かなり難しいとお答えしておきます。
このように自分のブログの更新もままならない状態で、他のサイトへの書き込みは、正直難しいです。
もうすこし落ち着いたら、考えたいと思いますので、気長にお待ちください。
今後も宜しくお願いします。