評価点:85点/2006年/香港
監督:ベニー・チャン
古典的だが、DVDが欲しくなるほどに、おもしろい。
ギャンブル好きの空き巣専門のサンダル(ジャッキー・チェン)は、借金で首が回らない状態になり、実家の元へ借金取りが取り立てにくるほどだった。
同じ盗賊仲間のフリーパス(ルイス・クー)は、結婚しているにもかかわらず、女遊びが絶えない浮気者だった。
二人に盗みを教えた大家(マイケル・ホイ)は、息子を失ったことによって正気まで失ってしまった妻を抱え、お金を貯めることで安心した老後を送ろうと考えていた。
しかし、大家が空き巣に入られてしまい、お金を奪われてしまう。
二人も、それぞれ、まじめに働こうとしていた矢先、その状況を聞き、最後の大仕事をすることに。
盗みに入ったものの、様子のおかしい大家を問いただすと、空き巣ではなく赤ん坊の誘拐の仕事だと明かされる。
ジャッキーが香港に帰っての一作。
「香港国際警察 NEW POLICE STORY」と同じように、この作品もストーリーに重きを置いた作品になっている。
人気シリーズの「プロジェクト~」とは全く関連はない。
「BB」の意味は「BABY」だそうだ。
だが、予備知識なしで見た方が、絶対楽しめる。
マンネリ化していたジャッキー映画に一石を投じるほどに、良いできだ。
必ず見て欲しい!
▼以下はネタバレあり▼
この映画はジャッキー映画において、近年まれに見るほどの傑作だ。
最近の消化不良なジャッキー映画を敬遠している人も多いことだろうが、この映画は間違いなくおもしろい。
この映画の肝は、ストーリーを徹底的に重視したことだ。
それには冒頭の長すぎるかとも思えるキャラクター設定にある。
三者は「最後の仕事」として大金を得られる赤ちゃん泥棒を敢行する。
僕はそのストーリーさえも知らなかったので、余計に引き込まれてしまった。
要するに、この映画はその誘拐魔での導入があまりにも長い。
その長さは、しかし、必要な長さだったのだ。
彼らが背負っている課題をしっかりと見せつけておくことで、誘拐した後の赤ん坊にてんやわんやする様子が、安心して、大笑いできるようになっている。
彼ら三人が担っている色分けは非常にバランスがとれている。
赤ん坊というテーマにはこれしかない、というくらいの絶妙さだ。
たとえばサンダルは、父子関係がうまくいっていない。
それはひとえに息子であるサンダルがいつまでたっても定職に就かず、汚い空き巣という商売をしていることと、それで得たお金はすべてギャンブルにつぎ込んでしまうと言う自堕落な生活をしていたからだ。
そのために、借金生活に陥り、果ては実家にまで借金取りが取り立てにくるほどだった。
あきれた父親は勘当を突きつける始末だ。
もちろん、このサンダルの課題は、後の赤ん坊の世話という難題によって解決されていくことになる。
女好きのフリーパスは、早くに結婚してしまったこともあり、女遊びが大好きだ。
すべてよその女につぎ込んでしまうほど、どうしようもない馬鹿である。
妻は、そのために自分の生活費をしょうもないバイトで稼ぐ日々である。
だが、彼女は「酔った勢いで」夫に抱かれた時にできた子どもを授かる。
彼女はフリーパスの子どもを産みたいが、フリーパスは妻に見向きもしない。
赤ん坊の世話をすることで、フリーパスは彼女への愛を再確認することになるのだ。
大家には妻がいる。
しかし、精神的にショックを受けてしまったことから、妻は正気を失っている。
その妻を養うために、老後のことを考えてお金を貯めている。
それはまさに彼の重要な砦だった。
そのお金を空き巣に奪われるという不運に見舞われた大家は、赤ん坊を誘拐するという事件を通して、彼女への愛、もっと言うなら、彼女がなぜそれほどまでに死んだ息子をいとおしく思っていたのかを理解することになる。
彼らはそれぞれが課題を持つことが明示され、それが赤ん坊という一つの課題を与えられることで、一気に自分を見直すことになっていく。
親子の愛を知り、親になることを覚え、妻のショックを知る。
それによって、少しずつ、彼らは自分の生活や生き方と向き合うことになる。
子育てに没頭したことなどない彼らが、赤ん坊にあたふたする姿は単純におもしろい。
しかも、その笑いが、自分への反省という一種の悲しみも含むから、余計におもしろさを生み出す。
もちろんそれは、「JUNO」の時にみたように、赤ん坊の偉大さ、命を大切にすることの重みを感じさせることにもなる。
子どもを育てるとはこんなにもしんどいことで、これほどまでに楽しいことなのだ、ということを前後のギャップを通して見事に訴えてくれるのだ。
だから、ラストのサンダルの自分の命を賭して行う心臓マッサージは、涙を誘う。
命を省みたことのない彼らが、必死に赤ん坊を救おうとする姿は、多少の冗長気味さを伴うところが香港映画なのだが、素直に感動できるのだ。
僕はこの映画を見て、ハリウッド映画的だなと思いながらも、やはりジャッキーの映画に対する情熱の圧倒を感じた。
むしろ追われるハリウッド映画よりも、このようなのびのびした香港映画のほうが、彼の気質に合っているような気がする。
なんだか「東京ゴッドファーザーズ」が観たくなる、そんな映画でもある。
監督:ベニー・チャン
古典的だが、DVDが欲しくなるほどに、おもしろい。
ギャンブル好きの空き巣専門のサンダル(ジャッキー・チェン)は、借金で首が回らない状態になり、実家の元へ借金取りが取り立てにくるほどだった。
同じ盗賊仲間のフリーパス(ルイス・クー)は、結婚しているにもかかわらず、女遊びが絶えない浮気者だった。
二人に盗みを教えた大家(マイケル・ホイ)は、息子を失ったことによって正気まで失ってしまった妻を抱え、お金を貯めることで安心した老後を送ろうと考えていた。
しかし、大家が空き巣に入られてしまい、お金を奪われてしまう。
二人も、それぞれ、まじめに働こうとしていた矢先、その状況を聞き、最後の大仕事をすることに。
盗みに入ったものの、様子のおかしい大家を問いただすと、空き巣ではなく赤ん坊の誘拐の仕事だと明かされる。
ジャッキーが香港に帰っての一作。
「香港国際警察 NEW POLICE STORY」と同じように、この作品もストーリーに重きを置いた作品になっている。
人気シリーズの「プロジェクト~」とは全く関連はない。
「BB」の意味は「BABY」だそうだ。
だが、予備知識なしで見た方が、絶対楽しめる。
マンネリ化していたジャッキー映画に一石を投じるほどに、良いできだ。
必ず見て欲しい!
▼以下はネタバレあり▼
この映画はジャッキー映画において、近年まれに見るほどの傑作だ。
最近の消化不良なジャッキー映画を敬遠している人も多いことだろうが、この映画は間違いなくおもしろい。
この映画の肝は、ストーリーを徹底的に重視したことだ。
それには冒頭の長すぎるかとも思えるキャラクター設定にある。
三者は「最後の仕事」として大金を得られる赤ちゃん泥棒を敢行する。
僕はそのストーリーさえも知らなかったので、余計に引き込まれてしまった。
要するに、この映画はその誘拐魔での導入があまりにも長い。
その長さは、しかし、必要な長さだったのだ。
彼らが背負っている課題をしっかりと見せつけておくことで、誘拐した後の赤ん坊にてんやわんやする様子が、安心して、大笑いできるようになっている。
彼ら三人が担っている色分けは非常にバランスがとれている。
赤ん坊というテーマにはこれしかない、というくらいの絶妙さだ。
たとえばサンダルは、父子関係がうまくいっていない。
それはひとえに息子であるサンダルがいつまでたっても定職に就かず、汚い空き巣という商売をしていることと、それで得たお金はすべてギャンブルにつぎ込んでしまうと言う自堕落な生活をしていたからだ。
そのために、借金生活に陥り、果ては実家にまで借金取りが取り立てにくるほどだった。
あきれた父親は勘当を突きつける始末だ。
もちろん、このサンダルの課題は、後の赤ん坊の世話という難題によって解決されていくことになる。
女好きのフリーパスは、早くに結婚してしまったこともあり、女遊びが大好きだ。
すべてよその女につぎ込んでしまうほど、どうしようもない馬鹿である。
妻は、そのために自分の生活費をしょうもないバイトで稼ぐ日々である。
だが、彼女は「酔った勢いで」夫に抱かれた時にできた子どもを授かる。
彼女はフリーパスの子どもを産みたいが、フリーパスは妻に見向きもしない。
赤ん坊の世話をすることで、フリーパスは彼女への愛を再確認することになるのだ。
大家には妻がいる。
しかし、精神的にショックを受けてしまったことから、妻は正気を失っている。
その妻を養うために、老後のことを考えてお金を貯めている。
それはまさに彼の重要な砦だった。
そのお金を空き巣に奪われるという不運に見舞われた大家は、赤ん坊を誘拐するという事件を通して、彼女への愛、もっと言うなら、彼女がなぜそれほどまでに死んだ息子をいとおしく思っていたのかを理解することになる。
彼らはそれぞれが課題を持つことが明示され、それが赤ん坊という一つの課題を与えられることで、一気に自分を見直すことになっていく。
親子の愛を知り、親になることを覚え、妻のショックを知る。
それによって、少しずつ、彼らは自分の生活や生き方と向き合うことになる。
子育てに没頭したことなどない彼らが、赤ん坊にあたふたする姿は単純におもしろい。
しかも、その笑いが、自分への反省という一種の悲しみも含むから、余計におもしろさを生み出す。
もちろんそれは、「JUNO」の時にみたように、赤ん坊の偉大さ、命を大切にすることの重みを感じさせることにもなる。
子どもを育てるとはこんなにもしんどいことで、これほどまでに楽しいことなのだ、ということを前後のギャップを通して見事に訴えてくれるのだ。
だから、ラストのサンダルの自分の命を賭して行う心臓マッサージは、涙を誘う。
命を省みたことのない彼らが、必死に赤ん坊を救おうとする姿は、多少の冗長気味さを伴うところが香港映画なのだが、素直に感動できるのだ。
僕はこの映画を見て、ハリウッド映画的だなと思いながらも、やはりジャッキーの映画に対する情熱の圧倒を感じた。
むしろ追われるハリウッド映画よりも、このようなのびのびした香港映画のほうが、彼の気質に合っているような気がする。
なんだか「東京ゴッドファーザーズ」が観たくなる、そんな映画でもある。
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