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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ

2021-12-17 19:46:35 | 映画(あ)
評価点:56点/2021年/アメリカ/97分

監督:アンディ・サーキス

映画として、おもしろくはない。

死刑執行が迫っていたクレタス(ウッディ・ハレルソン)は、うだつの上がらない記者エディ(トム・ハーディ)を呼び出し、自分の過去を洗いざらい話すから、ある言葉を新聞に載せるように要求する。
その言葉の意味を理解できなかったエディだが、連続殺人鬼の被害者の遺体が見つかっていないこともあり、仕事のためにと記事にした。
そのとき独房に書かれていた落書きから、エディの体に棲まうシンビオートのヴェノムが遺体の場所を特定する。
遺体が発見されたことから、死刑執行に拍車がかかり、いよいよその日を迎える。
死刑が執行される日、最後の面会にエディを指名したが、隙を突いたクレタスはエディにかみつく。
わずかに残っていたヴェノムの破片を体に取り入れたクレタスは、シンビオートと共存してしまう。

「スパイダーマン」のスピンオフ作品、「ヴェノム」の続編。
マーヴェルの一連の作品とは一線を画す設定になっていたが、今後はどうやら組み込まれていくらしい。

私にはもはや仮面ライダーリバイなのかバイスなのか区別が付かないが、とにかく世界観や設定はもちろん続編である。
トム・ハーディが好きであることを理由に見に行ったが、マーヴェル作品(MCU)に特に興味がないなら、見に行く必要はない。

映画としてはそれほどおもしろい作品ではない。
MCUを追っている人であれば是非見ておく必要はあると思う。
関連するのはほんとうにちょっとだけど。

▼以下はネタバレあり▼

結局、見せ場のすべてがCGであり、そこに新しさを感じられないからだろう。
どうやって撮ったんだ? というような感動はもはや感じられない。
ごてごてに加工されたアクションを見せられても、熱くなれないし、盛り上がることもない。
今回はヴェノムよりもヴィランであるカーネイジのほうにフォーカスされるため、よけいに物語に対する集中度は低くなる。

クレタスがヴェノムの破片を口にすることで、カーネイジという殺人鬼になってしまう。
彼には30年前に生き別れた恋人がおり、彼女もまた特殊能力を持っていた。
シュリークと呼ばれる彼女は、あの「007」のマネーペニーを演じたナオミ・ハリスである。
これが一番の驚きだったわけだが、約97分の上映時間の中でかなりの時間が二人のやりとりに割かれる。

だが、原作を知らない私からいえば、クレタスがそのような生き方をしていたのかには全く興味がない。
それなら、すくなくとも彼がどのような殺人鬼だったのかをまず描くべきで、どんな謎があり、どれくらい凶悪な犯罪者なのかを示さなければ、クレタスの謎に興味は生まれない。
警察から言われたから仕方なく仕事をするエディのモティベーションがわからない。

そうしたあるべき前提がすっぽり抜け落ちたところから物語が始まるため、かなり厳しい。
私は前作もみているわけだが、前作でもそれほどクレタスについての描写はない。
だから本当に唐突に話が進んでいく気がする。
だから、マネーペニーとの関係がどのようなものなのかを描かれても、そもそも意味が分からない。
なぜクレタスの外面的な、世間的な評価を先に描かなかったのかが本当に解せない。

しかもその敵が、ヴェノムから生まれたカーネイジなので、目新しさに欠ける。
変態仮面」「キックアス」でも言及したが、突飛もない主人公には、もっと常識的な悪でなければ観客の心は燃え上がらない。
(私たちにある日常的な悪に、非常識なヒーローが鬱憤を晴らしてくれるような)
原作の通りだから、といえばそれまでだが、グロテスクなヴェノムにはスーツが似合う悪意(権威)とかのほうが世相にあっている気がするのだ。

ヴェノムとエディのキャラクターは安定感がある。
どちらも負け犬で、感情を抑えられず、恋人だったアンとの関係もうまくいかない。
そのヒーローとは言えないダメダメキャラは健在で、いいケツをしているキャプテンアメリカと比しても共感度は高い。
ダンとアンとの関係に割って入ろうとしながらも、やはりアンはエディに付き合いきれない。
この展開は大好きだが、カタルシスに欠けるのだ。

アンチヒーロー像としてのヴェノムはもちろんアリなのだが、達成感が得られない。
うまくいかない私たちの体現者であるヴェノムは、多少なりともうまくいってくれないと、映画館を気持ちよく後にできない。

キャラとしてのポテンシャルは高いはずなのに、どこかちぐはぐで、楽しさを十分に引き出せていない、という印象だ。
IMAXで見るかどうか迷ったが、お金を上乗せしてまで見るべき映画でもないような…。
私の中では、次の「ノー・ウェイ・ホーム」へ、テンションを上げるための映画に成り下がってしまった。


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