secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

WASABI(V)

2008-09-28 19:58:26 | 映画(わ)
評価点:31点/2001年/フランス

脚本・制作:リュックベッソン
監督:ジェラール・クラウジック

日本の広末が、世界のベッソンとタッグを組んだ?!

仕事人間の刑事、ユーベル・フィオレンティーニ(ジャン・レノ)の元に、電話が鳴る。
19年前に突然姿を消した、恋人小林ミコが亡くなったので、生前の意志により相続人のユーベルに日本に来てほしいというのだ。
火葬されることを聞いたユーベルは、戸惑いながら日本に向かう。
日本ではさらに、「娘がいる」という事実を聞かされる。
遺言に「二十歳まで面倒をみてくれ」とあったこともあり、あと二日で二十歳になる娘ユミ(広末涼子)に会う。
その後、ミコの死体を見たユーベルは、不自然な死に方に疑問を抱く。

公開当初、広末が世界デビューということで話題になった。
しかも、ジャン・レノとリュック・ベッソンという「レオン」コンビである。
しかし、予想通り、興行成績ではあまり振るわなかった。

▼以下はネタバレあり▼

全体としては、よくも悪くも思い切りのない「キル・ビル」というイメージだ。
おそらく、「キル・ビル」をみていなければ、さらに点数は下がっただろう。
あれをみてしまうと、こんな映画もありかな、と思えてしまうから不思議である。
しかし、思い切りはない。
日本を徹底的にゆがんでみせてやろうという気概がないため、本当に日本を間違った認識で撮った映画ではないかという疑いがどうしても残る。
もともと、日本を小出しにしていたリュック・ベッソンなので、好きであることはタランティーノと共通しているが、日本人に受けるような「ゆがみ」ではないことが、この映画の厳しいところである。

リュック・ベッソンは、比較的短い時間で映画をまとめるのが上手いと思う。
「ヤマカシ」にしても、上映時間は二時間を大きく切る。
映画を撮る際、誰でも、多くのことを盛り込みたいと思うのが普通だろう。
しかし、それを敢えてしないでバッサリ捨ててしまえるのが、このリュック・ベッソンという監督である。
この「WASABI」も、コンパクトにまとめている。それは、評価できる。

しかし、いかんせん、バッサリいきすぎた。
バッサリいったおかげで、必要な説明がない。
論理的飛躍というか矛盾というか、とにかく無茶しすぎている。

たとえば、「どこの国から来ましたか」という台詞を、フランス語で日本人空港警備員に話させるのは、「無茶」である。
英語ならともかく、フランス語で話しかける日本人はまずいない。
しかも、どこの国からきたかを尋ねるのは、「無茶」である。
フランス語のテキストじゃないんだから。

また、スパイするためにユーベルの元を去ったという設定もかなり「無茶」である。
挙句の果てに、そのボスからお金を巻き上げていたというのは、無理がありすぎる(しかも二億ドル!!)。
それを自分の金にしてしまうという「無茶」っぷりは、脚本のミスとしか思えない。

さらに、随所に持ち込まれた笑いが、この映画の評価をどんどん下げていく。
ユミとの買い物のシーンでは、笑うどころか、謝りたくなる。
「ごめんなさい、もうしませんから、そのギャグをそんなに連続で見せないで下さい」
陳腐というか、古典というか、この表現しがたいネタの連続は、なんの映画か、疑いたくなる。

そもそも、この映画のジャンルは何なのか、最後までよくわからなかった。
アクションにしては、見せ場が少なすぎるし、
コメディにしては、さぶすぎるし、
サスペンスにしては、論理的矛盾が多すぎるし、
ドラマとしても、弱すぎる。
この映画の最大の敗因は、そこにあるのだろう。
ストーリーはスリムにしているが、テイストが多様すぎて、全体がぼやけている。

唯一の救いは、広末とジャン・レノという二大役者が共演しているという点だ。
ジャン・レノはともかく、広末はあまり好きではないが、それでも世界を代表するといえるリュック・ベッソンの元で、共演しているということは、同じ日本人として喜ばしいことである。
心配していたフランス語も違和感ないように感じた。
フランス語自体をあまり知らないので、なんとも言いがたいが、棒読みという印象は受けなかった。

そもそもリュックベッソンは、あたりはずれの大きい監督だ。
レオン」は文句なしに当たりだけれど、「フィフス・エレメント」ははずれた。
この映画は、間違いなく後者の部類に入る。

(2004/3/4執筆)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ロード・オブ・ザ・リング | トップ | おくりびと »

コメントを投稿

映画(わ)」カテゴリの最新記事