シュタージとは・・・・?!
1989年のベルリンの壁崩壊は、いまだ記憶に新しい出来事だ。それまでのドイツは東西に分かれていた。この出来事によって、冷戦時代の終焉を迎えるわけだが・・・。旧東ドイツ(ドイツ民主共和国)で、その支配の中枢を担っていたシュタージについては、統一後も、長い間映画のテーマとしてはタブー視されていた。しかし17年経った今、ようやく人々は重い口を開き、当時の状況を語り始めたのである。
初監督作として世界で大絶賛を浴びるのは、弱冠33歳のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク(長~い名前ですね)79回アカデミー賞外国映画賞を受賞この映画製作にあたって、彼は歴史学者や目撃者の取材、記録文書のリサーチに4年という歳月を費やし、史上最大の秘密組織“シュタージ”の内幕を正確に描いた。そして、近年のドイツで最も重要な映画と称賛されている
《ストーリー》1984年11月の東ベルリン、壁が崩壊する5年前。DDR(東ドイツ国家)国民の統制と監視のシステムを強化しようとしていた。国家保安省(シュタージ)局員のヴィースラー(ウィリッヒ・ミューエ)は劇作家のゲオルク・ドライマン(セバスチャン・コッホ)と舞台女優で恋人のクリスタ(マルティナ・ゲデック)が反体制的であるという証拠をつかむように、ヘムプフ大臣より命じられる。このことが成功すれば、出世が待っていた。早速ヴィースラーは彼らのアパートに向かい、隣人を脅して黙認させ、屋根裏に監視室を作り、盗聴を開始した。
ある夜、ドライマンの誕生パーティが開かれる多くの文化関係者が集まった。DDRから、職業活動の禁止をされていた演出家イェルスカは、ドライマンに“善き人のためのソナタ”の楽譜を贈るパーティ終了後のドライマンとクリスタは愛し合う。屋根裏部屋では、パーティに始まり、二人のまで・・・・。記録するヴィースラー、時間や様子の詳細を報告書に記載するといったものだ。
クリスタに目をつけたヴィースラーの上司、ヘムプフ大臣は舞台初日より、権力で関係を持っていた。その後も「君のためだ」と脅し、関係を続けるように迫るそんな状況をヴィースラーはドライマンにアパートのベルを鳴らし、目撃させる。つまり彼の心を痛めつけるのである。その一方、盗聴を続けるヴィースラーは本来の生活に戻る度、混乱する。むなしいひとり暮らしに、娼婦を呼ぶこともあった。数日後、ヴィースラーはドライマンのアパートから、ブレヒトのを持ち出す。そして初めてブレヒトを読んだ。
演出家イェルスカが自らの命を絶った彼を偲び、ドライマンは善き人のためのソナタを弾く。その美しいピアノの旋律は屋根裏部屋で盗聴を続けるヴィースラーの心を強く揺さぶる。彼の目からがこぼれる。イェルスカの死にショックを受けたドライマンは、DDRが公表しない、東ドイツの恐ろしい実態を西ドイツのメディアに報道させるべく、記者み連絡を取る。このことはクリスタにも知らすことはなかった。
クリスタは友人と会うと偽り、大臣との密会に行こうとしていた。ドライマンは知っていた。そして彼女が内緒で薬を続けていることも・・・・。追い込まれるように部屋を出るクリスタ、その彼女の前にヴィースラーは表れ、「今のあなたはあなたじゃない」と伝える。クリスタはこの見知らぬ人の言葉に心動かされ、約束の場所に行かなかった。
盗聴されているかどうかと確認するために友人の亡命の計画をたてるドライマン、その会話を盗聴するヴィースラーは見逃すことに。このことはドライマンに安心をあたえる。記者を呼ぶ。タイプライターを持ち込み、それで記事を打つ。タイプライターは床の仕切りに隠す事に。匿名の記事として、シュピーゲル誌に載る。緊張が走る監視の甘さに、ヴィースラーの上司グルビッツは気まずい立場となる。すべてを知りながら、今や偽りの報告をしているヴィースラーは知らないと伝える。ただドライマンが新しい演劇の準備をしている事だけ伝えた。グルビッツはドライマンのアパートを捜索するものの、証拠になるものは見つけることは出来なかった。
クリスタに裏切られた大臣は、薬物の不正購入という理由で彼女を逮捕刑務所へ連行してヴィースラーが取り調べを行う。シュピーゲル誌の記事がドライマンの書いたものだと認めなければ、二度と舞台に立てないという脅迫・・・・・。このことでタイプライターの在処を教えてしまう。しかし、タイプライターはなかった。直前に誰かが持ち去った罪の意識から部屋を飛び出したクリスタは、トラックに轢かれ、ドライマンの腕の中で息を引き取る。
作戦は中止。ヴィースラーはシュタージの郵便部に左遷。退役まで、蒸気でを開封するという作業の繰り返しの日々。それから4年後、ベルリンの壁崩壊をラジオで知る。
1991年、ドライマンは盗聴されていた事実を知る呆然とするドライマンは真相を知るべく、閲覧できるようになったシュタージの資料調べる事に・・・・・報告書には必ずHGWXX/7という記号が
感動のラストシーンに、思わずしてしまいました。そして旧東ドイツの驚くべき実情を知り、約20年前まで、こんなことが行われていたのだと・・・・。映画によって、この旧東ドイツの裏側に隠された現実を教えてもらった事は良かった。
重たい映画でしたが、“善き人のためのソナタ”の旋律は心に響くものがありました。ヴィースラーも・・・・。自分の人生より、大事なものを見つけたのでしょうか
追記:主人公ヴィースラーを演じたウィリッヒ・ミューエは旧東ドイツ生まれ、1975年にライプツィヒで演技を学び始めるまでは、土木労働者だったそうだ。実際彼も、シュタージに監視されていたらしい。数年にわたってIMをつけられていた。隣人も彼のことで質問を受けたようだ。ウィリッヒのファイルがあり、こう記載されていた。「男性の出入りがよくあり、ゲイであろう」と。その一方隣人から「女性の出入りが頻繁」とも言われたようだ。まるでフリー○○○愛好家になっていたらしい。そして、何と彼の妻で女優のイェニー・グロルマンに十数年間、密告され続けたことを2001年に知ることに。ドナースマルク監督によると、妻はシュタージに関わっていたことを詳細にしるしたファイルが254ページにもわたるという。妻はミューエの訴えを否定シュタージが偽のファイルを作成したと主張している。
何を信じればいいのかとこの話を聞いて思う。ウィリッヒ自身も辛い経験をしていることに驚きだ。映画の中で色々重なる場面もあっただろう。何を考え、演じていたのか???
※京都シネマにて鑑賞。
善き人のためのソナタ公式サイトお薦めです