マーマに会いたい!ワーニャ少年のひとり旅は、この強い思いで、始まった。
観るまでは、辛くて、哀しいお話かと思っていた。ところが観てびっくりいたいけな6歳の少年は強くてたくましいのだ彼の母への思いは、私たちが考えている以上に大きくて深いものだった。その思いはやがて想像できないような思い切った行動へとつながる。それはまだ見ぬ母を探すひとり旅・・・・・。
ワーニャ少年はロシアの貧しい孤児院からイタリアへ養子に行くことが決まっていた。
極寒のロシア。田舎の貧しい孤児院にマダム(マリヤ・クズネツォーワ)のがやって来た。用心棒を兼ねる運転手グリーシャ(ニコライ・レイトフ)の運転するにはイタリアから訪れた夫婦が同乗していた。
今度は誰が選ばれるのか?子どもたちは色めき始めるそんな中で、マダムは6歳のワーニャ(コーリャ・スピリドノフ)を呼んだ。イタリア人夫婦はワーニャとても気にいる養子に迎えると約束。再来月には、太陽の下で何不自由なく暮せることになった他の子どもたちは羨ましがり、年かさの少女たちも、ワーニャに「イタリア人!」とあだ名をつけて温かく見守る。
実は仲介をしたマダムは多額の手数料をせしめていること、院長(ユーリイ・イツコーフ)もひそかに報酬を受け取っていることを子どもたちは知っていた。でもそれをちくれば、養子になることが出来なくなる。つまり今の惨めな生活から抜けるための唯一の道なのだ。
そんな幼少期を過ぎてチャンスを失った者たちは、リーダーの少年カリャーンの下に結束様々なアルバイトや違法行為で金を稼いでいた。
徐々にワーニャも幸せになれる実感を感じ始めた。そしてイタリアでの生活を心待ちするようになった。すでに養子に行った友だちのムーヒンも幸せに暮しているとマダムから聞く。
ところが、そのムーヒンを捨てた実母が突然訪れた院長はして、彼女を追い返す。去りかねる母はバス停に佇んでいたムーヒンへの思いをワーニャにながらに語る。
ワーニャは突然不安に襲われる養子に行ったら、本当のママに会えなくなるのでは・・・・・。それからまもなくムーヒンの母は自〇したそのことにショックを受けたワーニャ、仲良しのアントンから出生や親に関する記録が事務室の金庫に保管されているということを聞く。
カリャーンに事務室への侵入方法を尋ねるが、「やめておけ」と言われてしまう。仮に書類を見たところで、ワーニャは字が読めないのだ。
しかしワーニャは諦めなかった売〇をしている年長の少女イルカに字を教えて欲しいと頼むすると、「お金をくれたら、教えてあげる」とイルカ。ワーニャは洗車をして稼いだチップをネコババしようとして、カリャーンに鞭で打たれるそんなワーニャをに見かねて、イルカは字を教えてくれる事に・・・・・。
毎日のように、イルカを追いかけるようにして、熱心に字を覚えるワーニャ。ついに字が読めるようになったいよいよ鍵を盗んで、院長室に忍び込む途中でカリャーンに見つかってしまったものの、どうにか、前にいた孤児院の書類を手にいれた。前の孤児院に行けば、ママの居場所がわかるかもしれない
そんなワーニャの状況を知ったマダムが血相をかえてやって来た 言う事を聞かなければ、特別施設に移送すると脅されるワーニャとうとう院長に監禁され、母探しの道を閉ざされたワーニャところが難なくドアの鍵を破って、救い出してくれたのはあのイルカだったふたりは孤児院を脱走
駅でトラブルに遭遇したイルカと別れ、ワーニャはたったひとりで列車に乗る。マダムは、グリーシャと院長を従え、警察にも手を回し、執拗に追ってくる
数々の危機をくぐり抜けるワーニャ
不良グループに遭遇暴行を加えられるワーニャ。
ひとりでバスに・・・・・。親切な男性に遭遇することも
ようやく目当ての孤児院にたどり着くワーニャ。親切な老院長に母の住所を教えてもらうと、はやる思いを胸に町へ飛び出す
ところが、もうすぐママに会えると思ったそのとき、目の前にグリーシャが立ちはだかる追い詰められたワーニャは小さな身体で勇気を振り絞ってグリーシャに立ち向かうガラス瓶を割って武器にするワーニャ、「こっちに来るな殺すぞ!ママを見つけたんだ。邪魔をするな」グリーシャは何とかワーニャを連れていこうとしたが、ワーニャが瓶で手首を切ろうとする行為に、驚きそして止める。ワーニャの母への強い思いを強く感じた。もうマダムのところへは連れて行かないと話す。誤って傷をおったワーニャの手首に包帯をする。
とうとうワーニャは母ヴェーラと再会できたその後のワーニャは・・・・・。仲良しだったアントンへのに綴っている。
この物語は、ある少年の実話です。その実話から、生まれた奇跡の作品なのです。
監督を務めたアンドレイ・クラフチュークは最初大都市で増えている必死に生きているストリート・キッズ問題をテーマに作品を作ろうと思い立ちます。そのアイデアを、脚本家のアンドレイ・ロマーノフに持ち込んだところ、新聞で読んだという、生母を捜すために孤児院を脱走した子どもの話を聞かされます。ロマーノフは、孤児院の実話をいくつも集めていることもあり、この新聞記事を軸としたストーリーを構築する線で映画化が進められたそうです。
ロシアの現状と子どもたち
共産主義から市場経済に移行して以来、ロシアをはじめとする旧ソヴィエト連邦の国々は経済格差の問題に悩まされている。激変した状況に対応できなかった庶民たちは、それこそ子どもも育てられないほどの貧困に直面することになった。クラフチュークが注目したストリート・キッズは、子育て、家出を問わず、増加の一途を辿っている。この弱者切捨ての社会現象はロシアのみならず、イギリス・ドイツでも人道上の問題として、数々のドキュメンタリーを生み出しているほどだそうだ。
孤児院に収容されている子どもたちにしても、決してよりよい境遇とは言い切れない。
アンドレイ・クラフチュークはジャーナリストの視点で、母親捜しの物語に、ロシアを覆うそうした問題を巧みに織り込んだ。リアルさを表現するために、ロシア西端のフィンランド国境近くにある孤児院で撮影を敢行しただけではなく、実際の孤児たちをキャストに起用。あくまでもお涙頂戴的な安易な感動シーンは排して、あくまでもリアリズムに重きを置いた手法はドキュメンタリーを作ってきた経験がきいている。
キャスト
主人公ワーニャ(コーリャ・スピリドノフ)彼はオーディションで選ばれた。何百人もの面接をした中で最も主役にふさわしい魅力を持っていたと。以前にも映画に出演したそうで、愛らしい容姿と表現が素晴らしいコーリャ。1995年、サンクト=ぺテルブルク生まれ。同市の公立学校に通っている。
マダム(マリヤ・クズネツォーワ)1950年、レニングラード生まれ。75年にレニングラード国立演劇音楽映画大学を卒業。アレクサンドリンスキー劇場(旧プーシキン記念ドラマ劇場)でデビュー。「ロシア栄誉芸術家」の称号を持つ。
グリーシャ(ニコライ・レイトフ)1963年生まれ、レニングラード高等労働組合文化学校でバレエを学び、90年卒業。サンクト=ぺテルブルグのミュージカル界を代表するバレエダンサーの一人として、現在もロシアや旧ソ連で活躍している。えぇ~そんな人とは・・・・です。
孤児院長(ユーリイ・イツコーフ)1950年、モスクワ生まれ。ウラジオストック極東芸術大学卒業。イルクーツクのオフロプコフ劇場に出演。シベリアのオムスクのアカデミードラマ劇場で数々の主演を経て、サンクト=ぺテルブルグに移り、ワシリエフスキー島の諷刺劇場でシェイクスピアの「リア王」他に出演。「ロシア人民芸術家」の称号を持つ。この人も見かけとは違って凄い経歴
ムーヒンの母(ダーリャ・レスニコーワ)1968年、シベリアの古い町トムスク生まれ。子ども時代をウクライナで過ごし、両親を倣って、舞台・映画女優を志す。89年にレニングラード国立演劇音楽映画大学を卒業。フォンタンカの青年劇場の看板女優の一人して活躍を続けている。彼女も「ロシア栄誉芸術家」の称号を持つ。
主人公の脇を固める役者さんも、皆さん凄い経歴をお持ちなんですね。
この作品は決して可哀想な少年が母親を訪ねて苦難の道を歩んで、突き進んでいくというセンチメンタルなものではない。実際に色々な厳しい状況にあるロシアの今を象徴している中での現実のことなのだ。生きることに苦しむ子どもたちがどのように生きているかというリアルさも映像から感じる。実在する孤児院でのロケ、そこに住む孤児の生活もこの作品からヒシヒシと伝わる。主人公がどんな手段を使っても、母に会いたいという思いも、おそらくロシアで孤児となった皆が思うことだろう。
ラスト近くでワーニャが取った行動は、捨て身になってもいいという覚悟での感情が伝わってくる。それは本当に絶句するくらいの迫力だった。
追記:マダムという仲介役の女性も実在した。監督は実際その女性と会って話をしたそうだ。
アンドレイ・クラフチューク監督とコーリャ君
この道は母へとつづく★ ITALIANETZ 公式サイト