銅版画制作の日々

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宮廷画家ゴヤは見た▼△

2008-10-26 | 映画:ミニシアター

 天才画家ゴヤが描いた2枚の肖像画、少女と神父の数奇な運命とは?

10月18日、新京極シネラリーベにて鑑賞。「ノーカントリー」で、アカデミー賞助演男優賞に輝いたハビエル・バルデムがロレンソ神父という役で登場。この役もなかなか彼のキャラに合っている。そして少女イネスには、あの「スターウォーズ」シリーズのアミダラ姫で人気を獲得したナタリー・ポートマンです。25日からの公開「ブーリン家の姉妹」では、エリザベス一世の母、アン・ブーリンを演じているので、これも楽しみですね。本作での彼女も真に迫る演技でした。さすが!って気がします。

 

物語

時は18世紀末から19世紀初めの内外の動乱に揺れるスペイン。ゴヤ(ステラン・スカルスガルド)は国王カルロス4世(ランディ・クエイド)から宮廷画家として任命された。芸術家として揺るぎない地位を築いた彼は、王妃の肖像画描く以上の情熱で、貧しい人々を描き、腐敗した権力者を攻撃する版画を制作していた。

※銅版画の行程が映し出されます。このシーンは本当にこんな感じだったのか?分かりませんが。でも実際に制作している私にとっては、非常に興味のあるシーンでした。防触剤が銅板に塗られるところや、腐食液に銅板を浸けるというお馴染みの行程も見られ、そして木製のプレス機で作品を刷り上げる。今から200年以上も前からヨーロッパでは銅版画が盛んだだったことも、このシーンで手に取るように分かります。(実際ははこれより前から銅版画制作はされていたようです。1400年代くらいから行われていたとのこと)

1792年のマドリード、ゴヤは2枚の肖像画を描いていた。1枚は天使のような無垢な少女、イネス。裕福な商人トマス・ビルバトゥア(ホセ・ルイス・ゴメス)の娘で、ゴヤとは家族ぐるみの友人である。

 イネス

もう1枚は、初めて依頼されたロレンソ神父。ゴヤのアトリエで、肖像画のイネスの美しさに目を留める神父

 ロレンソ神父

カトリック教会は国王の監督の下、異教徒や無神論者を罰する権限を持っていたが、近年はほとんど機能していなかった。教会の力を復活させようとロレンソ神父の提案で、異端審問が強化される。

奇しくもイネスが審問所から出頭命令を受ける。彼女は居酒屋で豚肉を嫌がったために、ユダヤ教徒の嫌疑をかけられてたのだ父トマスに頼まれたゴヤは修道院の修復費用と引き換えにイネスを解放して欲しいとロレンソに話す。

 イネスはこの居酒屋の一件で

 

ゴヤに頼まれたロレンソは牢へ行くと、イネスはすでに罰せられた後だった。彼は脅えるイネスを慰めるうちに、欲望に負け、彼女を強く抱きしめるのだった。 

 

 

トマスはロレンソを豪華なディナーに招待する。和やかに始まったその席で、イネスが罰せられることに耐えられなくなり、ユダヤ教徒だと告白したと聞き、家族とゴヤは激しいショックを受ける。

 父トマス

 

 母マリア(マベル・リベラ

裁判にかけるというが、告白したからには釈放はありえない。無実なら痛みに耐える力を神が授けてくださるというロレンソの非現実な主張を覆すべく、トマスは彼を天井から吊るし、自分は猿だという告白書に署名させる。イネスが戻れば、燃やす約束だ。

しかし、異端審問所長( ミシェル・ロンズデール)は非情だった。寄付金はありがたく頂くが、例外は一切認められないというのだ。イネスが戻らないため、ロレンソの告白書を国王に託す。糾弾を怖れたロレンソは国外へ逃亡

本人の代わりにゴヤの描いた肖像画が燃やされ、ロレンソの名は永久に抹殺された。彼の訪れが途絶え、イネスは外界の繋がりを失ってしまう。

燃やされたロレンソの肖像画です。

時は1793年、すでに革命が起きいていたフランスでは、カルロス四世の従兄弟にあたるルイ16世と王妃マリーアントワネットがついに○刑された。時代は大きな転換期に突入していた・・・・・。

15年後、フランス皇帝となったナポレオンは、世界征服の野望を抱いて、ヨーロッパ各国と戦争を行い、スペインにも進軍、兄ジョゼフをスペイン王位に据え、絶大な権力を掴む。ゴヤは病で聴力を失ったものの、世の中の真実を見る目に曇りはなかった。自由・平等・友愛を旗印にしながら、スペインの民衆に対して略奪と残虐行為を働くナポレオン軍の正体は侵略者でしかなかった。

フランス軍はカトリック教会にも攻撃をかける。

 

神父の一人はフランス軍の手によって・・・・・。

異端審問は廃止され、囚われていた人々は解放された。しかしイネスが家に帰ると、家族は皆殺された後だった。イネスは変わり果てた姿で、ゴヤのもとを訪ねた。そして驚くべき頼み事をする牢内で生んだ娘を探して欲しいといのだ。

かってゴヤはイネスを救えなかった。今度こそ彼女を見捨てまいと心に誓い、娘探しに走りまわる。そんな彼の前に立ちはだかったのは、ナポレオンから検察官に任命され、意気揚々と帰国したロレンソだった。フランスに逃亡して革命思想に心酔したロレンソは、今では妻子ある身。ゴヤからイネスの娘のことを聞いて、作り話だと決めつける。イネスを精神病院へ監禁してしまう

ナポレオンに検察官として任命されたロレンソは意気捲いていた! 

 

イネスの娘の存在は?

ゴヤは自分の目で確かめた。16年前に描いたイネスと生き写しの少女を、公園で見かけたのだ○春婦をしているその少女の名はアリシア(ナタリー・ポートマン二役) 娘アリシアに会わすために、ロレンソからイネスの居場所聞き出し、連れ戻しに行くゴヤ。一方ロレンソは過去の汚点がばれるのを恐れ、アリシアをアメリカへ追放しようと画策する。だが折りしも英国軍がスペインに到着し、フランスからの解放願う民衆は歓呼ロレンソは妻子とともに再び逃亡を図るが・・・・?

 

ネタばれですが、逃亡中にロレンソは捕まってしまいます。

そしてロレンソは・・・・。ゴヤがその姿を見届けるラストシーンです。壮絶なラストを迎えます。これでイネスは救われたのかな???そしてロレンソは結果、罪を償ったということなるのでしょうか?人間は都合のいいように回っていると、こんな目に合うのかもしれません。

 

「アマデウス」「カッコーの巣の上で」の巨匠ミロス・フォアマン監督が、スペインの天才画家ゴヤが活躍した激動の時代を背景に、非寛容・非人間的な異端審問がもたらした一つの悲劇を描いた歴史ドラマ。純真無垢な少女イネスと威厳に満ちた神父ロレンソが辿る数奇な運命を、2人の肖像画を手掛けるゴヤの目を通して繊細かつ重厚に描く。

 

 ミロス・フォアマン監督

ゴヤ役のキャスティング

唯一の条件は、あまり知られていない顔であることだったそうだ。観客に、ゴヤと他の顔を重ねて見てもらいたくなかった。例えばポール・ニューマンやロバート・レッドフォードがゴヤを演じたら・・・・わかるだろう。ゴヤ以外のイネスもロレンソも架空の人物だ。これは英語映画だから、ゴヤ役はスペイン人俳優でなくてはならないというのも馬鹿げている。一緒に仕事をしたかった敬愛している俳優、ハビエル・バルデムでもありきたりだし。でも彼には出てもらおうと決めていた。

ナタリー・ポートマンについて

彼女のことは全く知らなかった。ヴォーグか何かの雑誌の表紙に載っていた若い女性の写真を見ながら、ゴヤの絵に関する本を開いて、「ボルドーのミルク売り娘」という晩年の絵を見たら、ふたりの顔がとても良く似ていた。そこでこの女優のことを調べ始め、そして「クローサー」を見て、非情に優れた女優であることを知ったというわけだ。皆も気に入ってくれたので、出演してもらうことになったんだ。

本作のアイデア

ゴヤから出発したわけでもなかった。すべては、私が映画学校時代にヨーロッパの宗教裁判についての本を読み、物語の素晴らしい核になりうる事件を知ったことに始まる。しかし、共産主義社会では、それを映画化することは夢にも考えられなかった。なぜなら、スペインで起きたことと、共産主義社会で起きていることが、よく似ていたからだよ。

ゴヤの役割

ゴヤは最初から最後まで、物語全体に触媒として深く関わっているんだ。もちろん映画を見た後には理解できると思う。彼の作品の中で唯一生きる人物が誰なのか・・・・。

そしてもうひとつ、この時代を描いた映画は、いまだかってフランスでもスペインでも1本も作られていないとスペイン人に言われたことだ。おそらく両国とも、この時代のことは何となくバツが悪いと思っているだろうね。(監督インタビューから抜粋)

上映時間 114分
製作国 アメリカ/スペイン

 

オフィシャル・サイト
http://www.goya-mita.com/
 
 
 

 
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