消息のわからない娘に、母のことのことを知らせるために、作ったチラシは、娘に届くのか?
3月13日、京都みなみ会館にて鑑賞。
ドイツーーーートルコ。2000キロの距離を越えて、3組の親子がさすらう再生と希望の旅路
親子の絆は何ものにも変えられないほど、深くて強いものだ。この物語は3組の親子の話が軸となっているが、それぞれ皆心や距離が遠く離れてしまっているのだ。しかし離れているものの、人一倍その絆の深さを凄く感じる。そして忘れ去られた他人同士の繋がり、その大事さを教えてくれる。昨今そんな人間の繋がりも薄くなっているだけに、この作品はそんな薄くなっている人間関係を何とかしなければいけない!とメッセージを送っている作品なのかもしれなのでは?と・・・・・。
父アリと息子ネジャットは共通の話題がなかった。読書を勧めてもまったく興味を示さないアリ。
ST0RY
ドイツ、ブレーメン。
十数年前に妻を亡くし、定年も迎えたアリは、同じトルコ出身の○婦イェテルと出会い、月々の手当を払うかわりに、一緒に暮らしてくれるよう依頼する。ハンブルクの大学で教授を務める一人息子のネジャットは、金に物言わせようという父のやり方をあまり良くは思っていない。だが、イェテルが○婦として稼いだ金の大半を、トルコで大学に通っている娘の教育費として送金しているのを知る。またイェテルは 娘には靴屋で働いていると嘘をついていることを話し、娘を思って涙を流す。「娘に会いたい。ずっと声も聞いてないの・・・・」そんな気のいいイェテルのことを、ネジャットは好きになる。
ところで何故?イェテルはアリの世話になることになったのか?
実は仕事帰りのイェテルがバスに乗った際、トルコ人が話しかけてきた。彼女の働く場所で、トルコ語を話すイェテルを見た彼らは「トルコ人だな?宗教も、イスラムだろう?悪くしき道を悔い改めろ」と。イェテルの行為は不道徳だと説教する彼らに怒りを感じながらも、「悔い改めるわ」と答えるイェテル。この出来事が、仕事を辞めることを決意させたのだ。そしてアリのところへやって来たわけだ。
そしてあるとき父と息子はトラブルに・・・・・。
父アリは自分の留守中にイェテルとネジャットが関係したのでは?ないかと疑い、下品な質問を浴びせる。そんなアリに腹を立てたネジャットは家を出る。
イェテルもまた、身勝手なアリの言葉に怒りを覚え、ここを出ていくと宣言する。彼女の言葉に激高したアリは思わず彼女を殴り倒してしまう。打ち所悪くイェテルは・・・・・。
突然訪れるイェテルの死によって、父と息子の距離は、心理的にも、物理的にもさらに遠くなる。ネジャットはイスタンブールに渡り、イェテルがトルコに残してきた娘、アイテンを探す。トルコにとどまることを決意した彼は、ドイツに帰るという男からドイツ語専門書店を買い取るが、政治活動家のアイテンは、トルコを逃れ、すでにドイツに渡っていた。
わずかなお金を借りて、ブレーメンで働く母イェテルを探して、「靴屋」を片っ端からあたる。やがてお金はなくなり、行き場を失う。
ひとりぼっちで一文無しのアイテンは、ドイツ人学生ロッテと知り合う。ロッテはすぐに、女性としてのアイテンと、彼女の置かれた政治的状況に惹かれ、彼女を家に連れ込むが、保守的な母親スザンヌと反抗的な態度のアイテンはしばしば衝突する羽目に。
母スザンヌはアイテンに対して快く思っていなかった。娘ロッテのことも心配だ。
そんなある日、アイテンは不法滞在で逮捕され、政治的亡命の許可を待つ数ヶ月間、収容されることになる。しかし申請は却下され、アイテンはトルコに強制送還の後、投獄される。激情に駆られたロッテはすべてを捨てて、アイテンを助けようと決意しイスタンブールへと渡る。
ドイツ、トルコ――2000キロに渡って、3組の親子の運命がからみあってゆく――。
釈放は絶望的だった。テ○リストと判断されたアイテンは15~20年刑務所から出られず。面会するにも数ヶ月かかるという。
ロッテは母に電話をかけて助けを求めるが・・・・・。
すべてを捨ててアイテンを救おうとするロッテに、母スザンヌは怒りを爆発させる。
「大学はどうするの?自分の人生を無駄ににしているわ」
「彼女を助けるには私がいないとだめなのよ」
「じゃそこにいなさい。もう助ける気はないから、これからは自分でなんとかやりなさい」 「ママ!」
ロッテは失意のどん底状態だった。ところが偶然の出会いによって、ネジャットとルームメイトになり、イスタンブールでの日々を過ごす。ある日ようやくアイテンとの面会も実現する。ロッテはアイテンから秘密の依頼を受けることに。
ところがそれがきっかけで、ロッテは命を落としてしまうことに・・・・・。
さて罪を償い、出所したのち強制送還されたアリがトルコ・アタチュルク空港に降り立つ。同じ時、スザンヌもドイツからトルコへやって来た。ロッテの遺品を引き取るためだ。イスタンブールのホテルの部屋で、一人酒をあおり、号泣するスザンヌ。
翌朝、ロッテのルームメイトだったネジャットと対面したスザンヌは、娘が住んでいたアパートを訪ねる。遺品を手にし、日記を読み、これまで知り得なかった娘の自分に対する思いを知る。
娘のベッドで眠り、母に向かって微笑むロッテの幻影を見たスザンヌは、新たな一歩を踏み出す決意をする。
一方、書店を訪れた知人から、アリがトルコの黒海沿岸地区に住んでいると聞かされネジャットは複雑な思いを抱えいらだつ。
スザンヌは、アイテンの収監されている刑務所へと向かう。アイテンは泣きながら許しを乞う。
「ごめんなさい。こんなことに・・・・許してください」
「あなたを助けたいの。娘が望んでいたことよ。私もそうしたいの」
アイテンはその気持ちに応えるため、所長にすべてを打ち明ける決心をする。
イスラム教の祭り「犠牲祭」に向かう人々の姿を眺めるスザンヌにネジャットがこの祭りの起源を教える。信仰を試すため、息子を捧げようと神に命じられたイブラヒムは、子のイシュマエルを供物台へと載せた。短剣が振り下ろされる瞬間、刃先が丸くなったーーー。
「“僕を捧げる?”と父さんに聞いたことがある」
「お父様の答えは?」
「“父さんはお前を守るためなら、神だって敵に回す”と・・・・」
スザンヌとの会話によって、父親の自分に対する思いをあらためて気づかされた。ネジャットは、父アリに会うために車を黒海沿岸へと走らせるーーーー。
ネジャットは父アリの帰りをじ~っと待つ。ラストはこのシーンで終了となる。
まさに人生のロードムービー。それぞれの親子は人生に訪れる様々な出来事によって、葛藤や悲しみにぶち当たりながら、お互いに必要な存在だと知る。何事もなければ、知らずに通り過ぎるのだろうけど。そんな辛いものを乗り越えて、愛と希望を見出す彼らの再生の旅路はめぐりあい、別れ、再びつながるんだね。
キャスト
ネジャット バーキ・ダヴラク
アリ トゥンジェル・クルティズ
スザンヌ ハンナ・シグラ
アイテン ヌルギュル・イェシルチャイ
イェテル ヌルセル・キョセ
ロッテ パトリシア・ジオクロースカ
監督・脚本 ファティ・アキン
ファティ・アキン監督
主な受賞等
- カンヌ国際映画祭:脚本賞受賞
- ヨーロッパ映画賞:作品賞ノミネート、監督賞ノミネート、脚本賞受賞
- ドイツ映画賞:作品賞受賞、監督賞受賞、脚本賞受賞、編集賞受賞、助演女優賞ノミネート(ハンナ・シグラ)
- バイエルン映画賞:監督賞受賞
- セザール賞:外国語映画賞ノミネート
- 全米映画批評家協会賞:助演女優賞受賞(ハンナ・シグラ)
国内に多くのトルコ系移民を抱えるドイツとEU加盟問題に揺れるトルコ、そんな両国の社会情勢を背景に、ドイツとトルコにまたがって絡み合う3組の親子の葛藤と絆を綴るヒューマン・ドラマ。監督は自身もドイツ生まれのトルコ系移民二世である「愛より強く」のファティ・アキン。
オフィシャル・サイト
http://www.bitters.co.jp/ainikaeru/
メディア | 映画 |
上映時間 | 122分 |
製作国 | ドイツ/トルコ |
公開情報 | 劇場公開(ビターズ・エンド) |
初公開年月 | 2008/12/27 |
ジャンル | ドラマ |
映倫 | PG-12 |
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