ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ネコピアノ!?

2006年03月02日 | ネタをたずねて三千里
アタナシウス・キルヒャー(Athanasius Kircher 1601~1680)


 だいぶ前に、「犬の鳴き声」だけで録音された曲が話題になったことがありましたね。無数にサンプリングした犬の鳴き声を、音程ごとにまとめ、曲として構成したらしいです。
 なんの曲だったかは忘れましたが、とにかく最初から最後まで「ワンワン バウバウ」の大合唱の連続で、聴いてて途中で疲れてしまった・・・


 ところがです。
 時代を問わず、同じような発想をする人が他にもいたのです!
 いろんなサイトを見ていてこういうシロモノを見つけました。
 名付けて「ネコピアノ」(!)
 思わず茶を噴きました。 ;`;:゛;`(;゜;ж;゜; )ブッ


     
     キルヒャーのネコピアノ (Kircher's Cat Piano)


 17世紀のドイツの学者、アタナシウス・キルヒャー(Athanasius Kircher)の著書「Musurgia Universalis」(1650年)で紹介されています。
 「ネコピアノ」には、音程の違う鳴き声のネコが音階順に並べられています。そして鍵盤の先に付けられた釘がネコのシッポを突き、出てくるネコの鳴き声(というか叫び声だと思う)によって音楽を奏でる、という仕掛けらしいです。
 ピアノという楽器は、鍵盤に連動されているハンマーが弦を打って音を出す仕組みになっていますが、ネコピアノでは、ハンマーの替わりに釘が、弦の替わりにネコが使われている、ということなんですね。
 しかし、鍵盤の数とネコの数が合うてへん! そこが気になる。。。


 もっとも、ピアノが発明されたのは17世紀後半なので、これは正確には「ネコチェンバロ」とか「ネコクラヴィコード」と言ったほうがよいのかも。


 個人的には、こういうアホらしい発想は大好きなのですが、この場合はどう考えても動物虐待としか思えません。
 別にネコを釘で突かなくても、代わりに人間に小さな鐘を持たせて、それを鳴らさせると、立派なハンド・ベル隊になるのに・・・
 この「ネコピアノ」、とある王の気を紛らせるために作られたとされていますが、現実問題としてこれで演奏できるかどうかは疑問ですし、そもそも楽器として役立つとは思えません。これらのことから、おそらく実際には制作はされていないと思われています。ホッ。


 このバカバカしい「ネコピアノ」を紹介しているキルヒャーというオッサンは、いったいナニモノなのか? 当然疑問を抱いたぼくは、少しばかり調べてみたのです。
 すると・・・。
 このキルヒャーというお人、ドイツ生まれの、イエズス会士(司祭だったそうです)にして、数学・物理学・天文学・地質学・医学・言語学・宗教学など多方面にわたって活躍した、当時のヨーロッパ学会における最高権威で、オッサンどころか、なんと17世紀を代表する大科学者のひとりだったのですよ。


 磁力で動く時計を作ったり、音楽理論に関する著作も残していたりします。またヒエログリフ(古代エジプト文字の一種)の科学的研究に取り組んだ先駆者でもあります。
 彼の著作のひとつである「支那図説」(Kircher's China Illustrata)は、当時の第一級資料とされてもいました。ただしこの「図説」、現実と空想が入り混じっていて、今見ると、かなり珍奇なものとしか思えません。
 この「図説」をはじめとして、キルヒャーの研究には神話や伝説などが混じっていたため、晩年はデカルトなどの合理主義者から批判を受け、その後20世紀初頭までは忘れられた存在になっていたそうです。


 デカルトには「ネコピアノ」についても批判して欲しかった、とふと思ったワタクシでした。(笑)


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コメント (8)
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