♪かぐや姫「三階建の詩」
寒かった!
いや~、おととい、さきおとといと、ふるえました。もう3月も半ばですよ?
なんでも真冬並みの寒気団が来ていたそうですが、春の気配を感じていたあとだっただけに、よけいに寒さが身にしみました。
北日本や日本海側ではかなりの積雪があったそうですね。そうとう広い範囲に雪が降ったようで、ぼくの住んでいる街でも雪がちらつきました。
文字通り「なごり雪」ですね。
かぐや姫
時が経って、いつしか美しく成長して大人になったひとりの女が男のもとを去ってゆきます。「なごり雪」には、旅立つその女を見送る男の気持ちが歌われています。情景がありありと目に浮かんでくるような歌です。
駅で誰かを見送ることって、どこか寂しさがつきまとうものですよね。この歌詞も、見送ることの寂しさと別れのせつなさとが重なり合っていて、それだけでジンワリとしてきます。
そして「春」という新たな明るい季節の訪れとの対比が、いっそう寂しさをかきたてているようでもあり、その反面、新たな明日が始まることを暗示しているようにも思えます。
冬のなごりを残す雪だから「なごり雪」なのかな。それとも「別れようとしているのだけれども別れるに忍びない、彼女へのなごり」を雪に投影させた「なごり雪」なのでしょうか。
伊勢正三
「なごり雪」は、「正やん」こと伊勢正三が初めて作曲した曲だそうです。フォーク・グループ「かぐや姫」の4枚目のアルバム『三階建の詩』に収められています。
曲の完成直後から、かぐや姫の所属事務所内では、「『なごり雪』という曲は傑作だ」、としきりに言われていました。たしかに、歌詞はもちろん、曲も起伏に富んだ、しかも親しみやすくて温かいメロディーを持ってますもんね。
この曲をカヴァーするミュージシャンも多く、2005年には平原綾香が自身のアルバムで歌っています。
数多ある「なごり雪」の中でぼくが一番好きなのはやっぱりかぐや姫ヴァージョン、次いでイルカの歌っているものですね。
この曲をイルカのシングルとして出したい、という事務所の意向に反して、イルカ自身は「歌いたくありません」と断わったそうです。理由はふたつ。
この曲が気に入らないどころか、むしろ彼女は「とてもいい曲だ」と思っていたのですが、かぐや姫が醸し出している雰囲気を壊すことを恐れたのです。
そしてもうひとつ。
「なごり雪」はアルバムの発表当初から、「誰が歌ってもヒットするだろう」と言われていたほど評判が高かったのですが、イルカはそれに甘んじて「なごり雪」を利用することを潔しとしなかったのです。「私は曲をヒットさせることを目的に歌ってるんじゃない」、と。
イルカの人柄が垣間見えるような、ちょっといい話だと思いませんか?
1974年夏にラジオの深夜放送でDJを務めるようになってから人気者になったイルカですが、それまでは全く売れていませんでした。彼女が結婚式の日取りを5月1日(1972年)にしたのも、「メーデーでメがデますように」という願いからだったそうです。
「なごり雪」は1975年11月にイルカの新曲として発表され、翌年にかけて55万枚、累計売上80万枚の大ヒットを記録しました。以後現在に至るまで多くの人に愛され続けています。
2002年には、伊勢正三とイルカが、それぞれにセルフ・カヴァーしましたね。
[追記]
伊勢正三がこの曲の歌詞を書いた当時、「なごり雪」という言葉はなかったそうです。
伊勢さんの造語だったことが一部からの批判を招きました。「こんな言葉を勝手に作るのは日本語の乱れにつながる」という声まで上がったといいます。
しかし時は流れ、約40年後の2013年に日本気象協会が「季節のことば36選」を選定しましたが、この中で3月の言葉として「なごり雪」が選ばれました。
伊勢さんの感慨も、ひときわ深いものがあったのではないでしょうか。
[歌 詞]
◆なごり雪
■歌・演奏
かぐや姫
■発表
1974年3月12日(アルバム) ※かぐや姫としてはシングル・カットはしていない
■作詞作曲
伊勢正三
■収録アルバム
三階建の詩(1974年)
■かぐや姫
南こうせつ(vocal, guitar)
伊勢正三(vocal, guitar)
山田パンダ(vocal, bass)
■チャート最高位(「三階建の詩」)
1974年オリコン週間アルバムチャート1位
1974年オリコン年間アルバムチャート5位
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■歌
イルカ
■シングル・リリース
1975年11月5日
■編曲
松任谷正隆
■収録アルバム
夢の人
■録音メンバー
イルカ(vocal)
吉川忠英(acoustic-guitar)
鈴木茂(electric-guitar)
宮下恵補(bass)
村上秀一(drums)
■チャート最高位
オリコン週間チャート4位
1976年度オリコン年間チャート11位
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■歌
伊勢正三(セルフ・カヴァー)
■シングル・リリース
2002年4月13日