ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ジャニスの祈り (Move Over)

2006年03月06日 | 名盤

 1960~70年代の、ロックの名曲がCMソングとして使われることって多いですね。
 この間、テレビから流れてきた「午後の紅茶」のCMに思わず耳がピクリとしました。「おお、ジャニスの『ムーヴ・オーヴァー』じゃないか!」。しかし歌声がなんか違うような・・・。もしや、松浦亜弥嬢が? まさか、そんな、ね~。一介のアイドルにあの曲が歌いこなせるワケが。。。などと亜弥嬢にはたいへんシツレイなことをつい考えてしまいました。
 で、調べてみたんです(いや~、ネットって便利)。すると! なんと、というか、やっぱり、というか、とにかく亜弥嬢が歌ってるということが解りました。これにはちょっとビックリ、ちょっと感心。いろんなブログを見てみると、おおむね亜弥ファンからは好意的に「いいよね~」、ジャニス・ファンからは否定的に「松浦亜弥にはちょっと・・・」という感じに受け取とられているようです。
 ぼくは、「けっこう可愛く、一生懸命歌っているようだから、あれはあれでいいんじゃないかな~」なんて思ってます。


     
     松浦亜弥


 オリジナルは言わずとしれたジャニス・ジョプリン。あの名盤「パール」(Pearl)の1曲目に収録されています。ずるい男との恋のかけひきを歌った曲で、ハード・ロックの古典とも言われていると同時に、ロック史上に残る名曲のひとつでもあります。


     


 ジャニスのステージングは非常にエネルギッシュです。足を蹴り上げ、髪を振り乱し、思いのたけを訴えるように、全身全霊を込めて声を絞り出しているように見えます。
 あるテレビ番組に出演したジャニスがこの曲を歌っている映像を見たことがありますが、やっぱりカッコいいですね。貫禄さえ感じました。インタビューには飾ることなく、ユーモアをまじえながらも率直に答えていて、ジャニスの人柄を垣間見たような気がしました。


     


 1960年代のアメリカといえど、地方都市は、いや地方都市だからこそまだまだ保守的だったようです。そういう中で育ったジャニスは、つねに自分が周りから疎外され、両親からは枠にはめられているような窮屈さを感じていたようです。そのうえ、ジャニスには自分の容姿などに対するさまざまなコンプレックスがあり、それは死ぬまで消えなかったといいます。


 彼女の言動が型破りなのは持って生まれた個性なのか、一種の強がりなのか、それはぼくには分からないけれども、それまでの女性には見られない強烈なパーソナリティーを持っていたことは確かでしょう。だからこそ彼女は、孤独感や劣等感などと戦い続け、はっきりと自己主張し、デリケートな自分の心が感じるがままを歌い続けたのだと思います。
 そして自身の音楽を含めたその過激な言動は、「自分自身についての表現」なのではないでしょうか。
 「ムーヴ・オーヴァー」の歌詞には、そういったジャニスのパーソナルな部分がとてもよく出ているような気がします。


     


 「ムーヴ・オーヴァー」、ドラムが刻む歯切れのよいリズムに続き、ジャニスのヴォーカルとギターのユニゾンで始まります。印象的で、とてもゴキゲンなリフです。これにベースが加わり、オルガンとピアノがかぶってきます。
 さすがにヴォーカルには聴き手の心を揺さぶる迫力がありますね。それに加えてツヤみたいなものまで感じられます。


 松浦亜弥ヴァージョンは、今のところCD化される予定はないということですが、一度はフルコーラス聴いてみたい気がします。



[歌 詞]
[大 意]
もう終わったと言うのねベイビー そうよ終わりよ
だったら何をグズグズしているの さあ、早く消えてちょうだい
あたしは男が欲しいのよ それはあんたも分かってるじゃない
なのにあたしが誘ったら「さあね」ですって そんなのないわ

頼むからそんなことしないでよ、ベイブ
あたしの愛を受け入れるか、さもなきゃ放っといて
ひとり歩きはできないわ 心の準備ができてないの
でもあんたの嘘を放ってはおけないわ ああ、宙ぶらりんなあたし

心を決めて あたしをもて遊ばないで 決心してよ、ダーリン 
あたしをオモチャにしないで、さあ 
恋人になってくれるの? 抱かせてくれるの?
さもなきゃ放っといて

それともあたしの愛を受け入れるの? ハニー、あたしを自由にさせて
頼むから、お願いだから好きにさせてよ 意地悪な人ね
あたしの気持ちをもて遊んでるのね
きっとあたしの愛を オモチャにしてるんだわ
もうゴメンよ、ベイビー ましてその気はないわ
あたしの気を繫ぎ留めておく気なのね
まだついてくると思ってるんでしょ ニカワかなにかでくっつけたみたいに…




Janis Joplin 「Move Over」From THE DICK CAVETT SHOW. June 25, 1970.



ジャニスの祈り/Move Over
  ■収録アルバム
    パール/Pearl (1971年)
  ■シングル・リリース
    1971年(「Get it While You Can(全米78位)」のB面としてリリース)
  ■作詞・作曲
    ジャニス・ジョプリン/Janis Joplin
  ■プロデュース
    ポール・ロスチャイルド/Paul A. Rothchild
  ■演奏
   ☆ジャニス・ジョプリン&フル・ティルト・ブギー
    ジャニス・ジョプリン/Janis Joplin (vocal)
    ジョン・ティル/John Till (guitar)
    ブラッド・キャンベル/Brad Campbell(bass)
    ケン・ピアーソン/Ken Pearson (organ)
    リチャード・ベル/Richard Bell (piano)
    クラーク・ピアソン/Clark Pierson (drums)



コメント (12)
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