ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

この素晴らしき世界 (What A Wonderful World)

2007年07月28日 | 名曲


  「サッチモ」ことルイ・アームストロングが1964年に歌った「ハロー・ドーリー」のヒットに気を良くしたか、再びサッチモによるポピュラー・ヒットを狙ったプロデューサーのボブ・シールが1967年に作曲(作曲者のジョージ・ダグラスはシールのペンネーム)したのが、サッチモの数あるレパートリーの中でもたいへん有名な「この素晴らしき世界」です。


     


 「ハロー・ドーリー」のように、全米No.1とはいきませんでしたが、ビルボードのアダルト・コンテンポラリー・チャートで最高12位、全英チャートには29週ランク・インし、4週連続1位となりました。
 1987年には、ロビン・ウィリアムス主演の映画「グッド・モーニング・ヴェトナム」で使われて火がつき、ビルボードで32位まで上がったのを始めとしてオーストラリアとベルギーのウルトラトップ30で1位、オランダのメディアマーケットで2位、ニュージーランドで8位となるなど、サッチモの死後16年目にして、彼最大のヒット曲となりました。
 また、日本ではホンダをはじめ、再三に渡っていろんなCMに使われているので、この曲をご存知の方も多いと思います。


 サッチモ独特のダミ声と、優しい温もりのある歌詞が胸に響く名曲です。8分の12拍子の、いわゆる3連ノリの曲ですが、リズム&ブルーズのように重く粘っこいリズムではなく、サラリとした3連です。
 歌も、力コブを入れて歌っているのではなくて、ふと今までの人生を振り返ったサッチモが、「良い人生だったよ」と呟いているかのような雰囲気です。
 静かなアレンジのストリングスがサッチモの声と対照的ですね。  
 語りかけるようなサッチモの歌は慈愛に満ちていて、英語が分からないぼくの胸も、感動の波に洗われます。


     


 1970年、サッチモの70歳を祝って、彼のこれまでの業績の集大成として1枚のアルバムが収録されることになりました。その時に集まった大勢の後輩たちを前にして、サッチモは「この素晴らしき世界」のイントロでスピーチを始めました。
「君達若い連中の中にはオレにこう言ってくる者もいる
 『オヤジさん、"素晴らしき世界"ってどういう意味なんですか?
  世界中で起こっている戦争も素晴らしいのですか?
  飢餓や汚染はどこが素晴らしいのですか?』
 だけど、このオヤジの言うことも聞いてみないかい
 オレには、世界はそんなに悪くない、と思えるんだ
 オレが言いたいのはね 
 世界は素晴らしくなる、そう思って行動すればってこと 
 愛だよ、愛。それが秘訣さ
 もっともっとオレ達が愛し合えば問題も減るし
 世界はとびきりいいところになるんだ
 それがこのオヤジのずっと言っていることなんだ」


 これが、この曲に込められたサッチモの思いなんですね。


 ぼくが尊敬している名テナー・サックス奏者の故・津田清さんは、好んで「この素晴らしき世界」をステージで演奏していました。津田さんの吹くサックスもとても優しくて、まさしく「この世界はなんて素晴らしいんや、なあ、分かるか」と語りかけられているような音色だったのを覚えています。


     
     Louis Armstrong 『What a Wonderful World』


 この曲を取り上げるミュージシャンもたいへん多いです。ジャズメンに限らず、ロック、ポップス、R&Bなど、ジャンルを越えて愛されています。有名なところでは、トニー・ベネット、B.B.キング、ロッド・スチュアート、サラ・ブライトマン、トゥーツ・シールマンスなどの名が挙げられます。日本でも本田美奈子、渡辺美里、中島美嘉、槙原敬之らが自分のCDの中でこの曲を歌っています。
 レコーディングはしていないけれどもステージでは歌っている、という人も少なからずいますね。



[歌 詞]

[大 意]
木々は緑に輝き赤いバラは美しく どれも私たちの為に 咲いている
そしてふと思う なんて世界は素晴らしいんだ

どこまでも青い空と真っ白な雲 光りあふれる日と聖なる夜
そしてふと思う なんて世界は素晴らしいんだ

七色の虹は美しく輝き 行きかう人々の顔も輝いている
友だちが手を取り合い 挨拶をかわし 「愛してる」と言っている

赤ん坊は泣き やがて育っていく きっとたくさんの事を学びながら
そしてふと思う なんて世界は素晴らしいんだ

 
 
 
◆この素晴らしき世界/What A Wonderful World
  ■歌
    ルイ・アームストロング/Louis Armstrong
  ■シングル・リリース
    1967年
  ■収録アルバム
    What a Wonderful World (1968年)
  ■作詞
    ジョージ・デヴィッド・ワイス/George David Weiss
  ■作曲
    ジョージ・ダグラス(=ボブ・シール)/George Douglas (Bob Thiele)
  ■プロデュース
    ボブ・シール/Bob Thiele
  ■チャート最高位
    1967年週間チャート  アメリカ(ビルボード)116位、アメリカ(ビルボード・アダルト・コンテンポラリー・チャート)12位、イギリス1位
    1988年週間チャート  アメリカ(ビルボード)32位、アメリカ(ビルボード・アダルト・コンテンポラリー・チャート)7位


ルイ・アームストロング『この素晴らしき世界』

コメント (18)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする