あるお母さんが、わが子を背中におんぶして公園へ散歩に行きました。
公園に足を踏み入れ、樹木が茂る場所へ近づきました。
すると、小鳥たちが、人の気配を感じて、青空に向け、何羽かが飛び立ちました。
お母さんが、「あっ!」と言って、小鳥たちの方を見ました。
すると、背中におわれた小さな子どもも、お母さんが向いているのと同じ方向を見ました。
こんな小さな子どもでも、お母さんが向けた注意に対して、同じ注意を払うのです。
これは、専門的には「ジョイント・アテンション」(= joint attention)といいます。
私は、このエピソードを、約20年前に、当時大阪大学の教授であった、故池田寛さんから教わりました。
おとなと子どもの関係が、幼少期から築かれ積み上げられ、子どもは豊かに成長していくという研修でした。
ここからおとなから子どもへのかかわりが、子どもの育ちにとって、いかに大切かがわかります。
当時、池田先生は、地域の人間関係が希薄になる中で、教育コミュニティを再構成する必要性を説く地域コミュニティ論を唱導されていました。
地域に開かれた学校という言葉が言われて久しくなります。
今まで、日本社会では親だけではなく、近所の人など地域の人との人間関係が子どもを育ててきた。
その人間関係が弱体化したのなら、学校をキーステーションとして、子どもとおとなが出会い、関わり合う人間関係を再構築しよう。
これが、地域に開かれた学校のねらいです。目指すものは、子どもの豊かな成長です。
それ以来、私は市内の別の中学校で、開かれた学校づくりの推進教員の仕事をしてきました。
その頃から府内各地域で、学校にゲストティーチャーや外部講師を招聘して、一緒に活動したり、子どもが教わる取り組みが始まったのです。
西南小校区の西南ジャンボリーや南小校区のみなみパワフルランドなどは、遊びを通して地域のおとなが子どもにかかわり、子どもの成長を育む活動です。
じつは、太田房江もと大阪府知事は、この考えを拠り所として、府内各地域に中学校区を単位とした「地域教育協議会」を構成して、コミュニティを形成する予算付けをされました。「すこやかネット」と呼ばれる事業でした。
ただ、箕面市の場合、従来より「青少年を守る会」の小学校区を単位とする活動がしっかりと根付いていましたから、中学校校区単位の活動が広がらず、今に至っています。
ではあるのですが、子どもの豊かな成長のために多様なおとなが学校教育にかかわっていくことが必要であることは言うまでもありません。
今年度でいえば、三中では、2年生が「あすチャレ」をやりました。また、職場体験もおとなから中学生へのかかわりがあります。
昨年度では、1年生が障害のある人に来てもらい、クルマいす体験や点字の学習などの福祉体験をしました。また、3年生がNGOの人やLGBTの当事者に来てもらい、聞きとりをしました。
加えて、開かれた学校とは、「人」を開くだけでなく、学校が「情報」を開くという側面も大切です。
とかく、「学校は情報を出さない、学校は情報を隠す」と言われます。
私がブログを毎日更新しているのは、三中のことや三中教育の考えに関する情報をできるだけ多く、保護者の人や地域の人に知ってほしいと意図するからです。