箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

文学の命脈とは

2023年06月30日 06時49分00秒 | 教育・子育てあれこれ


文学は読まれてこそ価値をもちます。

そして、人によってその理解や学びとることはそれぞれです。

川端康成の名作『雪国』の書き出し、「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」を読んで、


風景が変わるほど長いトンネルだったのか。

標高が高くなったのか。

ここからが別世界の始まりてあると、暗示しているのかも。

急に寒くなってきた。

・・・・・


人によって、いろいろな感じ方や解釈があります。

つまり、文学は自由に理解されるものなのです。

ということは、作者の意図が誤解されることもあるのです。

ここで翻って、学校の国語の先生のありようが問われてきます。

「これはこういうもの」と、教師が「正しい読み方」を押しつけるならば、文学は文学としての命脈を断ち切られてしまうのです。

文学を読むのに、正しい答えはないのです。

でも、文学には間違った答えはあるのです。

このことを文学指導をする教師は心得ていなければならないのです。



苦節14年

2023年06月29日 07時46分00秒 | 教育・子育てあれこれ
大阪府箕面市には野口英世の銅像が立っています。

大正時代に野口英世博士は大阪城を見学し、その後箕面を訪問しました。

野口英世は、New York のロックフェラー研究所で正員となり、黄熱病の研究で業績をあげ、その翌年に帰国しました。

彼は24歳で留学して、14年間の業績が認められました。

その実感を表した言葉が残っています、

「忍耐は苦し、されどその実は甘し」

苦節14年の経験がつまった言葉です。



世界の「後進国」 日本

2023年06月28日 06時41分00秒 | 教育・子育てあれこれ
2023年の男女格差指数(ジェンダーギャップ指数)が、世界経済フォーラムから公表されました。

日本は146の国の中で、125番目でした。

昨年は116番目でしたので、さらに後退したことになります。

これは、いわゆるG7と言われる「主要7カ国」の中で7番目となります。

そもそも、誰が「主要」と言うのか、決めるのか、言葉そのものにひっかかりを覚えますが、日本は男女間の格差が、世界の中でとても大きいということは紛れもない事実です。

なんともお寒い話です。


政治面、経済面、教育面、健康面で14項目の観点を設定し、男女の格差を数値化しています。

数字が1に近いほど、男女が対等です。日本は約0.65でした。

とくに、管理職の男女比率、労働での賃金比率、国会議員の比率で、日本の場合格差が大きくなっています。

このことにかぎらず、国連人権委員会から日本は再三の是正勧告を受けています。

外国人に対する処遇改善もそうですが、日本に対して、「懸念」が示されています。

しかし、「勧告であり、法的拘束力はない。日本には日本の事情がある。とやかく言うな」。

このようにたかをくくっているのかどうかはわかりませんが、政府は一向に是正しようとはしません。

そういう意味で、日本は世界の「後進国」なのです。




あなたの価値は動かない

2023年06月27日 14時18分00秒 | 教育・子育てあれこれ
教育では、ほめて子どもを育てることの大切さが語られることがあります。

これは一面の真理を突いています。

悪口や非難ばかりを受けて育った子は、自己肯定感が低く、自分に自信をもつことができません。

おとなについても、誰でも他人からほめられたり、いい評価されたりすると、悪い気持ちはしないものです。

しかし、おとなの場合は、ほめられるのを求めすぎるのもほどほどにしておくべきです。


一方、他人から非難されたり、できていない点を指摘されたり、くさされたりすると落ち込んだりする。

ほめられて有頂天になったり、けなされて落ちこんだりするのは、ナンセンスです。

なぜかというと、他者からの言葉で、その人の価値が急に変わるものではないからです。

他者からの言葉で一喜一憂せず、つねに自分を律することの方が重要です。

自分の価値は、もっと別のところにあるのですから。



解放は自分を解き放つこと

2023年06月27日 06時46分00秒 | 教育・子育てあれこれ
人の可能性をせばめるものの一つに「思い込み」があります。

わたしは勉強が苦手。

あの人は意地悪だから、距離を置きたい。

わたしはもう若くない。

しかし医学的な見地では、後ろ向きのネガティブな考えは、脳にすりこまれやすいと聞きます。

もう若くないというすりこみは脳をほんとうに老化させるのです。

だから、あえてもう若くないと思うことがあると、「しかし今からが人生で若い日々を送れる」とつぶやくのです。

そうすると、不思議にも気持ちが軽くなり、何かできそうな気がしてきます。

わたしは、もう定年退職したから、教育に関してできることはない。

そうてはなく、その経験を活かしてできることがある。

思い込みとは自分で自分に制限をかけ、自らの可能性を狭めていくのです。

自分をしばっているものがあることに気がついて、そこから自由になること。それが「解放」だと思います。

しばっているのは他者ではなく、じつは自分なのです。

過去とつながっている

2023年06月26日 06時50分00秒 | 教育・子育てあれこれ
日本は敗戦(1945年)まで、外国を侵略し、植民地支配を続けてきました。

敗戦から80年近くが経ち、今の中学生には「戦争は昔のこと」という思いが強いかもしれません。

「昔の大人がやってきた過ちであり、私たちは外国を侵略したりしていません」

このように、たしかに戦後生まれの今の中学生は、武器をもち外国の人を殺めたり、土地を奪ったりはしていないので、直接的な責任はないでしょう。

しかしいまの子は、その誤りを生んだ社会の連続性のある社会に生きています。

もし、戦争が風化していくのなら、その風化という経過に直接的に関わるのであり、過去と無関係ではいられないのです。

この見地から戦争を捉え、平和を希求する人を育てるのが、学校で実践する平和教育の本筋です。

6.23に想う

2023年06月23日 06時42分00秒 | 教育・子育てあれこれ

今日6月23日は、沖縄へ修学旅行を行っている中学校の3年生で平和を学習した生徒とっては、特別な思い入れの日です。

1945年6月23日には、沖縄摩文仁の丘で、日本軍牛島総司令官が自殺して、沖縄戦の「組織的な」戦争は終わった日とされています。

アメリカ軍に追い詰められ、南部で抵抗を続けて、激戦となるにつれ、日米の両方で20万人もの人が亡くなりました。

そのうち、約半数は一般住民でした。

戦争は、いつも立場の弱い人が犠牲になります。

それは、約80年前のことではなく、現在もウクライナでは、一般住民の被害者が出ています。

沖縄を二度と戦場にさせない。
人間の命が脅かされ、地域の平和に揺らぎが見える今、沖縄の人びとの思いと願いを、私たちは大切にしたいと思います。

許しあうことを学ぶのが学校

2023年06月22日 08時32分00秒 | 教育・子育てあれこれ

感染症が流行ったり、生活苦に直面し、物価高が追い打ちをかけたり、なんとなく生きづらさを感じる世相です。

人間づきあいの個人化が進みます。

共同体が弱くなり、人と人の分断が深刻になり、孤立化も進行中です。

うまくいかなければ、「自己責任」にかえされてしまうことも多くなりました。

なんとなく、ギスギスした人間関係に悩む人も多いのが、いまという時代です。

人のことには干渉しないから、私のこともとやかく言わないで。

新型コロナウイルス感染症が広がったころ、他者への容赦ない攻撃が落書きやSNSでの書き込みにあらわれました。

学校では、そのような事案への恐怖や感染の不安から、学校への登校を渋り始めた子が出ました。

いま、人が人とつながることを学び、人への信頼を高めることが学校教育に求められています。

完全・完璧な子なんていません。

授業で間違っても、許される。

失敗しても許される。

それを知るのが学校での教育活動の根本に位置づかなけらばならない。


許すことができない人間はさみしいね。人生なんて許してなんぼだから。

『ちびまる子ちゃん』(さくらこたけ作)に出てくるおばあちゃんが言った言葉です。

いま、かえって新鮮な言葉として、子どもにも伝えたいです。


韓国とのパートナーシップ

2023年06月21日 09時02分00秒 | 教育・子育てあれこれ
隣の国、韓国は受験競争が日本の比ではないほど過酷です。

子どもは難関大学入学を目指して、学習塾をかけもちします。

親が年に200万円を超える塾代を支出する家庭も珍しくはありません。

収入より教育支出が上回る、「教育困難層」という言葉があるほど、教育熱心な家庭が多いのです。

ここまで過熱するには、それ相当の理由があります。

韓国では、大学を卒業しても3人に1人は就職できません。

くわえて、サムスンとか現代自動車のような大企業に入るのと中小企業に入るのとでは、圧倒的な賃金格差があります。

子どものために、多額の教育投資するのは子どもをもったなら、親の責任という思考回路がはたらき、難関大学→大企業を目指すのです。

子どもをもつとそれほどお金がかかるとなれば、子どもを持つ家庭が当然少なくなります。

その結果、このたび、韓国の合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に産む子どもの数)は、0.78という驚きの数字となりました。

日本も少子化が進行していますが、その1.26を大きく下回るのです。

もちろん韓国政府も少子化対策をとってきました。

児童手当をもらう所得制限はありません。2023年からは幼い子を養育する家庭には、多額の補助金を支給します。

しかし、そのお金が教育費の赤字補填に使われることもしばしばです。

また、20歳代の失業率は6%を超えており、平均失業率の約2倍です。

せっかく大学を卒業したのだからという理由で、大企業への就職を望み、就職浪人をする人が多く、失業率を底上げするのです。

また、どこかに就職しても非正規雇用は10人に約4人です。

こうした生活苦のため、若者層は結婚したくともできにくくなります。

その上、女性の就業は男性よりも低く、男女の賃金格差は大きく、日本をもしのぎます。

そうなると、大企業に就職できた女性は「人生のサクセスストーリー」を思い描き、晩婚化・未婚化に拍車がかかります。

30歳代の男女の未婚率は4割を超えています。

新居を持つにも、ソウル周辺のマンション代は高騰していて、とても手が出せません。

以上のような複合的な原因が重なり、ドラスティックに少子化が進行しているのが韓国です。

日本も韓国ほど極端ではないにしろ、世界の「少子化先進国」です。

両国に共通するのは、①子育て・教育にかかる経済的負担が大きい。 ② 若い人を就労面で支える手立てが多くない ③ 子育て面や就労面でのジェンダー格差がある、ということでしょう。

ならば、隣国同士のパートナーシップを発揮して、共通して知恵を出し合い、少子化対策を進めていく。

今の若い人は韓国コスメや韓国グルメ、K-POPなどの芸能に惹かれます。

キムチは抵抗感なく受け入れられ、いまや国内でいちばん食べられる漬物はキムチです。

韓流ドラマをみる人も多いです。

両国の新たな関係が日韓関係の改善を促し、友好関係をさらに深めることができる可能性をもっています。

それが隣国同士の連帯だと思います。







期待は外れても・・・

2023年06月20日 08時12分00秒 | 教育・子育てあれこれ
期待が不満に変わることはよくあります。

とくに対人関係で、相手に寄せた期待がその通りにならないときには、不満に変わります。

「あの人なら、こうしてくれるだろう」と期待します。

期待しすぎると、ガッカリすることになります。

不満は失望になることもあります。

人間関係というものは、とかく難しいものです。

そこで、わたしは「希望はしても、期待はするな」と、自らを戒めていました。

このように指導したから、その生徒はこんなふうにしてくれるだろう。いや、きっとするに違いない。

ところが中学生にもなると、どうするかを決めるのはその子自身です。

本人が納得して、先生の言うとおりに、そうした方がいいと思ったときには、教師の希望通りになります。

そんなふうに考え、教員をしてきました。

しかし、いま考えてみれば、人間とは未熟なものです。

だから、間違いも失敗もします。

人間は足りないところがあり、足りないところをお互いに補いあうところに、共に生きる意味があるのでしょう。

期待はずれに出くわしても、いつか応えてくれるだろうという程度につきあっていくのが、教育的指導であり、人と人との人間関係なのでしょう。

物語を語れる人

2023年06月19日 06時27分00秒 | 教育・子育てあれこれ

わたしは、いま教育行政に関わる仕事と兼職・兼業として大学で教員志望の学生に教職に就くサポートをしています。

教員採用試験試験には、多くの自治体で面接があります。

面接は対面方式で行われます。

質問に対して、学生が口頭で答えるときのテクニックとして、ストーリーテリングの手法をアドバイスしています。

たとえば「あなたは学生時代にどんな困難を経験しましたか」「それをどう克服しましたか」という問いに答えることがあります。

その問いへの受け答えを聴くことで、教職に就いたとき出会う困難に屈せず、克服しようという態度を見きわめるのです。

その際、長く語るのはNO GOODですが、経験したことがいかにたいへんだったか、それを乗り越えたストーリーは、聴く人の心を揺さぶります。

物語的に切々と語るのは効果があります。

厳しい試練は、経験した本人に物語を作るのです。

人は失敗や試練がないと、思考と感情は深くはたらかないのです。

その点で、失敗や試練に育てられた人は、その克服体験が、ほかの違うフィールドでもいかされていくのです。

森林浴のすすめ

2023年06月18日 07時53分00秒 | 教育・子育てあれこれ

自宅の近隣には緑が多く残っています。

年齢がいくほど、自然の中にいることに安堵感を覚えます。

先日、電車の駅を降り、自宅に向かう途中で、小川のせせらぎの音が聞こえてきました。

妙に落ち着くというか、子どものときに聞き慣れたふるさとの音に懐かしさを感じました。

時々緑の中を散歩します。

森や林の中に身を置くと体も心も落ち着きます。



これは副交感神経の活動が上昇するからです。

一方、交感神経はストレスなどを感じるときには高まるのですが、緑の中にいることである程度低下します。

副交感神経や交感神経の反応は体の動きです。

森林を眺めたり、葉と葉が擦れる音、小川のせせらぎ音、木の香りをかぐと五感への刺激から、このような体の反応を得ることができます。

森林の中では、とかく花粉症の大敵とされやすいヒノキや杉の木ですが、その木の香りは、脳の活動を鎮静化させたり、副交感神経の活動を高める効果ぎあると、最新の研究では考えられています。

森林浴でうつ病のような病気を治せるとまではいかないでしょうが、生活の中に自然を取り込むことで、ストレスを減らすことはできるかもしれません。

森林浴や自然の中に身を置くことで、ストレス社会を生きる私たちの五感が刺激され、心身を整えることができます。



読書感想文のすすめ

2023年06月17日 13時38分00秒 | 教育・子育てあれこれ
学校では、読書感想文を生徒に課すことが多いものです。

夏休みの長期休暇など、児童生徒が比較的ゆっくりと時間をとれる機会を使い、夏休みの宿題にする場合も多いです。

わたしの場合、ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』を読み、読書感想文を書いたのが印象に残っています。

主人公ハンスが勉学一筋に打ち込む生き方への疑問を感じるストーリーが書かれていました。それが、ちょうど自分の学校生活への疑問と重なり、共感を覚えたからです。

読書により、わたしのような経験もできるでしょう。

それ以外にも、読書により自分の世界を広げることもできるでしょう。

人が一生を生きる内に、体験・経験できることは限られています。

そのとき、自分とは違う考え方、ものごとの捉え方、異なる生き方をする他者が書いた本を読むことで、世界が広がります。

こんな考え方や捉え方、生き方もあり、それを認めることにもつながり、自分はこれでいいのだと思うことにもつながります。

また、読書感想文を書く活動は、自分が本を読んで何を思い、何を考えたかを言葉にして伝えることです。

その点で、何かモヤモヤする自分の思いを言葉に落とし込むことで、ハッキリさせることもできます。

とくに日本語は、「私は」とか「あなたは」というような主語をはっきりさせずにいう習慣があるので、読者感想文は自分がどう思うのかを他者に伝えることにも役立つのです。







コロナが保護者に与えた爪跡

2023年06月16日 07時28分00秒 | 教育・子育てあれこれ
新型コロナウイルスが残した学校教育への爪跡の一つが不登校の児童生徒の増加です。

通常の学校生活ではない、イレギュラーな授業構成、制限された会話の機会、感染への恐怖などで、不登校の児童生徒は増えました。

その不登校の課題は、保護者にも影響を与えました。

不登校の子どもが自宅で過ごすため、保護者が時短勤務をせざるをえないケースが増えました。

不登校問題に取り組むネットワーク団体の調査によると、昨年の秋の結果では、約3割の保護者が「収入が減った」と回答しました。

3%ほどの保護者は「収入がゼロになった」と答えています。

働き方形態については、「早退・遅刻勤務が増えた」と答えたのは、およそ4分の1でした。

また、経済的ににみても、食費の増加やフリースクール等に通わせわる教育費がふくらんだようです。

しかし、その一方で学校を休むことで、子どもは心理的に落ち着いた、ストレスが減ったという声もけっこうあります。

それは不登校支援のネットワーク内の保護者の集まりやプリースクールが保護者の相談役になったからと保護者は答えています。

学校や教育行政のサポートよりも、今回の場合、民間のネットワークのほうが力になるようです。