箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

偽情報、誤情報に抗う

2024年04月30日 06時51分00秒 | 教育・子育てあれこれ
1923年の関東大震災では、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマが広がり、虐殺が起こったのは有名な歴史上の事実です。

デマやニセ情報は、受け手の人びとを混乱に落し入れます。

くわえて、今はソーシャルメディアの登場によって、発信される情報が爆発的に増え、デマも拡散されコピーされて量産されるようになりました。

2016年の熊本地震では、「動物園からライオンが逃げた」という偽情報がツイッターで拡散されました。

動物園に住民からの問い合わせ電話が殺到しました。


新型コロナウイルス感染拡大時には、「ワクチン接種で不妊になる」という事実無根の情報が拡散されました。


このようにデマを広げるインフルエンサーはネット空間に多数います。


難しいのは、こうした情報を流したからといって、それだけで直ちに違法とはできないことです。


表現の自由にも関わりますし、安易に国が規制すれば、都合の良い言論統制になりかねません。


なぜこれほどまでにニセ情報や誤った情報が増えたのでしょうか。


それは情報の真偽よりも、関心や注目を示した閲覧者の数が重視され、アクセス数が多いほど収益がふえるというしくみがあるからです。


今やネット空間では、アクセス数さえ稼げれば、炎上も辞さないという人がいます。


自分の投稿を見てもらうこと、拡散してもらうこと、「いいね!」をしてもらうことが直接の収益を生みます。


価値の基準が、正しいかどうかではなく、ユーザーが見たいのかどうか、面白いと思うかどうかになってしまっているのです。


だからこそ、今はあらためて情報については量よりも質が問われるのです。


裏づけのある正確な情報を発信するのが、ジャーナリズムの役割なのです。


また、情報の受け手の教育も大切です。


学校教育のなかでの、メディアリテラシー教育の充実が求められます。


情報をいろいろな角度から、つまり別の人の意見や立場の違う人の情報から吟味して、根拠をもって考える力を身につけていくのです。












ネガティブな言葉は言わない

2024年04月29日 07時01分00秒 | 教育・子育てあれこれ
言葉は言葉であり、それ以上でもそれ以下でもないです。

しかし、どういう感情や気持ちがのるかで、人の考えや行動につながります。

ネガティブな言葉を発すると、ますますネガティブにしかものごとを見られなくなります。

「できない」「できない」「わたしにはできない」といいつづけると、ネガティブにしか考えられなくなり、ほんとうにできなくなります。

だから、ネガティブな言葉は口に出さないようにしたほうがいいのです。

企業が社員に投資する時代

2024年04月28日 06時43分00秒 | 教育・子育てあれこれ
リスキリングが、いま注目されています。

Re-Skillingからきています。

企業が従業員に対して学習の機会を提供したり、個人が新しいスキルを身につけ、転職やキャリアアップをはかることです。

企業は事業を継続させる、個人としてはキャリアアップにつながります。

一方、いまは大学をはじめとするリカレント教育も勧められていますが、リカレント教育は、あくまで、個人の自発的な学びです。

それは生涯学習の一環としての教育ですので、リスキングとは意味が異なります。

さて、ではいま、なぜリスキリングが必要なのでしょうか。

労働人口が減っています。企業は人を経営のために活用する資源(人材)ではなく、人を投資の対象と捉えるように変わってきたのです。


これが最大の理由ですが、企業による社員の捉え方の本来に近づいたという見方ができます。


従業員の潜在能力の最大化を図るためにリスキリングが必要となっているのです。


業務の一環として従業員に新しいチャレンジをしてほしいと企業は考えるようになっています。


従業員も新型コロナウイルス禍以降、自分の価値を高めていこうという意識が強くなってきました。


リスキリングは技術的な面が注目されがちですが、社会からの要請だと捉えた方がいいでしょう。


「私は文系だから理系のことは無理」といったきめつけを取り去り、異業種のリスキリングにチャレンジする人も出てきています。


リスキングははじまったばかりですが、これから本格的になってくるでしょう。


短く、わかりやすい言葉で行動につなげる

2024年04月27日 07時49分00秒 | 教育・子育てあれこれ
わたしは校長を務めているとき、中学生向けの講演会で、講師の先生からペップトークを学んだことがあります。

人の心を鼓舞して、はげます手法です。

①事実へ共感する
あなたの気持ちはわかりますよ。ほんとうにそうですね。

②考え方を変換する
違った角度から、相手の考え方を変えるようにはたらきかけます。

③行動をうながし励ます
具体的な言葉をかけ行動することを促し、「さあ、行きましょう」と決意で締める。

その話し方を、実際に中学生に実践したのが次の話です。

「そうだね、緊張するのは無理もないよ。こんな大きなコンクールは初めてだから。 ①

でも、あなたたちの演奏が聞く人の心の底を光で照らすことができますよ。 ②

今日一日だけは、賞をとることよりも、聞く人の心を明るくしましょう。さあ、いい音を聞かせてください。  ③ 」


※ ②は、シューマンの言葉「人間の心の奥底に光を送ること。これが芸術家の使命である」を参考に、中学生に伝わるようにして、考え方の転換を行いました。


このように、大阪府代表を決めるコンクール直前の吹奏楽部員に伝えました。

そのポイントは、短さとわかりやすさです。

言葉は思考と感情に影響を与え、行動をかたちづくる力をもっているのです。



愛は勝つ

2024年04月26日 07時05分00秒 | 教育・子育てあれこれ
私が出会った中学生の中で、「ぼくはこの曲がいちばん気に入っている。とても好きな曲です」と言っていた子がいました。

そのお気に入りの曲は、KANさんの『愛は勝つ』でした。

1990年リリースの曲でしたが、その中学生は2010年頃に「好きな曲」と言っていました。

「生まれる前の曲だったろうに、よく知っているね」と尋ねました。

「小学生のころ聞くときがあって、それから気に入っています」と返してくれました。

歌詞がいいそうです。



心配ないからね君の勇気が

誰かにとどく明日はきっとある

どんなに困難でくじけそうでも

信じることさ必ず最後に愛は勝つ

信じることさ必ず最後に愛は勝つ





もっともつらい人に寄り添うことで生まれた曲は、人を力づけることができるのではないかと思います。

この曲は気持ちをごまかして逃げるのではなく、自分のなかの苦しみやつらさにつきあい、向き合うことで、最後に愛は勝つという信念にも通じるメッセージを、わたしはこの曲から感じます。

シンプルに伝えること

2024年04月25日 05時31分00秒 | 教育・子育てあれこれ
言葉は人を落胆させたり、悲しませたり、傷つけてしまうこともあります。

でも、誰かにあたたかい言葉をかけてもらうだけで救われることもあります。

自分がものすごく悲観的に思っていたことが、とらえかた一つで変わるもので、言葉の力とはじっさいにあるのだと思います。

その点で、言葉は伝わらないと意味がないのです。

そのためには、いろいろな修飾語は削り取り、シンプルに伝えることが大切になります。



退職交渉を請け負います

2024年04月24日 06時52分00秒 | 教育・子育てあれこれ
今は、学校の教員の中にも転職を希望する人がいます。

2023年度でも、教員採用試験に合格して、4月に初任者として小学校に着任した教員が突然に退職して、「今日から学校に来ません」となった例がありました。

学校側がその教員に連絡を取ろうとすると、学校-本人の間に、退職代行者がはいり、本人とは連絡が取れなくなりました。

もちろん、1年を終えて教員としてのやりがいを語る人も多くいるのです。

でもその一方では、年度途中で辞める人も出ているのが、学校の実情です。

その点で、「転職・転業は当たり前」と考えるいまの若い世代の特徴は、学校の教員の世界も別ではありません。

さて、いまは若い世代の人がこの4月に入社しても、すぐに辞める人が増えている時代です。

そして会社-本人の間に、退職代行業が入り、退職交渉を本人に代わって行います。

代行業にたよることを問題だと、わたしは思いません。

それよりも、辞めたいと思ったいきさつが問題だと思います。

就労環境が入社前の話とちがう。

待遇が正社員としての採用だったのに、入社してみると派遣社員だった。

騙してはダメです。

上司からのパワハラがひどい。

パワハラの防止が事業主の責任(パワハラ防止法)であるいま、社会通念上あってはならないことです。

問題は若い世代が転職に傾く点にあるというよりは、雇用側の不誠実にあると思います。

退職代行業が流行らないような就労環境の改善が必要です。





チューリップの花

2024年04月23日 06時09分00秒 | 教育・子育てあれこれ
チューリップは、日本でポピュラーな花で、オランダを思いつくことが多いです。

しかし、原産国はトルコです。

16世紀のオスマン帝国の歴史を象徴する、自信と誇りの花がチューリップです。

イスタンブールのトプカプ宮殿には、鮮やかな赤色のチューリップがたくさん描かれています。

オランダのアムステルダム郊外のキャーケンホフ公園には、チューリップをはじめほかの花の球根が700万以上植えられ、世界中からたくさんの人びとが訪れます。

赤色のチューリップは、永遠の愛という花言葉になります。

命ある人間として

2024年04月22日 07時06分00秒 | 教育・子育てあれこれ
近年、ITやAIは著しく進化発展してきています。

人間の生活はとても便利になってきています。

しかし、人間が自分の命を実感する機会がどんどん少なくなっているのではないでしょうか。

命ある人間としての幸福感を失いつつあるのではないかと考えます。

そういうときには、自分の命の躍動を感じられるような、夢中になれる楽しいことをする習慣をもつほうがいいでしょう。

人間の無知の特徴は、命に対して無知であることです。



沖縄の原風景を留める今帰仁

2024年04月21日 06時14分00秒 | 教育・子育てあれこれ
沖縄の今帰仁(なきじん)は、沖細本島北部の緑豊かな地域「やんばる」にあります。

今帰仁の集落にはフクギが植えられています。

分厚い葉は、風を防ぐだけでなく、暴風や高波による塩害も防いでくれます。

葉が塩分を吸収してくれるのです。

沖縄では茶色に錆びた自家用車をよく見かけます。

四方が海で囲まれているため、車は本州より錆が出ることが多いのです。

集落の周りをフクギの並木が囲っているので、風はやわらぎ、気温や湿度もちょうどいい具合に保たれます。

このような屋敷は、以前は沖縄のあちらこちらで見かけることができましたが、いまは大半が失われました。





今帰仁は、沖縄の原風景を留める地域です。

今帰仁へは、修学旅行の民泊で泊まりました。

古きよき沖縄が現存しているのが今帰仁です。

インプットする教師

2024年04月20日 06時33分00秒 | 教育・子育てあれこれ
教師の仕事は、ある意味で、児童生徒に対して、アウトプットすることが多いという性格をもっています。

もちろん、いまの時代では、教師は「教える」というよりは、子どもの学習を促進する役目が重視されます。

とはいえ、教師はやはり、アウトプットすることの多い仕事です。

そうなると、インプットをしっかりしておかないと、児童生徒は「からっぽ」の人から学ぶことになってしまいます。

その点で、いまよく言われている「リカレント教育」の対象には、学校の教師も含まれるのです。

また、「リスキリング」は、新しいことを学び、新しいスキルを身につけ、新しい業務に役立てることで、企業から社員への「投資」です。

学校の教師にも本人任せにするのではなく、人事を扱う教育行政もリスキリングの機会を設けるべきです。

常に学び続ける意欲と態度は、いまの教師にいちばん必要な資質です。

ただ、教師の多忙解消の目的で、働き方改革を推進する時代の中で、常に学び続ける時間をどう確保するかが課題になります。

のんべんだらりと時間を過ごすのではなく、いかに有効的に過ごすか、これは教師一人ひとりの工夫になります。



コンビニの曲がり角

2024年04月19日 06時06分00秒 | 教育・子育てあれこれ
コンビニは、アメリカで規模の小さい店が高い売り上げを上げている例をまねて、1974年に日本でセブンイレブンの1号店が東京豊洲で開店されたのが発祥とされています。

それから50年間で、コンビニは日本で独自の発展を遂げてきました。

当時、夕方になると閉店していた小売店がほとんどでしたが、コンビニは深夜まで開いていました。

しばらくして24時間営業が珍しくなくなったのでした。

遅くなっても、「開いていてよかった」と利用客は喜びました。

そもそもアメリカでのコンビニは、日用品で不足している品を買い足す役割を持った店でした。

しかし、日本では生活日常品を揃える店として発展してきたのでした。

かなり高齢と思われる地域の、ひとり暮らしをしていそうなおじいさんが食料品を買いにこられているを見かけることもあります。

現在まで、順調に店舗数も増え、売り上げも伸びてきました。

2023年には、過去最高売り上げを記録しました。

ところが、今後はどうなるかといえば、店舗数は飽和状態です。

もちろん地方に行けばまだコンビニが地域の近くにないとか、遠い場所にしかない場合もあります。


でも、昨今の働き手不足が影響し、年中無休、24時間営業では立ち行かなくなってきています。

消費者は利便性を享受してきましたが、今後は過重労働というオーナーをはじめとする店舗側の犠牲の上に成り立つビジネススタイルは限界を迎えるでしょう。

時代も変わり、コンビニは持続が可能な経営スタイルが求められています。










助けてほしいと言える関係をつむぐ

2024年04月18日 07時12分00秒 | 教育・子育てあれこれ
日本では一人住まいが増えていて、単身世帯はすべての世帯のおよそ4割を占めるようになりました。

「孤独を感じる」と調査に回答した人も、4割程度になり、回答者には単身世帯の人や経済的に困窮している人が多く含まれていました。


「親しい近所づきあいをしている」という割合は、1970年代中頃には50%を超えていましたが、今は16%ちょっとにまで減りました。

わたしの地域でも、わたしの親世代の頃の近所づきあいとわたし世代のそれとでは明らかに、希薄になってきています。

おそらく、コロナ禍は人間関係の希薄化を加速させたと考えられます。外出が減り、対面で話す機会も減りました。

孤独に感じる人が恒常化すると、孤立する危険が高まります。

そこで今、地縁的なつながり、血縁的なつながりにとってかわる居場所を整える必要があります。

家族がいないと、よく問題視されるのが見守ってくれる人がいない状態です。

同時に自分が見守る人もいないことも、自分の役割や貢献を実感できないという問題にも発展します。

ゆるやかにつながり、いざというときには他者の世話になる人間関係や居場所を、行政の行き届かない点をカバーする市民活動やNPO活動により、つくりだしていく動きも広がりつつあります。

孤独/孤立問題に周りの人びとの理解を深めていくことも大切になります。

日本社会はとかく「人には迷惑をかけない」「他者に頼るなんて。当人がしっかりしないと」という心理が強くはたらきます。

ですから、助けてほしいと言いにくく、黙っていて問題が深刻化しやすくなります。


欧米の「困ったら、人に頼る」という価値観と対照的です。

誰もが安心して暮らすことができる社会づくりは、いま喫緊の課題です。

自分の尺度をもつ

2024年04月17日 07時51分00秒 | 教育・子育てあれこれ
教育的見地からいうならば、これからの時代を生きる若い世代には、自分の尺度をもって生きてほしいです。

人生が100年時代だとすれば、学校卒業後の人生はとても長く続きます。

何がしあわせかは、周りではなく、自分が決めることです。

自分はどういうものかを知り、自分に向き合い、自分で考える。

それには、苦しさやつらさが付随するでしょう。

自分の弱さを知ることにもなります。

しかし、自覚した自分の弱さに裏打ちされた力こそが、自分の頼りになるのです。

多様な価値観に触れ、自分の尺度ができていきます。

そのように築いてきた尺度は、揺るがぬ自信となります。






体の性と心の性

2024年04月16日 08時07分00秒 | 教育・子育てあれこれ

文部科学省は、平成27年(2015年)に「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」という、教職員向けの通知を出し、性的マイノリティの児童生徒の理解と適切な支援のあり方を示しました。

心の性と体の性が一致しない児童生徒は、一つの学校に数パーセントはいると考えられます。

しかし、現在では心の性と体の性が一致しないトランスジェンダーは、障害ではないというのが国際的に認められた見解です。

文科省の通知が出された当時は、「性同一性障害」という表現が一般的に使われていたので、その名称がついています。

世界保健機関(WHO)では、かわりの言葉として、「性別不合」という表現に改め、病気の分野でなく、保健の分野の取り扱いとなっています。

ただ、通知により医学的には、「性同一性障害」という診断名により、社会に心の性と体の性が一致しない人がいるという認識を広まったという意義はあったと思います。

学校では「性的マイノリティ」とか「LGBT(Q)」という表現を教職員は使い、その理解と適切な配慮をなされるよう努めています。