私は、「教育専門員」として、各中学校を回り授業を参観して、先生を指導するこの1学期を通して、感じたことがいろいろありました。
そのうちの一つが、中学生の授業中での元気よさです。
中学生になると、あまり授業中に手を挙げて、発表したり発言したりしない生徒が多くなる。
そのような印象をお持ちのかたも多いと思います。
失敗するのがイヤだから、チャレンジしない。手を挙げて間違うくらいなら最初から手を挙げない方がマシ。
こんな中学生の心理はわからなくもありません。
しかし、私が参観したある中学校の若い先生の授業はちがっていました。
中学3年生の英語の授業でしたが、先生の質問に対して、まっすぐ上に手を挙げる子がたくさんいる授業でした。
なかには、まちがえることもありました。でも、まちがえても、その子たちは恥ずかしがったりしない態度で、また次も手を挙げていました。
私は感心しました。 それと同時に思い出した言葉がありました。
それは「失敗とは転ぶことではなく、そのまま起き上がらないことだ」 です。
この言葉は、カナダの女優でサイレント映画時代に活躍したメアリー・ピックフォード(1979年没)が言ったものです。
ところで、水を差すようですが、生徒たちが手を挙げるのには、なにかからくりがあるのでないかと思う人もいるでしょう。
じつは、たしかに、手を挙げて発表した子には、その場で先生はシールを配ります。 生徒たちはシールをもらうと、台紙に大事そうに貼っていました。
このシールは、いつもはALTが配っているのですが、この日は休みでその英語の先生が配っていました。
なんだ、シールが欲しくて手を挙げるのか。
こう感じる人もいるでしょう。でも、3年生にもなると、中学生はシール欲しさを動機にできるほど幼くはありません。
ただ、私はそのあと、もう一つ気づいたことがありました。
その授業の最後には、先生がプリントを生徒に一人30枚ぐらい配ろうとしました。
そのとき、「先生、手伝おうか?」と言って、前に数名の生徒が出てきて配り始めたのでした。
そこで、私は納得しました。
生徒たちは先生のことが好きなのです。だから、手を挙げて答えるのです。
英語を得意としない少人数授業の「基礎コース」のクラスでしたが、生徒たちは大きな声で英文を一生懸命リーディングしていました。
先生のことが好きな生徒たちは、学習の意欲が高くなりますし、かりに失敗して転んでも起き上がってきます。
授業は教師と生徒が協働でつくるコラボレーションなのです。 このことを、あらためて感じた授業でした。