「子どもがききわけがなく、困っています」という親の悩みを時々聞きます。
私の教職経験から言いますと、そういった悩みを言う人ほど、子どもの話を聴くのが苦手であるように思われます。
なぜ耳を傾けることができないかというと、このようにふるまってほしいとという、親の思いが優先されるからでないでしょうか。
実際のところ、日常の家庭生活のなかで、親は子育てに加えて、様々なことをしていかなければなりません。
そこで、「親の都合」が生まれてきます。その都合に合わせてくれる「いい子」になってほしいという気持ちが働くのです。
親は子どもには、のびのびと育ってほしいという本来的な願望をもっています。その願望と親の都合に合わせてくれる「いい子」になってほしいという葛藤の中で、じつは親は困っており、イライラするのです。
この点を踏まえるならば、親が「子どもがききわけがない」と嘆きたくなるとき、この葛藤を解消しようとしなくてもいいのです。
ただ、子どもの行動や子どもとの会話でカッとなったときには、この葛藤やいらだちが自分のなかにあるということを、親自身が意識していればいいのではないでしょうか。
この意識があるのと、気がつかずカッとなるのとでは、かなり意味が違うのです。
ただ、子どもの要求は、自分が満たされていないという思いの裏返しで出ている場合が多くあります。なかには親が納得のいかないような要求もあるでしょう。
でもこれは見方を変えるならば、満たされていないという状況を何とかしたいという前向きな気持ちの現れです。
これは現状をよくしたいという、子どものポジティブな気持ちで、おとなになっても必要とされるものです。
このとき、親がその要求をすべてかなえる必要はありません。ただ、子どもの願望を聴く態度で子どもと向きあうならば、子どもは、きっとききわけがよい子になります。