キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

Constant Nymph-永遠の処女

2011-06-25 19:54:22 | 
                

          明るくなるのが早いせいか、歳のせいか、朝とても早く目ざめます。

          するとコノハズクの鳴き声、ピチピチとかわいい小鳥の声、カラスの声、

          赤ちゃんの泣き声、自動車の音、バイクの音、人の声、犬の吠える声、

          色々な音が。耳を傾けていると、昔読んだ小説の一部が浮かんできま

          す。若い音楽家のルイスが、アルプスの丘の上で、夕暮れに語らい

          ながら、「僕には1ダースよりもっとたくさんの音が聞こえるよ。静か

          な夕暮だからね」という場面です。これは邦題が「永遠の処女」なん

          ていう意味深な、一昔前欧米で大ベストセラーになったマーガレット・

          ケネディーの小説。原題がConstant Nymph(常に変わらない妖精?)

          とこれまた日本語にしにくい言葉です。「永遠の処女」というのはちょ

          っとロマンス小説風のこの恋愛小説には似合っています。サンガーとい

          う不世出の音楽家の娘テッサと新進の音楽家ルイスのはかない悲恋

          物語ですが、そこに様々な個性的な人々が絡まり合い、当時の英国や

          ヨーロッパの音楽界や世情が盛り込まれ、読みごたえのある物語になっ

          ています。今ではあまり読まれないのがふしぎなくらい面白い小説です。

                 

               もう廃版になっているようで、中古品を手に入れました。

               価格はなんと1円!送料が250円でした。

           
             
          この小説の舞台はほとんどアルプスの高原にあるカリンデ山荘。アル

          プスの代表的な花は、エーデルヴァイスとエンティアンあるいはゲン

          ティアと呼ばれるこのリンドウと、

          

          そしてアルペンローゼ。アルプスのバラと呼ばれるくらいなのでバラ

          の一種かと思ったら、どうもツツジの仲間のよう。日本のミツバツツ

          ジやシャクナゲに近い花のようです。
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蓮の花

2011-06-25 09:23:28 | アート
            

            Die Lotosblume aengstigt
            Sich vor der Sonne Pracht,
            Und mit gesenktem Haupte
            Erwartet sie traeumend die Nacht.

            Der Mond,der ist ihr Buhle,
            Er weckt sie mit seinem Licht,
            Und ihm entschleiert sie freundlich
            Ihr frommes Blumengesicht.

            Sie blueht und glueht und leuchtet,
            Und starret stumm in die Hoeh;
            Sie duftet und weinet und zittert
            Vor Liebe und Liebesweh.


            蓮の花は恐れている
            輝く太陽の光を
            頭を垂れて
            夢見ながら夜を待っている

            月が蓮の恋人
            その光に蓮は目を覚ます
            そしてうれしげにヴェールを取り
            淑やかな花の顔を見せる

            花開き、光輝き
            黙って空を見上げる
            香り、泣いて震える        
            愛と愛の痛みに
                            ハイネ詩 わが拙訳

            

            シューマンの歌曲集「ミルテの花」の中の一曲「ハスの花」の歌詞は

            ハイネのこんなに美しい詩です。メロディーもまた繊細微妙、振幅の

            小さい音の動きで、夜開く蓮の淑やかな美しさを余すところなく表現

            しています。それだけに歌うとなると難しい。ドラマチックな華やか

            なイタリア歌曲の対極にあるような曲です。珠玉の名曲というのは、

            こんな曲を言うのでしょうか。

            

            これは去年の夏、平城宮跡を訪れた時、太極殿のそばに咲いていた蓮。

            猛暑の中、まさに一服の清涼剤でした。蓮はお釈迦さまのお花です。

            ハイネもシューマンも東洋の神秘を感じて、この曲を作ったのかもしれ

            ません。詩と曲の静かなゆらぎに何か西洋的でないものがあるような。 
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