
私の故郷は山間の小さな村ですが、その村の家々を見下ろすように村のお
寺があります。階段をかなり上った山の際にある、こじんまりした曹洞宗の
禅寺です。高校の頃でしたか、ふらふら階段を上がって行くと、几帳面なお
寺の奥さんの性格を表すような、整然としたお庭に、赤いサルスベリが見
事に咲いていました。しかもその時本堂の方から、モーツアルトのピアノ協
奏曲が流れてきたんです。「ああ、和尚さん、クラシックファンだったんだ」
とその時初めて知りました。中学校の社会科の先生でもある和尚さんでし
たが、日ごろの演歌調のお経のイメージからでしょうか、お寺とモーツアル
トというより、和尚さんとモーツアルトがどうにも結びつかず、妙な違和感を
感じたのを覚えています。

確かそのお庭には、大きなアマリリスも咲いていたような記憶があります。
これもまたお寺っぽくない。そんな風に決めつけるのもおかしいですが。

それから擬宝珠の花も。これは名前からしてもなかなかお寺向き。