ふるさとの山にむかいて言うことなし
ふるさとの山はありがたきかな 石川啄木
毎年お盆の季節に山深いふるさとに帰って、緑濃い山々を仰ぎ見ると
この詩を思い出します。もっとも私は
石をもて追はるるごとく故郷を出でし悲しみ消ゆる時なし 石川啄木
というような壮絶な体験を持ち、故郷に対して愛憎相半ばの啄木とは違い、
別に追われた訳ではありませんが、若い時に出てしまったこともあり、あの
空気の中には二度と戻れないという、何かしら複雑な気持ちもあります。
けれど、咲き乱れる野辺の薄桃色の昼顔、
ふっくり実った無花果などを見るにつけ、山に川に愛おしさを感じます。
山深い私の実家に比べ、夫の方は、大和平野の真ん中、広々とした田畑の
広がるところです。大津皇子の眠る二上山をはるかに望むと、古代の歴史
が蘇ってくるような気がします。