高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1) | |
Jane Austen,中野 康司 | |
筑摩書房 |
中国では反日の暴動が起こり、竹島あたりもきな臭く、世界を見れば反米の
テロやら、イスラム圏の抗争やら、日本の片隅にいても、嫌でも不安を感じ
ずにはいられません。英国の作家ジェーン・オースティンがこの『高慢と偏見』
を書いた時代も、フランス革命、ナポレオン戦争と激動の時代だったはずで
すが「えっ、それどこか違う世界の話でしょ?」という感じの、英国の田舎の
のどかな婚活小説です。
プライドの高すぎる裕福な青年と、彼より身分は低いが、聡明で美しい、でも
彼に偏見を抱いている女性が紆余曲折の末結ばれるというだけの話で、社会
の激動の影など露程も感じられません。ところが、みんなこの小説に夢中にな
るのです。「無人島にもし一冊持って行くならば」というよくある質問に、
この本を挙げる人もいるようです。私もそうかも。モームは世界の十大小説
の一つにこれを選び、夏目漱石は「平凡にして活躍せる文字を草して技神に
入る」と絶賛しています。これといった事件も起こらないのに、ついつい夢
中になってページをめくり、いつの間にか読み終わって大満足。不思議な小
説です。いろいろな訳が出ています。ご一読あれ。
分別と多感 (ちくま文庫) | |
Jane Austen,中野 康司 | |
筑摩書房 |
『分別と多感』(「いつか晴れた日に」というタイトルで映画にもなっている)
もお勧めです。
数年前イギリスの湖水地方ので訪れた教会です。『高慢と偏見』のヒロイン、
エリザベスに求婚するコリンズ牧師の教会はこんなだったかも。