千葉館山の那古寺(なごじ)は別名那古観音。正式名は補陀落山
千手院那古寺といいます。行基が開基したといわれる、海辺にある
千手観音立像をご本尊とする、古い小じんまりとした感じの良いお
寺です。補陀落山という寺号で、昔読んだ井上靖の「補陀落山渡海記」
を思い出しました。このお寺ではなく、熊野の補陀落寺の史実に基
づいた短編です。61歳になった代々の住職は観音様の住処である
補陀落へ渡海しなければなりません。捨身行です。これは、いく
ら僧侶とはいえ、悟りを開いていない生身の人間には辛いもの
であったでしょうね。この主人公の僧にも何の覚悟もなく、乗せら
れた船を捨て、海に飛び込み、島に流れ着きますが、そこにいた
人々にまた船に乗せられ、沖へと戻されるというお話です。生への
執着を断ち切るというのは普通の人間には不可能に思え、これを
読んだ時、この僧に深く同情したのを覚えています。極楽浄土に
行けるという確固たる自信が無い限りはとても。でも、イスラム
過激派の自爆テロを行う人々は、天国へ行けると信じて自爆する
のだといわれます。宗教って、人間って、不可思議なものです。
次に、これまた館山市にある安房神社に行きました。ここは堂々たる
大神宮です。神武天皇の時代に、今の徳島の辺り阿波のからやって
きた忌部氏が建立したので、同じ音の「安房(あわ)」という名前だと
か。この地の古名「安房」もそこから来ているそうです。
古式ゆかしい荘厳な神社です。