キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

百合-『掌の小説』より

2011-07-13 10:05:11 | 季節の花々
         

掌の小説 (新潮文庫)
川端 康成
新潮社


         「百合子はだれかが好きになると、その人と身も心も同じにならな

         いと気が済まない性質だった。結婚するとそれが益々嵩じ、夫と同

         じになるために、髪を切り、化粧をせず、ひげを生やし、活発に歩

         き、陸軍に志願しようとまでした。それを受け入れてくれない夫が

         嫌いになり、最終的には神を愛し、神と同化しようとする。神は自

         己愛の化身の花百合に彼女を変える」

         これは川端康成の「掌の小説」中でも特に短い2ページたった30行

         足らずの「百合」というお話です。誰かと同化したいという気持ちは

         女性の潜在意識の中にあるのかもしれませんね。自分では気づ

         きませんが。川端康成はそれを目ざとく見つけた、というか、関わ

         り合った多くの女性の中に、そういう人がいたのかもしれません。


         

         122編もの短いお話からなる「掌(てのひら)の小説」には、どれ一つ似

         ていると思わせるものがありません。色々なタイプの人、特人女性が

         描かれていて、読んでいて倦むことがありません。甘く切ない話、おど

         ろおどろしい話、ぞっと背筋が凍るような話、グロテスクな話、しっとり

         と情緒纏綿の話、あっと驚く顛末の話etc. いつ、どこを開いて読んで

         も面白いなどという読み物はそうありませんものね。名人技。もちろん

         一昔前の作なので、単語も仮名づかいも古めかしく、今では使用禁

         止の差別用語がやたら出てきます。それらがすべて味になっている

         のですが。今にして、川端康成を再発見しています。
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モロヘイヤ

2011-07-12 10:19:50 | グルメ
            

           お友だちがお庭で作ったモロヘイヤをたくさんいただき

           ました。スーパーでも売っていて、名前も知っていますが、

           昔からあまり食べたことのない食材って、なかなか手が

           出ないものですが、使ってみると、このネバネバ、病みつ

           きになりそうです。

           まず最初に、モロヘイヤと卵のスープを作ってみました。
 
           茹でたモロヘイヤを細かく刻んで、ブイヨンで味付けし、

           卵でとじただけですが、おいしい。

            

           トマトと刻み玉ねぎと和えて、フレンチドレッシングをかけ、

           サラダにしました。これもツルツルした食感がいい感じです。

           ナメコやオクラや納豆と一緒にして、もっとヌルヌルさせて

           もおいしそうです。

          

           モロヘイヤは古代エジプト語で「王様の食べ物」という意味

           らしいですね。クレオパトラも食べていたとか。食物繊維、

           それにビタミンなどが抜群に豊富。夏ばてに良さそうです。 
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真夏は来ぬ

2011-07-10 16:36:53 | 季節の花々
              
              
               あっという間に梅雨が明けて、暑いこと、暑いこと!ムクゲや、

              

               モミジアオイや、

              

               黄蜀葵という立派な別名もあるトロロアオイなど、

               アオイ科の花が競演する季節です。

              

               南国の花、ブーゲンビリアや、

              

               エキゾチックなコンロンカ(崑崙花)も真夏が似合う花ですね。
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フランクフルト料理本-マインハッタン料理レシピ

2011-07-09 15:56:10 | グルメ
              

        フランクフルトはソーセージでもおなじみの大都市ですが、マインハッタンとは?

        マイン川沿いに高層ビルが立ち並ぶ光景からマンハッタンならぬ、マインハッタン

        と呼ばれているのだそうです。この料理本は友人のドイツに住むお嬢さんが編

        集されたもので、日本にいるお母さんに送ってきたうちの一冊をいただきました。

           

        そのうちのいくつかを作ってみました。これは煮豚ばら肉(ライターヒェン)、ポ

        テトサラダ添え。塩をすり込みローリエや杜松の実と一緒に48時間寝かせ、

        後は茹でるだけ。中華風の煮豚よりあっさりした仕上がりで、とてもおいしい。

           

        これはフランクフルト風ポテトサラダ。ベーコンや卵がたくさん入っていますが、

        お酢をかなり入れるので、さわやかな口当たりです。

        

        ドイツ料理と聞いて想像する通り、食材はソーセージ、肉、チーズ、ジャガイモ、

        豆類などで、飲み物はビールはもちろんですが、リンゴ酒がとても好まれてい

        るようです。リンゴ酒を使ったデザートやお菓子がたくさん載っているので、こ

        れもまた作ってみようと思っています。

        おもしろいのは、量の多さというか、おおざっぱさ。豚肉2キロとかジャガイモ

        1.5キロとかいう分量が平気で出てきます。フランクフルトはゲーテの生誕地

        です。ゲーテのお母さんもおばあちゃんもとても料理上手だったようです。この

        本にも「ゲーテのおばあちゃん風ハンバーグ」というのが載っています。ゲーテ

        のおばあちゃんの18世紀前半のレシピが、今もたくさん残っているそうです。

        

        この本にはフランクフルト市長ペトラ・ロートさんの前書きが写真入りでついて

        います。メルケル首相もそうですが、彼女もいかにもドイツ女性らしい、意志の

        強そうな顔立ちの中年女性です。
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熱中症予防グッズを買ったけれど

2011-07-08 05:18:27 | ペット
              

             暑ければ暑いほど、色鮮やかになる気がするノウゼンカズラです。

             漢字では凌霄花と書きますが、凌霄とは「空をしのぐ」という意味。

             昔の人もこの花に、夏空を突き抜けるような勢いのよさを感じたの

             でしょうか。花言葉は「名声」、「栄誉」。

             

             花は元気ですが、毛皮を着た動物たちは、この暑さにぐったりです。

                  

             なっちゃんもご多分にもれずで、ドタッと寝そべっておなかをフ

             クフクさせています。扇風機にあたりながら外を眺めるのが定

             番のポーズになってきました。

             

             そのなっちゃんのために、ひんやりシートを買ってきたのですが、

             まったく座ろうとしません。怖いものでも見るように、遠巻きにし

             て、近づけると逃げていきます。無理やり乗せると、焼けたトタ

             ンに乗せたみたいに飛んで逃げます。冷たくて気持ちがいいの

             にどうしてでしょう?彼女の気持ちが分かりません。他の犬もそ

             うなのでしょうか?私が犬だったら、喜んで座ると思うのですが。  
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スイミー

2011-07-06 17:10:41 | 
スイミー―ちいさなかしこいさかなのはなし
谷川 俊太郎
好学社


        レオ・レオニの「スイミー」は小学校の教科書にもう何十年も前から載っているし、

        私のような年配だと子どもの教科書を覗いて知っているので、たいていの日本人

        が知っている絵本ということになるかもしれません。赤い小魚たちで大きな魚を作

        り、その目になって、みんなをひっぱっていく、ちいさな、かしこい黒い魚スイミー。

        海中の様子や生き物たちが、水彩の押し絵のような技法で、とてもかわいらしく

        表現されています。たくさんあるレオニの絵本は、それぞれに表現の仕方が違い、

        お話も教訓的であったりもしますが、この「スイミー」の翻訳者谷川俊太郎が言う

        ように、どの絵本にも根底にポエジーがあって、地球上の様々な美しい世界に

        案内されているような気持ちになり、思わず引き込まれてしまいます。      

            

        これはスイミーとは違って水色の魚です。目はスイミーのように黒いですが。

        宮城まり子さんのねむの木学園の子どもたちが描いた絵のカレンダーを毎

        年買っていますが、これはその7月の絵です。みんな同じ方向を向いて、団

        結している感じもいいですね。涼やかな絵です。

            

        こう暑いと、涼しい景色を見たいと思いますが、山間部の生まれなのでどうしても

        森や高原に心が動き、海はどうもねと思います。じりじりと熱い太陽が照りつける

        砂浜を考えただけでも汗が出てくるようです。そんな私に理想的な場所がありま

        した。千葉房総千倉の海岸美術館です。海岸美術館という名前なのに涼しい山

        の中にあります。浅井慎平さんの素敵な海の絵や上の写真のような海のオブジ

        ェがあって、庭も青々としていて、真夏の暑い盛りに行ったのですが、心も体も気

        持ち良く、涼しくなりました。
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ひまわり

2011-07-05 10:21:12 | 季節の花々
          

         「そんなに見つめないで、、、」で始まる「ひまわり」という歌を以前コーラ

         スで歌ったことがあります。ほんとに黒い目でじっと見つめられているよう

         ですね。花言葉は「私の眼はあなただけを見つめる」ですって。

          

         ゴッホのひまわりの絵は美術の教科書なんかにも載っていておなじみですが、

         ひまわりの本数の違う絵が何枚かあるようです。でもどれも、生命感にあふれ

         動き回リ、燃えているように見えます。1980年代末に安田海上火災が60億円

         近く!で購入したひまわりは、贋作の疑惑があるようです。人間の欲がからむ

         と途端に生ぐさい話になりますね。ゴッホには一銭も入らなかったというのに。

          

         そのひまわり、放射性セシウムを吸収するというので今脚光を浴びています。

         チェルノブイリにも植えられているとか。そう言えば、往年の素晴らしいイタリ

         ア映画「ひまわり」で、戦争から帰らぬ夫を捜しにロシアに行ったソフィア・ロ

         ーレンが車窓から外を眺めていると、突然バーン!と広大なひまわり畑が広

         がって、あのヘンリー・マンシーニの憂愁をたたえた名曲「ひまわり」が流れ

         る感動的なシーンがありました。ひまわりはロシアの国花だそうです。
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お食い初め

2011-07-04 05:17:32 | 行事
              

         息子に子どもが生まれて3か月余り。2700グラムほどで生まれた孫娘は、順

         調に成長しています。母子手帳の身長・体重の成長曲線のちょうど真ん中

         を行く模範的な成長ぶりです。昔から100日ほどでお食い初めをするようです

         が、なぜでしょうね?まだ離乳食も始まっていないのに。鯛や赤飯や蛤のお

         吸い物を、お箸の先につけて、唇に触れるだけです。歯固めとか言って、神

         社の小石までもらって来て並べました。健やかな成長を願う楽しい行事です。

          

         外では、ハイビスカスの花が真っ盛り。一昔前はハワイでフラを踊る娘さん

         が髪に挿しているような南国の花のイメージでしたが、今はもうそこいら中に

         あります。夏を感じる花です。

          

          

          

               お食い初めハイビスカスの花笑う      micchi
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種蒔きもせず

2011-07-03 14:04:32 | 季節の花々
花の詩画集 種蒔きもせず
星野 富弘
偕成社

       星野富弘さんの花の詩画集「種蒔きもせず」の表紙は、こぶしの花の下で、彼の

       愛犬がどてっと寝そべっている図です。いかにも呑気そうに、気持ちよさそうに。

         空の鳥を見なさい。種蒔きもせず、刈り入れもせず、倉に納めることもしま
         せん。けれども、あなたがたの天の父がこれを養っていてくださるのです。
         あなたがたは、鳥よりも、もっとすぐれたものではありませんか。」マタイ(26節)              

           

       うちのなっちゃんも、部屋の中で一番涼しい場所で、星野さんの犬と同じ

       ポーズです。実はその横で私もほとんど同じポーズ。種蒔きもせず、刈り

       入れもせず、暑さをこれ幸いと、惰眠をむさぼり、、、。

           

       星野さんのこの花の詩画集に、「父の夢」という詩があり、大きなピンクの

       ダリアが描かれています。ダリアの咲く庭に立っている父の夢をみるという。

       私の父はもう十年も前に亡くなりました。生前の生きかたの違いでしょうか、

       父が夢に花と一緒に現れることはありませんが、木材にかかわっていた人

       なので、緑濃い杉や檜の針葉樹を見ると父を思い出します。それもだんだ

       んと稀になってきましたが。
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日向が丘の少女

2011-07-03 08:34:24 | 
             

          「若い頃に読んだ本を思い出して、もう一度読みたいと思ったけれど、廃版

          のようで手に入らなかったのを、娘が手を尽くして探し出してくれて、読むこ

          とができてうれしい」というような内容の投書が新聞に載っていました。それ

          はジョージ・エリオットだかの小説でしたが、歳のせいか、私もそういう本が

          数冊あります。「日向が丘の少女」もそのうちの一冊です。中高年なら、

          なつかしく思い出される方も多いでしょう。世界少年少女文学全集の北欧

          編に入っていました。その次に入っているアレックス・キヴィという人の「七

          人兄弟」というのもいいお話です。乱暴者の七人兄弟の話ですが、素朴で

          ユーモラスで、温かく誠実で。二編とも、近頃読まれないのは残念です。

          

          ノルウェーの農村地帯、日向が丘農場にはシュンネーベという女の子、そこ

          から見下ろす樅の木農場にはトールベルンという男の子がいました。幼友

          達だった二人はいつしか互いに惹かれあっていきます。シュンネーべは美し

          い少女に成長し、次々求婚者が現れます。一方トールベルンは周りの悪い影

          響もあって、大変な乱暴者になリ、人々に敬遠されます。そんなトールベルン

          を信仰心厚くまっとうに暮らすシュンネーベの両親が、娘の相手として許すは

          ずもなく、二人はつらい日々を過ごすのですが、シュンネーベのトールベルン

          への思いは片時も変わらず、それが通じてやがてトールベルンは誠実な若者

          へ生まれ変わり、二人は結ばれます。

          

          淡々とした筆致の中に深い愛情の感じられる美しい小説です。作者のビョル

          ンソンは、同時代、同国人のイプセンとよく比較されます。イプセンの作品

          には社会性、政治性があり、外に向かっていますが、ビョルンソンはつつま

          しい市井の人々の暮らしを淡々と描き、派手なメッセージ性とは無縁です。

          ノルウェーの人々がイプセンよりビョルンソンを好むのが分かります。読ん

          だ後、温かい優しい気持ちになる読み物ってそうたくさんはありませんが、

          この「日向が丘の少女」はそのような本の一冊です。

                   
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