★ベルの徒然なるままに★

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映画『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』

2012年05月18日 | 映画鑑賞記
少し前に見た映画の感想を。

1960年代前半の、黒人差別問題を描いた作品です。

少し重いテーマで、見終わった後も、心がズ~ンとなってしまったのですが。色々と考えさせられ、また、心温まるシーンもあり、素敵な映画でした。



■映画『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』予告編



1960年代前半の米国南部の町ジャクソン。

ヒロインのスキーターは、大学を卒業して実家に戻ってきます。
けれども、生まれ故郷の保守的な町で、旧態依然の人種差別が公然と行われている事にショックを受けるのでした。

地元の友人たちは皆結婚して家事も子育ても黒人メイドに任せっきり。
けれども、そんな暮らしに何の疑いも抱いていない。
それどころか、メイドに感謝することすらなく、イジメに近い差別を平然と行っている・・・。

進歩的で作家志望のスキーターは、メイドたちの虐げられた実態を伝える本を書こうと決意。
早速、メイド達に取材をします。
しかし、報復を恐れる彼女たちは、なかなか口を開いてくれず・・・。




色々と考えさせられた、深い映画でした。

時代は1960年代前半。
もう充分に、近代化してる時代だろうに、アメリカ南部の田舎町では、まだ、黒人の差別が当たり前だったのです。

映画を見てると、なんとも、やるせない気分になりました。

お金持ちの白人女性は、とても若くして結婚し、子供を産んでも、自分で一切育てない。家事もしないのです。
黒人のメイドが、家事も子育ても、すべてやってくれるのですから。

じゃあ、家事も子育てもしない時間を、主婦である彼女達は、どうやって過ごしているのか・・・?

オシャレをしたり、仲間内で集まってパーティを開いたり、慈善活動をしたり~~という日々。

慈善活動する前に、自分で自分の家のコトするとか、差別を無くしたら?・・・と、今の時代を生きる私達の感覚で見ると、腹立たしい想いをどうしても抱いてしまいます。

でも、それが、歴史の中で、「当たり前」とされていた・・・そんな時代だったのでしょうね。
彼女達にとって、それは、常識だったのでしょう・・・。
彼女達に「悪い」という感覚はないのですもの。
なんだかなぁ~と、納得いかないけど。そういう時代。

白人の若い主婦達は、黒人メイドを、召使いか奴隷のようにしか思っていないのですよね・・・。

そんな風に、周りの女性達が、競うように若くで結婚、出産している中、ヒロインのスキーターは、全く違う生き方を選んでいました。

大学に進学し、卒業し、ジャーナリストを志して、新聞社に就職。

こんな彼女の生き方は、封建的な田舎町では、とても奇異に見えるようでした。

進歩的な考え方を持つスキーターは、自分たちが暮らす田舎町に色濃く残る、黒人差別について、激しい疑問を抱くのです。

「自分たち白人は、幼い頃から黒人のメイドに育てて貰っているのに。なぜ、そんな彼女達に、家のトイレすら使わせてあげないのか・・・?」

そして、このテーマで本を書くことに決め、黒人メイド達にインタビューをしていく訳ですね。

とはいえ、黒人メイド達の口は固いです。
自分たちの身の安全や、職を失うのが怖いですから。

けれども、段々と、行き過ぎた差別に耐えられなくなり、彼女達自らの口で、白人女性達の赤裸々な実体が語られるようになります。

それは、聞けば聞くほど、腹立たしい内容ばかり。

なぜ、彼女達・・・いえ、黒人全体が、そんなに虐げられなくてはならなかったのか・・・と。
涙が出そうでした。

ただ白人と言うだけで、たまたま、金持ちの家に生まれたというだけで、そんなにも偉いのか?と。

でも。
凄く難しい時代だったのかもしれないなぁ~とも思うのです。

決して、そんな白人女性達の肩を持つわけではないのですが。

彼女達は彼女達なりに、そうせざるを得ない、鬱屈感や閉塞感・・・というのがあったのも、また事実なのでしょう。

ヒロインのスキーターの様に、自由に生きることは、とても異端なこと。

とにかく、若くで結婚して、家庭を持たなくてはいけないというプレッシャーやストレスがあった訳ですね。
ある意味、彼女達も、自由に生き方を選べない身だったのです。

自分たちだけの狭い社会で、自分たちのステータスを自慢したり、褒め合ったりしなければ、やりきれなかった・・・。
メイド差別にしても、「この人達を私達が使用しているんだ」と差別し、優越感に浸ることでしか、自分を保てなかったのではないかなぁと。

そう思うと、彼女達もまた、女性差別という時代の被害者なのかもしれませんが・・・。
だからと言って、人種差別を許せる訳ではありませんね。

あの差別は、差別と言うより、イジメっぽいものを感じましたし。

だって、彼女達の言動って、色々矛盾してるもん。

自分たちの食事の支度や食器の管理、また、子育てなど、大切なことを全部、メイド達に任せている癖に、その一方で、病気がどうこう、衛生がどうこうって言って、メイドに自分たちのトイレは使わせない。

それって、おかしくない?

本心から、病気だの衛生面だのっていうのが気になるなら、食事のことだって、子育てだって、彼女達に任せられないハズ。

だから、ちょっと、イジメ的な差別だったのではないかなぁ~と。




そんな白人女性達の中で、ヒロインのスキーターとは、また別の意味で変わった女性が居ましたね。

典型的な、美人だけどお馬鹿さん~~というキャラとして描かれてた女性(名前忘れちゃったけど)。

彼女は、とても素敵な女性だと思いました。

奔放で、メイドを差別することなく、友人として接していて。
そんな彼女には、幸せになって欲しいなぁ。旦那さんもいい人だったし。

でも、他の白人女性達からは、仲間はずれにされてたのですよね・・・。
でも、それって、彼女が婦人会のリーダー・ヒリーの元カレと結婚したからでしょ?
ヒリーは彼女に、彼氏を盗られたと逆恨みして、イジメをしてたけど。
その彼は、ヒリーのそんな意地悪な性格を見抜いて別れたんだと思うよ!(笑)
ヒリー、ざまぁwww←コラっ



・・・と脱線したけど。

とにかく、とことん虐げられるメイド達や、母親でありながら、メイドが帰った後は翌朝メイドが来るまで10時間近く赤ちゃんのおしめも替えない白人女性達の姿には、鬱屈した気分になってしまいます。

そして、そんな差別は、なかなか改善されなかったのでしょうね。

実際、ヒロインが、問題の本を出したときも、地元の白人達からは、全く支持されない所か、とても糾弾されていました。

「自分の納得いく本を書け」

と、スキーターを応援していた恋人も、彼女を責め、別れを告げます。

「君は、この街の平和を乱した」

と言って。

封建的な田舎町。
人間も考え方が、古く凝り固まっていて、変化を望まないのでしょうね。

そして。

スキーターの取材に全面協力してた、メイドのエイブリーン。
彼女の行く末も、映画としては、とても後味が悪いです。

でも、ハッピーエンドじゃない分、それが時代という物であり、現実だったんだろうなぁと、重々しく受け止めることが出来ました。

長年培った風習・思想を変えると言うことは、決して、簡単なことではないのだなあと考えさせられました。

重いけど、色々と考えさせられる作品です。
そして、スキーターと、黒人メイド達の心の交流に、心温まる想いをしました。