★ベルの徒然なるままに★

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映画『小さいおうち』

2014年02月27日 | 映画鑑賞記
一昨日に続き、今日も映画の感想を♪

色々書きたい感想が溜まっているので、出来れば、映画の感想アップ月間にしたいです・・・って、月間って、もう明日で2月終わるじゃんwwwとツッコミ。

という訳で。

今日は、先月に見た『小さいおうち』の感想を♪



■『小さいおうち』予告編





大学生・健史は、「おばあちゃん」と呼んで親しくしていた大叔母・タキの遺品の整理中、彼女が残した大学ノートを発見。

それは、自分の勧めで、大叔母が書き残していた、彼女の自叙伝でした。


昭和11年。
若き日のタキは、東京にある、赤い三角屋根のモダンな屋敷の住人・平井家の女中として働くことになります。

会社勤めの旦那様に、若くて美しい奥様、そして可愛い坊ちゃん。
彼らに仕えることに喜びを感じながら、平穏な日々を送っているタキでしたが。

ある日、奥様が、旦那様の若い部下と恋愛関係にあることを知ってしまいます。

そして、小さなお家の中にも、少しずつ黒雲が広がっていき、それと同時に時代もまた、戦況の悪化により、暗い時代へと突入していくのでした。。。






なんというか、見てる時もですが、見終わった後からもジワジワと心に残る作品でした。

古き時代へのノスタルジーと、そのノスタルジーを壊してしていく戦争・・・という感じで、色々と切ない物語でした。


この物語は、現在編と昭和初期が舞台の過去(回想)編が、替わりばんこに登場するという手法で描かれています。

それが、現代と違う昭和初期と言う独特な世界観を際立たせていて、とても興味深かったです。



タキの回想は、最初は、とてもキラキラしてて、幸せそうで楽しそうな生活なのですよね。

田舎から女中の仕事をするために上京。

雪深い田舎の世界しか知らなかったタキの目には、その時代の東京は、とても煌びやかでオシャレな世界に映ったことでしょう。

そして、彼女がお仕えするお家は、まるで外国のお伽噺に出て来そうな、赤い屋根の可愛らしいお家。

そこに住む、高給取りな会社勤めの旦那様に、若くて美しくて洗練された女性である奥様。そして可愛い坊ちゃん。

彼女にとって、その赤い屋根の小さなお家は、そこに住む住人も含めて、みんなみんな、憧れの象徴で・・・そんな家族にお仕えすることが、彼女にとっても嬉しいことだったのだと思います。


映画を見ていても、その時代の東京はとても活気に満ちていて、元気でした。

今の時代にも存在している有名な、老舗の百貨店やレストランの名前がポンポン出てきて、そこでお買い物やお食事を楽しんでいる様子の奥様達。

まさに、「帝都」という感じで、街も人も輝いてて。
なんだか、見ているこちら側も、ワクワクするような、そんな活気を感じました。


・・・と言うと、現代の世の大学生の健史は、

「その時代は、日本は戦争をしていたわけだし、そんに明るく楽しい時代じなわけないじゃん? おばあちゃん、思い出を美化しすぎだよ~(--;」

なんてツッコむ訳ですが。

いやいや、いやいや、何も知らないんだね、健史クン(^^)b

確かに、「昭和」というと、どうしても戦争を想起してしまいますし、その戦争は苦しくて辛いものだったと、その時代を知らない私達は安易に考えてしまいがちです。

でも。

日本が戦争で苦しくなってきたのは、アメリカと開戦してから~というか、段々と物資不足になり、本土に空襲が起こるようになってからであって。

まだ、昭和の初期の頃は、もちろん、軍靴の響きも近づき、不穏な時代であったのでしょうが、一般庶民はそんなことすら気が付かず、文化などは華やかなりし時代だったのですよね。

それに、今の時代のように、テレビやネットがある訳では無いので、国内に居る人たちは、外国で起こっている戦況を正しく知るすべもないですものね。

新聞などの報道だけを信じて、皆が盛り上がったりしていたのでしょう。

だから、街に活気があり、色んな文化も華々しくて。

ホント、まだ戦争で疲弊していない、元気な日本というか。

私、この時代の独特な熱気、好きですよ。


でもでも、今の時代の健史は、教科書で習うような知識しか持ち合わせておらず。

過去を知らない若い世代と、実際にその時代を体験した世代とのギャップみたいなものが随所随所に表れてていました。



そんなキラキラした時代と、キラキラしたタキの想い出。

とても愛おしく感じました。

このキラキラした幸せが、ずっとずっと続けば良いのになぁと思ってしまうのですが、今の時代の私達から見れば、勿論、そんな幸せや贅沢がいつまでも続くわけないのは分かっているので・・・切ないのです(;;)


で。

日本の戦況が段々苦しくなってきて、暗い時代へと入っていくのと比例するかのように、赤い屋根のお家の家庭にも、黒雲が広がりつつあるのですよね。


旦那様の若い部下・板倉に惹かれていくようになる奥様。
やがて、二人は不倫の関係へ・・・・。

その関係を唯一知っているタキは、心を痛めます。


原作を未読なので分かりませんが、わたし的には、なぜ、何不自由なく優雅な生活を送っている奥様が、不倫に走ったのかな?とちょっと思ってしまいましたが。

でも、お嬢様がそのまま年を取って奥様になったような女性なので、旦那様を始め、身の回りにいる働く男たちとは違った雰囲気を持っていた板倉に惹かれて行ったのかなぁと。

あと、戦況の悪化による不景気などから、旦那様のお仕事も色々と厳しくなってきてましたし。

奥様を構うことなく、仕事仕事の旦那様に対して不満があった、とか、まだまだ女性として扱われたいのに~とか、そういう想いがあったのかもしれないですよね。


本当に、時代が暗くなっていくにつれ、お家の中も不穏になっていって。

最初がとても煌びやかな時代、家族だっただけに、その変化がなんとも切ない。

タキも哀しかったのではないかな?



そして。

予告編にもあった「手紙」の件。

これは、原作ではなにやら違う展開とのことですが、予告編を見た時から、「手紙」に関しては、ある程度予想が付きました。

タキも、板倉のことが好きだったのかな?とも感じたけど。

いやいや、もしかしたら、タキは奥様が好きだったのではないかなぁとも思えました。

両者ともに、好きだったのかも。


きっと、タキは、奥様も、赤い屋根のお家も、板倉も、みんなみんな大好き・・・というか、彼女の憧れの世界で。
その憧れの世界の平穏を守るために必死だったのではないかなぁと思ったなぁ。

その姿がとても健気で。
タキちゃんに共感です(;;)


・・・なんていうんだろう・・・時代とか世代とかいろいろ関係なく。

誰の心の中にも、「自分の大切な場所」、「居心地の良い場所」っていう宝物のようなものがあると思うのです。

そして、皆、それが永遠に続けばよいのに~って思うものの、時に、自分ひとりの力ではどうしようもなく、その大切な場所がなくなってしまう事ってありますよね。

時に時代の流れであったり、時に人為的なものであったり。

でも、どうしても、それを守りたくて守りたくて一生懸命になるけど・・・どうしようもない。


こういう感覚って、今でもあると思うのです。

だから、あの時、必死になっていたタキの気持ちも分かるような気がします・・・。


なので。

最後の最後、タキは故郷に戻り、やがて、赤い屋根のお家は空襲で焼ける・・・そのシーンは、なんとも言えなかったです(;;)


ずっとタキの視点で映画を見ていたので、タキの青春や宝物のような思い出が、全部壊れてしまったように感じられて。。。


そして。

そのキラキラした思い出や後悔を胸に秘めたまま、タキは一人で生き、一人で死んでいったのだなぁ~と(;;)


映画を見終わってからも、胸を締め付けられるような感覚が、ずっと残る・・・そんなお話でした。




そうそう。

それにしても、松たか子さん演じる奥様が、とても艶っぽかったです。

ホント、お嬢様がそのまま奥様になった・・・って感じで。

不倫もなんだけど、なんか、悪のない妖艶さというか。そりゃ、皆、奥様に惹かれるだろうなぁって。

凄く艶っぽいんだけど、でも、中身はお嬢様のままみたいな天真爛漫さがあって。


田舎娘だったタキは、そんな奥様に凄く憧れていたんだろうなぁって思った。


また、タキの見合いのことに親身になってた奥様。

あまりに酷い見合い相手を紹介され、女中部屋で泣いてたタキを優しく抱きしめ、全面的にタキの味方をしてあげる奥様の姿とか、ウルウル来ちゃったです。

奥様と言っても、変に驕ったところもなくて、タキを妹のように思ってて。
雇い主と使用人という関係なんだけど、家族でもあったのかなぁって。心温まります。




可愛らしいお家と、そこに詰まったタキの想い出と秘密。

でも、それは、戦争と共に壊されてしまい、そして、そんなタキもこの世を去り・・・。

寂しいような切ないような気持ちが残りました。