★ベルの徒然なるままに★

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『宝石商リチャード氏の謎鑑定 祝福のペリドット』辻村七子

2017年09月08日 | 小説・漫画・書籍
昨日読み終わりました、集英社オレンジ文庫の辻村七子著『宝石商リチャード氏の謎鑑定 祝福のペリドット』の感想を♪♪



謎多き美貌の宝石商リチャード氏と、彼のジュエリー店でアルバイトをしている大学生・中田正義。
銀座にあるリチャードのお店に訪れるお客さんが持ち込んでくる、宝石に纏わる人間模様と謎。
それらを解決していく物語のシリーズ、今回で5巻目です。

1~3巻では、本当に、その出自が謎だった、美貌の宝石商リチャード。

けれども、3巻の終わりで失踪したリチャードを、正義がイギリスまで追いかけていくことで、ずーっと謎のベールに包まれたままだった、彼の出自や悲しい過去が明らかになりました。
そして、リチャードが抱えていた家柄に纏わる問題も、ほとんど片付き、めでたしめでたし~で終わった4巻だったので、私は、もうあれで完結した・・・と思い込んでいたのですよね。

なので、5巻目が出ると分かった時は、狂喜乱舞だったのです(≧▽≦)!!

イギリスまで行き、より絆を深め合うリチャードと正義の物語も良かったですし、今までずっと気になっていたリチャード氏の過去を知ることが出来たのも良かったので、4巻は好きですが、でもでも、やっぱり、私は、このシリーズ初期の頃の、お客様が持ち込む謎を解き明かす、人間模様の短編の方が好きかも(^m^)
安心して読める・・・というか(^^;;笑
3、4巻は、とても面白かったけど、ハラハラし過ぎて、心臓に悪かったワ。


という訳で。

5巻です。

色々ありましたが、リチャードも無事、日本に戻り。銀座のお店も再開。
正義もまた、普通の日常を取り戻しました。

とはいえ、今度は、正義の側の日常に変化が訪れているのですよね。

大学3年生になり、就職活動がスタート。
これから本格的に就活を始めるとなると、今までのように、土日に宝石店のバイトが出来なくなる。

いずれは、バイトを辞めなくてはいけないことに、心を痛めている正義。

もう、どんだけ、リチャードが好きなの!?って、ツッコミ(^m^)

因みに、表紙はちょっぴりBLっぽいですが、この作品はBLではありません、念のため。
でもでも、とっても、BLっぽい・・・と思ってしまうのは、私の心が腐っているからでしょうか??(笑)

で。

今回は、初期の頃に戻ったみたいな短編です。

でも、初期の頃と違うのは、毎回毎回、お客様が持ち込む謎を解き明かしていく・・というのではなくて。

ある日、正義が体験した不思議な人との出逢いやご縁のお話だったり、シャウルさんが語るリチャードのスリランカ時代のお話だったりと、リチャードの過去に纏わるお話が多めでしたね。
そういう意味では、前巻の物語の続きというか、似たようなテイストだったかな。

初期の頃のような、お客様が持ち込まれた謎について推理するのは、2話目の「サードニクスの横顔」だけだったかな。

でも、1話、1話の物語が独立してて、リチャードと正義の普通の日常風景がそこにあるので、安心して読みましたです。

全部で5つの物語が入っていますが、私は、3話目の「ジルコンの尊厳」、そして、エピローグの「聖夜のアンダリュサイト」が特に好きでした。

「ジルコンの尊厳」は、リチャードがイギリスの家を出奔し、スリランカで適当な生活を送っていた時に出会った、シャウルさんと、その家に住んでいた女の子との物語。

サラリと読みやすく書かれた物語ですが、実は、重いお話です。

たったの16歳でお金のために嫁がされ、そして嫁ぎ先で虐待され、硫酸で焼き殺されかけた女の子のお話。

これまでの巻でも、戦中戦後に苦しい想いをしながら生きて来た女性についての話や、同性愛についての話、はたまた、人種・性別・容姿などの差別についての話など、重いテーマが取り扱われていましたが、中でも、この「ジルコンの尊厳」は、特に重くて、考えさせられました。
タイトルについている通り、人間の尊厳ってなんだろう?って。
私達が、今、当たり前に持っている人としての尊厳を、持つことが出来ないでいる人達もいる・・・。
お金のための若年結婚の問題については、ユニセフのパンフレットでも目にすることが多く、タイムリーな問題でした。

だけれども。
重いテーマを重くなり過ぎずに描き、それでいて、こちらが考えさせられたり、考えるきっかけになったりする・・・という物語で。

このシリーズの特徴でもあるのですが、そこが凄く良かったです。

そしてそして、エピローグの「聖夜のアンダリュサイト」は、心穏やかになる、静かなクリスマス・イヴのお話でした。

日本では、恋人同士で過ごすイベントになっているクリスマス。
街中がはしゃぎ浮かれている時に、銀座のお店でお仕事をしながら過ごしているリチャードと正義。
それは、家族と過ごす落ち着いたクリスマスの姿みたいでもあり、読んでいて、ホッとしました。

っていうか。

BLではないのですが、とっても気になってしまう、リチャードと正義の関係。

もちろん、前巻でリチャードがゲイではなかったことは明らかになっていますし、正義にも、片想中の女の子・谷本さんがいます。
けれども、彼ら二人を取り巻く人々は、皆一様に、二人を恋人同士と勘違いしているようなのですよね。
そして、なぜ、そんな風に周りから勘違いされているのかに、イマイチ気付いていない、鈍感な正義くん(笑)
そしてそして。
なにやら、とっても意味深なリチャードの言動。

人が人を好きになるのに、性別や人種は関係ない・・・というのは、このシリーズでは、よく描かれていたテーマですし。
それを考えると、もしかすると、これまでの出来事を通して、リチャードは正義のことを好きになっているのかもしれないし、正義もまた、自分自身では気付いていないリチャードへの想いがあるのではないかなぁとも思えてきます。
もちろん、そんな恋愛という感情を超えた、もっと強い、信頼関係や絆のようなものがあるのかもしれないですし。

色々、妄想中(//▽//)

でも、そこを詮索するのはナンセンスなことなのかも・・・ですよね。

リチャードと正義が、この先、ずっと強い絆と信頼関係で結ばれていれば、それで良いなぁと私は思いました。(いや、でも、やっぱり、二人の関係をいろいろ邪推してします腐女子です、スミマセン)

バディ物なんだけど・・・でもでも、やっぱり、BLっぽいなぁ(*^^*)


そうそう。

今回の巻で、凄く気になった点が1つ。

これまでの1~4巻では、宝石商らしくキチッとスーツを着こなしているリチャードと、大学生らしくラフな格好をしている正義のイラストが表紙でしたが。

今回は、その逆で。

中途半端にシャツを着ているリチャードに対し、キッチリとスーツを着ている正義。

この変化なんぞ?(//▽//)
っていうか、リチャード、妙に色っぽくないですか??

なので、余計に、BLテイストを感じてしまうのですよね~。

正義がスーツを着ているのは、就活生になったからかな?・・とも考えられるのですが。

リチャードの、この中途半端に肌蹴たシャツの意味とは??

私の想像なんだけど、第3話のスリランカ時代のリチャードのイメージなのかな?
はたまた、これまで、何の欠点も無い完璧人間だった彼の、ちょっぴりダメな面が見えて来た今作なので(と言っても過去の話ですが)、その所為でかなぁとか。

なんていうか、私達から見るリチャードのイメージの変化に合わせてあるのかもしれないな、と思ってみたり。


という訳で。
今後の展開も、とても楽しみです。

早くも次巻が気になって気になって!!

っていうか。就活生になった正義くん。
公務員試験と一般企業を目指しているようですが、でも、彼もまた、リチャードと同じく、宝石に纏わるお仕事に向いていそうなのですよね。
彼が、自分自身では気付いていない、自分の魅力。適正。
そこに、ちゃんと気付けるのか? リチャードが手を差し伸べてあげるのか?
私は、正義にも、宝石に纏わる仕事に就いて欲しいなぁって思うのです(*^^*)

それに、なにより、正義がリチャード大好きだもん(変な意味では無くて、ね)。

だって、バイトを辞めることを心苦しく思っているのは、あのお店が正義の「居場所」だからなのですよね。

自分がバイトを辞めることによって、リチャードに迷惑をかけてしまうから~ということよりも、寧ろ、自分がバイトを辞め、リチャードが新しいバイトを雇い、もう、リチャードやあのお店との関係性が無くなることを何よりも恐れている正義。

でも、考えてみればみるほど、それって、「いつまでもリチャードと一緒に居たい」ってことなんじゃないかなぁ?と思ってしまう、腐女子視点でスミマセン、スミマセン、スミマセン(*><*)

とにかく、次巻が楽しみです!!

今作のラストがクリスマスでしたし。
次巻では、もう大学4年生になっているだろう正義。

願わくば、彼も宝石の道に進み、この先、ずっとずっとリチャードと共に、宝石に纏わる人間模様ミステリを紐解いていってほしい・・・。


あっ。
そういえば、オビについているQRコードから、ショートストーリーが読めるのですよね(^m^)

早速、読まなきゃ、読まなきゃ(*><*)

『宝石商リチャード氏の謎鑑定』、大好きなシリーズです。

今作も、とても面白かったです!!