北海道胆振東部地震で大きな地震被害と共に北海道電力でブラックアウトが発生した。
なぜ全停電が発生したのか調べてみた。
私はコンビナートの化学工場に勤めていた。
コンビナートの工場は保安のために自家用発電とブラックアウトの対策に非常用ディゼル発電機を持っている。私の勤めていた会社は四基の発電設備とボイラーを持っていた。
7割を自家発電でまかない3割を電力会社から買電していた。
40年間勤めたがブラックアウトは回避できた。一番厳しかったのは1991年9月27日の台風19号(リンゴ台風)であった。風速40メートル以上の暴風で雨が降らず海水が飛沫になり70キロ飛散した。送電線、変電所の碍子に塩が付着して短絡で停電が発生した。
辛うじて発電機一基が残りブラックアウトは免れた。一週間して雨が降り碍子が洗えてやっと完全復旧した。家庭も4日停電した。富士山が噴火すると灰で広範囲に大停電すると言われている。
北海道は地震発生時の電力使用量は280万KW 発電量は苫東厚真発電所が道内最大で160万KW発電、残り120万KWを三か所の火力発電所と水力で発電していた。
そこで地震発生、地震の強さは安平で1700ガル、原子力発電所でも600ガルで設計されている。民家は耐えても250ガル、コンビナートの工場も250ガルで停止するところが多い。苫東厚真発電所も1000ガル近い地震が襲ったと思う。阪神大震災は1000ガルでビルも倒壊した。
発電所のボイラーチューブも破損して蒸気漏れで緊急停止したと思われる。タービンの潤滑油配管などが漏れタービンの高温部に浸み込み火災が発生している。蒸気の温度が500℃はあるので潤滑油が漏れて浸み込んだら発火する。ボイラーのチューブの確認は人が入れる温度まで冷えてから点検して補修する。人が入って点検しないと被害はわからない。
苫東真発電所の三台の発電機が緊急停止し160万KWが喪失した。
残りの火力と水力120万KWに北本連絡線の60万KWを加えて180万KWで100万KW不足した。苫東厚真発電所全機停止で数秒後には過負荷による周波数低下ですべての発電所が停止した。残る北本連絡も電源喪失でインバーターが停止し全停電となる。北本連絡線は海底ケーブルで損失とコストダウンのため直流送電である。
全停電を起こした原因は北本連絡線の送電容量が発電所、全機停止に対応していなかった。
青函トンネルが出来たので100万kwは送電できるケーブルを敷設しないと今回のような事故は防げない。。
青函トンネルを利用して30万KWのケーブル敷設の計画があるようだがそれでは全然足りない。電力は瞬時も蓄えが出来ないので事故があったら他の電力会社から融通してもらうしかない。100万KW融通してもらうにも東北電力側の送電線も延々と増設しないといけないので費用がかかりすぎるのか。
工場の場合は電力会社との連絡線が停電したり発電機が停止したら工場の配電を強制的に負荷遮断する。電力会社は発電所停止で地域一括して負荷制限するのは難しいのだろうか(例えば旭川市と北見市.帯広市全域停電)。電力会社は供給義務があるので計画停電しか許されるのであろうか
北海道は地域的に脆弱であった。1979年までは他の電力会社と連係されていなかった。
北本連絡でつながったが送電容量が少なすぎる。発電機一基分で発電所全機は想定してはいない。
東日本大震災でもブラックアウトは発生していない。東京電力は福島第一第二原発の大きな発電所や火力発電所も停止した。発電量は40パーセントまで落ちたが使用量の低下と北海道電力や60ヘルツの電力会社からの融通で周波数が48.5ヘルツまで低下したが立て直した。48ヘルツまで低下したら全発電所停止で東京電力と東北電力が連鎖でブラックアウトになっていた。
北本連絡線はロスとコストダウンで直流送電にしているが脆弱なものだと思った。
直流送電はロスとケーブルの本数やサイズを小さくでるメリットがあるが変換するのにインバーターが両端にいる。インバーターとは直流から交流を作ったり周波数の違う交流を作る装置、今回のように発電機が全機とまると制御電源がなく停止する。
ロスは増えるが交流の送電の方が安定性がある。