minga日記

minga、東京ミュージックシーンで活動する女サックス吹きの日記

Carlos Maltaとの素敵な一日

2014年11月12日 | ライブとミュージシャンたち
カルロスの家と私たちがお世話になっているクリフの家は歩いて3分ほどの距離。朝10時半にカルロスのアパートに彼と落ち合うことになった。

美しいアパートのエントランスから大量の荷物を持ったカルロスが出て来た。彼はなんと、私と同じ歳なのだ。半袖の開襟シャツに半ズボンという出立ちなのに、上品な紳士に見える。スーパースターの風格かw。

プロデューサーの女性がタクシーに乗って迎えに来ていた。どうやら、このタクシーに私とリオも同乗させてくれるらしい。トシキは他のベーシストが観たいので違うコンサートへ行く為に今回はパス。ここから1時間くらいのタクシー旅行。行き先は何度聞いてもよくわからない・・・汗。みんなが「ああ、あそこは山の上。遠いのよね。でも綺麗な眺めよ。」とだけ。

道中、カルロスは終始ご機嫌でいろいろな話をしてくれた。パスコアールのグループに20歳で入った時の話。音楽大学時代はパウロ・モーラの生徒だったが、本来はフルート奏者だった。ウエイン・ショーターの「ネイティブ・ダンサー」を聴いて、ソプラノサックスを吹き始め、初めてパスコアールのセッションにソプラノを持って行ったときにあっという間に5時間ほど経ってしまい「このフルートはふけるのか?」とどんどん面白い楽器を出して来たのでそれを演奏するとパスコアールが「天才だ!」と大喜び。師匠のパウロ・モーラもパスコアールと仲良しだったために、彼はすぐにメンバーになった。それから12年間彼のグループで活躍したが、その間、休みというものは一日もなかったそうだ。毎日、朝から晩まで演奏したり、ツアーに出たり・・・「月給?そんなものはないけれど、彼から与えてもらった様々な音楽の財産はお金に替えられないものだったよ。」


ソプラノたこが一緒だね!と親指を見せあうw。

パスコアールの曲作りのエピソードも興味深かった。「Viajando Pelo Brasil」という曲もほとんど、スタジオに入って即興のように作ってしまったそうな。本当はソプラノでソロを演奏してくれ、って言われたけれど「俺はフルートがいい!」と言いはって、最後にどうしてもソプラノを!と言われて録音したときは「じゃあ、あなたのイミテーションを演奏するよ」と言って、パスコアールのソロをまねた録音をしたのだとか。



盛りだくさんのエピソードを聞いているうちに、あっという間に山の上の教会に到着。リオのはずれの山の上にある「Sá Rua Barão」という街の赤い可愛らしい教会だった。さっそく、ステージで大荷物を開くと出てくる出てくる、いろんな楽器・・・。
















インディアンフルートはとても簡単に音が出た!



フルートの数だけでも10本以上。サックスはソプラノだけだったが、口元にマイクを装着し、ギターリストのようなエフェクターを駆使し、サンプリングをその場でやってのける。リハーサルで私たちが興味を示した楽器を全て演奏してくれた。インディアンフルートを渡され、吹いてごらん。って・・・簡単に音が出るのでびっくり。ソプラノも吹いていいよ、と言われたけれど本番前だし、丁重にお断りした。

2時からスタートのはずが、2時10分前になってもほとんど人がいない。平日の2時だし、お客さんは来るのかな?と人ごとながら心配していたら、2時になったとたん、あれよあれよと人が集まり出した。学校の行事の一貫なのか、中学生くらいの子供達が先生に引率されて来たり、障害を持つ学校からも沢山来始め、あっという間に満席になったところで、どこからか音が・・・。



2本のインディアンフルートを吹きながら横手の入り口から登場したカルロスは真っ白な衣装にいつのまにか着替えて、地下足袋のようなクツを履いていた。1曲目から、演奏しながら会場を練り歩き、子供達の心も鷲掴み。一曲終るごとに違う楽器を取り出して、即興で演奏していくカルロス。時には観客に声を出させたり、リズムをとらせて、それにあわせてまた即興・・・・。わ~、これ、どこかで観た事ある風景。そう、パスコアールだ!!まさしく、パスコアールの自由な演奏スタイルだ。


子供たちも大喜び

車椅子で最初とても不機嫌そうだった女の子が、途中から笑顔になり、音楽が盛り上がって行く中で「ア~、ウー」と一緒に声をあげている姿を目の当たりにしたら「音楽ってなんて素敵なんだろう。」って感動で涙がでてきてしまった・・・。音楽ってやはり人を楽しくさせるもの。エネルギー一杯で、幸せな気持ちにしてくれるもの・・・カルロスの演奏を聴いているとそれを確信させてくれる。世界中みんな一緒だ。

「素晴らしいサックス奏者が日本から来ているので紹介するよ。」と途中で紹介してくれちゃったので、慌てて立ち上がり、みんなに会釈。カルロスが「アリガト~!」とみんなに教える。いつのまにか「アリガト~!」の大合唱に・・・。

あと数日のこっているが、毎日お昼に無料コンサートが開かれていて、そこにも素晴らしいミュージシャンが出演しているそうなので、明日は私たちも行ってみることにする。いやはや、10日間では物足りない。ピシンギーニャ、パウロ・モーラ、パスコアール、カルロス・マルタ、etc....素敵な音楽で溢れているこの国が大好きになってしまった・・・。




プロデューサーのアンドレアと教会の庭で。

帰りのタクシーの中で「金曜に僕のアパートで君たちとのお別れパーティ&セッションをやろう!」とカルロスが提案。なんて嬉しい事だろう!!!さらに、彼のアパートでセルマーの3600番代のバリトンサックスを吹かせてもらったり、私はブッシャーというアルトサックスを吹かせてもらった。彼の部屋はまるで楽器博物館のようだった。ああ、音楽家でよかった・・・本当にカルロスとの出会いは私にとってとても貴重なものになった。ありがとう、カルロス。ありがとう、ブラジル。


とても古いセルマーのバリトンサックス




カルロスの自宅にて。