出雲市立光中学校で実践をしてきました
中国五県造形教育研究大会で授業公開を行う出雲市立光中学校に第1回目の鑑賞の授業に5月9日(金)午後に行ってきました。
初めて出会う生徒なので、自己紹介を兼ねた鑑賞の授業にしようと考えました。選んだ作品は損保ジャパン東郷青児記念美術館に収蔵されているゴッホの「ひまわり」です。館長の原口氏に依頼して本物の作品画像をデータで送ってもらいました。また、ご厚意でポスターも送っていただきました。おかげで学習後に教室掲示用に使わせていただくことができました。
館長様、窓口になっていただきました学芸員の吉井様、ありがとうございました。
さて、光中学校は現在は出雲市ですが旧平田市の日本海側、河下漁港に面した地にあります。近くには猪目遺跡や弁慶が一夜で釣鐘を運んだという謂れのある古刹、鰐淵寺、パワースポットとして一躍有名になった唐釜神社もあり、古代出雲にゆかりの深い地域です。
また、光中学校は今年度で廃校、来年度からは平田中学校に統合されることが決まっている少子化の進む地域でもあります。私が授業公開を行う対象学年は3年生で、光中学校最後の卒業生になります。17名1学級です。美術の授業は非常勤講師の先生が担当されているという状況です。私の勤務校の出雲市立大社中学校からは車で30~40分の距離です。給食を急いでかき込み、14:05の5時間目の授業に間に合うように車を走らせました。
光中学校の場所は知っていましたが、学校に足を踏み入れるのは初めてです。入り口を通過してしまい、後戻りしようとしたところ、わき道を発見して無事に校地にたどり着きました。授業はプロジェクターやスクリーンを使用するので美術室ではなく視聴覚室で行うことにしていたので、清掃中の校舎内を3階に向かいました。出会う生徒たちは皆、明るく挨拶をしてくれました。全校でも60人弱の生徒たちにとって校舎内の清掃は持ち分が多くて大変だろうと思いましたが、どの生徒も熱心に掃除に取り組んでいました。視聴覚室では先生方が清掃の合間を縫って機材の準備を行ってくださいました。持ち込みのパソコンとプロジェクターの相性も良く、すぐに画像が投影できました。準備をしている教卓を生徒が上拭き雑巾できれいに拭いてくれたのもとても清々しくて気持ちがよかったです。この教室を清掃していたのが3年生だったようで、掃除が終わるころには他の3年生も教室にやってきました。
さて、いよいよ授業の始まりです。教室前面に移動式スクリーンがあるので、机を後ろに下げて椅子だけを前に移動させ、スクリーンを囲むように座ってもらいました。始まりのあいさつの号令が学級委員からかけられて、授業が始まりました。非常勤の美術科の角先生、教頭先生、学年主任の先生が立ち会ってくださいました。
初めは、自己紹介からです。自己紹介用のプリントを配布し、私の自己紹介をしました。そして、そのプリントに生徒自身の自己紹介も記入してもらうように頼みました。自己紹介プリントの記入は課題にして、月曜に担任の先生に提出し、市内便で私の勤務校に届くようにお願いしました。
続いて、鑑賞の授業公開を10月31日に皆さんの学級で行うことを告げ、それまでに約1か月に1回、鑑賞の授業は私が担当することを話しました。みんな顔をあげてまっすぐにこちらを向いて話を聞いてくれていました。
さて、いよいよ本題です。私の実践する「対話型鑑賞」は①まず、静かにだまってじっくりと作品をみること②みながらいろいろ考えること③考えたことを話すときには挙手し、指名されたら話すこと④話をしている人の話をよく聴くこと⑤隣の人とひそひそ話をしないことがルールであることを伝えました。
スクリーンに「ひまわり」を映しました。みんなに隅から隅までしっかりとみる。いろいろ考えながらみるように促しました。
ひとまずみ終えたときに「花はいくつありますか?」と訊きました。みんな「えっ?」と驚いて、数え始める様子がみえました。「よくみるように言ったけど、何本あるかまでは数えていなかったようですね。」と返しました。「それで、何本ありましたか?」と再び訊ねると、数人の人が挙手してくれました。「15本です。」と回答してくれたので、他の人にも「どうですか?15本でしたか?」と訊くと大半の人が挙手して同意してくれました。でも、2人の女子が挙手しなかったので「手をあげなかったよね。どうして?」と訊ねると「あの、16本あるかと思いました。」と答えてくれました。このように、自分の意見をきちんと挙手して話してくれるので、とても授業が進めやすいし、この様子なら「対話型鑑賞」もスムーズに実践できそうだと手ごたえを感じました。話しが横道にそれましたが、そこで、絵の周りに花が何本あるのかカウントした図を示し、共通理解を図りました。重なって見づらいところもあるので15本か16本か確定しにくいところもあるけれどと、16本の生徒の意見も配慮しながら、今回は「15本」で話を進めたいと確認しました。そして、「では、このひまわり15本の中で、自分だな?と思う花はどれですか?1本選んでください。」と投げかけました。みんな一瞬驚いたような反応をしましたが、また、真剣に絵をみ始めました。様子を見ながら、少し時間を与え、「どうですか?決まりましたか?」と訊ね挙手を促しました。全員の手が挙がったので、椅子を持って机のあるところに移動するよう指示しました。そして、ワークシートを配布し、何番を選んだか記入するよう伝えました。先走って選んだ理由をすぐに書き始めた生徒がたくさんいたので、制止し、「何番か決まったら、次は、どうしてそれを選んだのか理由を書いてもらいますが、最後に全員、みんなの前で、それを発表してもらおうと思っています。今から、私が手本を示すので、聞いてください。」と、話しました。「で、私がこれが自分だと思う花ですが、どれだと思いますか?」と訊いたところ、3人くらいの生徒が挙手してくれたので当てました。一人は「1番」と言ってくれたので「どうしてそう思いましたか?」と訊ねました。「大きいし、元気がよさそうで、後ろからみんなをみている感じが、それっぽい。」と言ってくれました。「他には?」と促すと、別の生徒が「14番」と言ったので「どうして?」と訊くと「元気がよさそうだし、ちゃんとこっちを向いて、みんなを見守っている感じがするから。」と答えてくれました。実は、この問答にすでに、仕掛けがあることを気付いている方も多いと思います。「どこからそう思うのか?」を考えるように自然に促しているのです。ここは私の作戦です。私が自分の選んだ花をすぐに伝えてしまっては、どうしてなのかを考えさせるチャンスを失わせます。鑑賞者に自然に考える場面を作り出すことがナビゲーターに課せられた役目(使命)ではないでしょうか?
で、「14番」と言ってくれた男子には「すごい。その通りです。すでに見抜かれてますね。私は14番が自分かな?って思っています。どうしてか?小さい時から背が高いので後ろから前の様子を覗き込んでよく見ていたから、14番の花は、そんな感じがするから、だから私だと思います。」と話し、皆にも、こんな風に話すように告げました。そして、ワークシートに選んだ理由を書きながら、スピーチのイメージトレーニングもするように伝えました。さすがに3年生なのですらすらと筆が進みます。5分の時間を与えましたが、ほぼ全員が書き終わり、スピーチのイメージも出来上がったようなので、出席番号順に発表してもらいました。スクリーンの脇に出て話すことにしました。発表者の話をよく聴くこと、後で感想を書いてもらうので、ワークシートの裏にメモを取ってもよいことを告げて、始まりました。
発表の結果2,3,4,7,8,15番を選んだ生徒はおらず、1番1人、5番4人、6番4人、9番2人、10番2人、13番1人、14番2人という結果で、5番と6番を選んだ生徒が多かったです。でも、同じ花を選んでも同じような理由はひとつもなく、同じ花を見ていても一人一人の受け止めが違っていることに気付いた生徒がたくさんいました。
参観していた教頭先生や美術の先生、学年主任の先生にも選んだ花とその理由を話してもらって、和気藹々とした雰囲気の中で授業は終末を迎えました。
最後は授業全体を振り返るワークシートに自己評価と授業の感想を記入してもらいました。時間内には終わらないので自己紹介同様に課題とし、月曜に担任の先生に提出するように指示し、終わりの挨拶をして第1回目の鑑賞の授業は終了しました。
最後に生徒の感想を紹介します。順不同
男子A)みんなが選んでいる中で「そんな感じがするのかな~?」と思うところがあって、みんな見かたが違うんだなと思いました。ひまわりでも一つ一つ個性があるんだなと思いました。
女子B)自分と同じ6番でも感じ方が真逆と言える所もあって、人の心や、感性って個性的でおもしろいと思いました。
自分の花が決めれることで、自分の性格や行動をちゃんと理解しているんだなと思いました。
女子C)同じ花でも全然みんな見え方が違っていておもしろかったです。聞いた感じだと、自信がある所より「~が苦手だから」とかが多くて、みんなまだ自分に自信が無いのかなと思いました。1人1人の個性があっておもしろかったです。
男子D)みんな自分の性格や普段の行動などを花にたとえて考えていて、同じ花でも人それぞれで理由違ったので自分の意見だけにとらわれずに人の意見も聞いてみることもおもしろいなと感じた。花だけでなくくきなど細かいところも観察していて1つの絵でも人それぞれで見る視点が違うことも分かった。
女子E)たしかに!と思ったこともあったし、今まで知らなかった一面も見ることができました。人それぞれ見方が違って同じ花でも理由はそれぞれでおもしろいなと思いました。注目する所が違ったり、くきとか見てたりして、私には思いつかなかったので、すごいと思いました。
男子F)同じ花をみても1人1人違う見方でとらえていて、とてもおもしろかったし、見方には、自分の性格、身長、考え方、いつも集団のどの辺にいるかなどたくさんの見方があるんだなあーと思いました。普段のみんなの考え方も分かって楽しかったです。
男子G)同じヒマワリの花でも、一人一人意見が違うところなどもあって、とてもおもしろいなあーと思いました。
男子H)全体的に身長を気にしている。性格が表れる。マイナス表現とプラス表現の差が激しい。性格的には皆恥ずかしがりや。
女子I)私はまず、先生も言われましたが、同じ番号でも見方が違うというのに興味を持ちました。例えば6番。ある人は恥ずかしがりやあや、また、ある人は、明るいなど、いろんな意見があって、すてきだと思います。あと、皆、下を向いていたりとか、枯れそうなものは、あまり選ばないことが分かりました。
男子J)同じ花を選んでいた人が多かったけど、人によって見方や受けとり方が違っておもしろかった。
女子K)先生も言われたのですが、同じ花を選んでいても、その見方は人によって全然違うんだなあと思いました。それから、その人が自分のことをそんなふうに思っていたんだあという新たな発見もみつかり、一人一人のことをもっと知ることができたと思います。
女子L)発表をきいて、同じ花とかはいっぱいあったけど、同じ花でも一人一人、「その人っぽいな。」と思えてきたので、とてもおもしろかったです。
女子M)同じ花でもみんなそれぞれ違った考えがあって、発表を聞いていて楽しかったし、たしかにそうだなあと思いました。
女子N)このひまわりの花の自分えらびで思った事は、これが世にいう「十人十色」、「みんなちがってみんないい」という言葉の意味なんだな、皆本当全部ちがいまくってるなとすごく思いました。人それぞれだから、自分の思った事じゃなく、現実の自分の身長の事で選んだり、自分の事を否定している感じの人もいる、確かに十人十色だなと思います。
男子O)みんな自分にあった花をえらんでいるし自分のことをしっかり言えていてすごいと思った。
この鑑賞ワークシートの裏面にはたくさんのメモ書きが残されていました。級友の発表
をきちんとメモしながら聞いていたことが垣間見えてとてもうれしかったです。
以上が1回目の実践報告です。ゴッホの「ひまわり」の花選びでの生徒対象の実践は初
めてでしたが、生徒数が17人なので授業時間内に全員の発表が終わるのでコンパクトでよ
かったと手応えを感じました。
次回は6月、10月の本番までに月1回の実践としても4回です。鑑賞作品をどう積み
上げていくのかが今後の課題ですが、生徒ははきはきと発表するので、今後がとても楽し
みになりました。皆さん、中国五県造形教育研究大会にぜひお越しくださって、光中の生
徒の発言に耳を傾けてください。
中国五県造形教育研究大会で授業公開を行う出雲市立光中学校に第1回目の鑑賞の授業に5月9日(金)午後に行ってきました。
初めて出会う生徒なので、自己紹介を兼ねた鑑賞の授業にしようと考えました。選んだ作品は損保ジャパン東郷青児記念美術館に収蔵されているゴッホの「ひまわり」です。館長の原口氏に依頼して本物の作品画像をデータで送ってもらいました。また、ご厚意でポスターも送っていただきました。おかげで学習後に教室掲示用に使わせていただくことができました。
館長様、窓口になっていただきました学芸員の吉井様、ありがとうございました。
さて、光中学校は現在は出雲市ですが旧平田市の日本海側、河下漁港に面した地にあります。近くには猪目遺跡や弁慶が一夜で釣鐘を運んだという謂れのある古刹、鰐淵寺、パワースポットとして一躍有名になった唐釜神社もあり、古代出雲にゆかりの深い地域です。
また、光中学校は今年度で廃校、来年度からは平田中学校に統合されることが決まっている少子化の進む地域でもあります。私が授業公開を行う対象学年は3年生で、光中学校最後の卒業生になります。17名1学級です。美術の授業は非常勤講師の先生が担当されているという状況です。私の勤務校の出雲市立大社中学校からは車で30~40分の距離です。給食を急いでかき込み、14:05の5時間目の授業に間に合うように車を走らせました。
光中学校の場所は知っていましたが、学校に足を踏み入れるのは初めてです。入り口を通過してしまい、後戻りしようとしたところ、わき道を発見して無事に校地にたどり着きました。授業はプロジェクターやスクリーンを使用するので美術室ではなく視聴覚室で行うことにしていたので、清掃中の校舎内を3階に向かいました。出会う生徒たちは皆、明るく挨拶をしてくれました。全校でも60人弱の生徒たちにとって校舎内の清掃は持ち分が多くて大変だろうと思いましたが、どの生徒も熱心に掃除に取り組んでいました。視聴覚室では先生方が清掃の合間を縫って機材の準備を行ってくださいました。持ち込みのパソコンとプロジェクターの相性も良く、すぐに画像が投影できました。準備をしている教卓を生徒が上拭き雑巾できれいに拭いてくれたのもとても清々しくて気持ちがよかったです。この教室を清掃していたのが3年生だったようで、掃除が終わるころには他の3年生も教室にやってきました。
さて、いよいよ授業の始まりです。教室前面に移動式スクリーンがあるので、机を後ろに下げて椅子だけを前に移動させ、スクリーンを囲むように座ってもらいました。始まりのあいさつの号令が学級委員からかけられて、授業が始まりました。非常勤の美術科の角先生、教頭先生、学年主任の先生が立ち会ってくださいました。
初めは、自己紹介からです。自己紹介用のプリントを配布し、私の自己紹介をしました。そして、そのプリントに生徒自身の自己紹介も記入してもらうように頼みました。自己紹介プリントの記入は課題にして、月曜に担任の先生に提出し、市内便で私の勤務校に届くようにお願いしました。
続いて、鑑賞の授業公開を10月31日に皆さんの学級で行うことを告げ、それまでに約1か月に1回、鑑賞の授業は私が担当することを話しました。みんな顔をあげてまっすぐにこちらを向いて話を聞いてくれていました。
さて、いよいよ本題です。私の実践する「対話型鑑賞」は①まず、静かにだまってじっくりと作品をみること②みながらいろいろ考えること③考えたことを話すときには挙手し、指名されたら話すこと④話をしている人の話をよく聴くこと⑤隣の人とひそひそ話をしないことがルールであることを伝えました。
スクリーンに「ひまわり」を映しました。みんなに隅から隅までしっかりとみる。いろいろ考えながらみるように促しました。
ひとまずみ終えたときに「花はいくつありますか?」と訊きました。みんな「えっ?」と驚いて、数え始める様子がみえました。「よくみるように言ったけど、何本あるかまでは数えていなかったようですね。」と返しました。「それで、何本ありましたか?」と再び訊ねると、数人の人が挙手してくれました。「15本です。」と回答してくれたので、他の人にも「どうですか?15本でしたか?」と訊くと大半の人が挙手して同意してくれました。でも、2人の女子が挙手しなかったので「手をあげなかったよね。どうして?」と訊ねると「あの、16本あるかと思いました。」と答えてくれました。このように、自分の意見をきちんと挙手して話してくれるので、とても授業が進めやすいし、この様子なら「対話型鑑賞」もスムーズに実践できそうだと手ごたえを感じました。話しが横道にそれましたが、そこで、絵の周りに花が何本あるのかカウントした図を示し、共通理解を図りました。重なって見づらいところもあるので15本か16本か確定しにくいところもあるけれどと、16本の生徒の意見も配慮しながら、今回は「15本」で話を進めたいと確認しました。そして、「では、このひまわり15本の中で、自分だな?と思う花はどれですか?1本選んでください。」と投げかけました。みんな一瞬驚いたような反応をしましたが、また、真剣に絵をみ始めました。様子を見ながら、少し時間を与え、「どうですか?決まりましたか?」と訊ね挙手を促しました。全員の手が挙がったので、椅子を持って机のあるところに移動するよう指示しました。そして、ワークシートを配布し、何番を選んだか記入するよう伝えました。先走って選んだ理由をすぐに書き始めた生徒がたくさんいたので、制止し、「何番か決まったら、次は、どうしてそれを選んだのか理由を書いてもらいますが、最後に全員、みんなの前で、それを発表してもらおうと思っています。今から、私が手本を示すので、聞いてください。」と、話しました。「で、私がこれが自分だと思う花ですが、どれだと思いますか?」と訊いたところ、3人くらいの生徒が挙手してくれたので当てました。一人は「1番」と言ってくれたので「どうしてそう思いましたか?」と訊ねました。「大きいし、元気がよさそうで、後ろからみんなをみている感じが、それっぽい。」と言ってくれました。「他には?」と促すと、別の生徒が「14番」と言ったので「どうして?」と訊くと「元気がよさそうだし、ちゃんとこっちを向いて、みんなを見守っている感じがするから。」と答えてくれました。実は、この問答にすでに、仕掛けがあることを気付いている方も多いと思います。「どこからそう思うのか?」を考えるように自然に促しているのです。ここは私の作戦です。私が自分の選んだ花をすぐに伝えてしまっては、どうしてなのかを考えさせるチャンスを失わせます。鑑賞者に自然に考える場面を作り出すことがナビゲーターに課せられた役目(使命)ではないでしょうか?
で、「14番」と言ってくれた男子には「すごい。その通りです。すでに見抜かれてますね。私は14番が自分かな?って思っています。どうしてか?小さい時から背が高いので後ろから前の様子を覗き込んでよく見ていたから、14番の花は、そんな感じがするから、だから私だと思います。」と話し、皆にも、こんな風に話すように告げました。そして、ワークシートに選んだ理由を書きながら、スピーチのイメージトレーニングもするように伝えました。さすがに3年生なのですらすらと筆が進みます。5分の時間を与えましたが、ほぼ全員が書き終わり、スピーチのイメージも出来上がったようなので、出席番号順に発表してもらいました。スクリーンの脇に出て話すことにしました。発表者の話をよく聴くこと、後で感想を書いてもらうので、ワークシートの裏にメモを取ってもよいことを告げて、始まりました。
発表の結果2,3,4,7,8,15番を選んだ生徒はおらず、1番1人、5番4人、6番4人、9番2人、10番2人、13番1人、14番2人という結果で、5番と6番を選んだ生徒が多かったです。でも、同じ花を選んでも同じような理由はひとつもなく、同じ花を見ていても一人一人の受け止めが違っていることに気付いた生徒がたくさんいました。
参観していた教頭先生や美術の先生、学年主任の先生にも選んだ花とその理由を話してもらって、和気藹々とした雰囲気の中で授業は終末を迎えました。
最後は授業全体を振り返るワークシートに自己評価と授業の感想を記入してもらいました。時間内には終わらないので自己紹介同様に課題とし、月曜に担任の先生に提出するように指示し、終わりの挨拶をして第1回目の鑑賞の授業は終了しました。
最後に生徒の感想を紹介します。順不同
男子A)みんなが選んでいる中で「そんな感じがするのかな~?」と思うところがあって、みんな見かたが違うんだなと思いました。ひまわりでも一つ一つ個性があるんだなと思いました。
女子B)自分と同じ6番でも感じ方が真逆と言える所もあって、人の心や、感性って個性的でおもしろいと思いました。
自分の花が決めれることで、自分の性格や行動をちゃんと理解しているんだなと思いました。
女子C)同じ花でも全然みんな見え方が違っていておもしろかったです。聞いた感じだと、自信がある所より「~が苦手だから」とかが多くて、みんなまだ自分に自信が無いのかなと思いました。1人1人の個性があっておもしろかったです。
男子D)みんな自分の性格や普段の行動などを花にたとえて考えていて、同じ花でも人それぞれで理由違ったので自分の意見だけにとらわれずに人の意見も聞いてみることもおもしろいなと感じた。花だけでなくくきなど細かいところも観察していて1つの絵でも人それぞれで見る視点が違うことも分かった。
女子E)たしかに!と思ったこともあったし、今まで知らなかった一面も見ることができました。人それぞれ見方が違って同じ花でも理由はそれぞれでおもしろいなと思いました。注目する所が違ったり、くきとか見てたりして、私には思いつかなかったので、すごいと思いました。
男子F)同じ花をみても1人1人違う見方でとらえていて、とてもおもしろかったし、見方には、自分の性格、身長、考え方、いつも集団のどの辺にいるかなどたくさんの見方があるんだなあーと思いました。普段のみんなの考え方も分かって楽しかったです。
男子G)同じヒマワリの花でも、一人一人意見が違うところなどもあって、とてもおもしろいなあーと思いました。
男子H)全体的に身長を気にしている。性格が表れる。マイナス表現とプラス表現の差が激しい。性格的には皆恥ずかしがりや。
女子I)私はまず、先生も言われましたが、同じ番号でも見方が違うというのに興味を持ちました。例えば6番。ある人は恥ずかしがりやあや、また、ある人は、明るいなど、いろんな意見があって、すてきだと思います。あと、皆、下を向いていたりとか、枯れそうなものは、あまり選ばないことが分かりました。
男子J)同じ花を選んでいた人が多かったけど、人によって見方や受けとり方が違っておもしろかった。
女子K)先生も言われたのですが、同じ花を選んでいても、その見方は人によって全然違うんだなあと思いました。それから、その人が自分のことをそんなふうに思っていたんだあという新たな発見もみつかり、一人一人のことをもっと知ることができたと思います。
女子L)発表をきいて、同じ花とかはいっぱいあったけど、同じ花でも一人一人、「その人っぽいな。」と思えてきたので、とてもおもしろかったです。
女子M)同じ花でもみんなそれぞれ違った考えがあって、発表を聞いていて楽しかったし、たしかにそうだなあと思いました。
女子N)このひまわりの花の自分えらびで思った事は、これが世にいう「十人十色」、「みんなちがってみんないい」という言葉の意味なんだな、皆本当全部ちがいまくってるなとすごく思いました。人それぞれだから、自分の思った事じゃなく、現実の自分の身長の事で選んだり、自分の事を否定している感じの人もいる、確かに十人十色だなと思います。
男子O)みんな自分にあった花をえらんでいるし自分のことをしっかり言えていてすごいと思った。
この鑑賞ワークシートの裏面にはたくさんのメモ書きが残されていました。級友の発表
をきちんとメモしながら聞いていたことが垣間見えてとてもうれしかったです。
以上が1回目の実践報告です。ゴッホの「ひまわり」の花選びでの生徒対象の実践は初
めてでしたが、生徒数が17人なので授業時間内に全員の発表が終わるのでコンパクトでよ
かったと手応えを感じました。
次回は6月、10月の本番までに月1回の実践としても4回です。鑑賞作品をどう積み
上げていくのかが今後の課題ですが、生徒ははきはきと発表するので、今後がとても楽し
みになりました。皆さん、中国五県造形教育研究大会にぜひお越しくださって、光中の生
徒の発言に耳を傾けてください。