豊島GW体験記
みるみる会員の金谷さんのGW豊島でのアートな体験記です。
今を生きている私。一歩ずつ前へふみ出そう。」
2011.4.30 Naomi kanetani @teshima
こんにちは、みるみるの金谷です。随分前の話になってしまい申し訳ありませんが、私のゴールデンウィークの小さなアートの旅におつきあいください。
皆さんは、自分の心臓音を聴いたことがありますか?検診などで聴いたことがあるかもしれませんね。私の心臓音は、アート作品の一部となっています。それは、香川県の豊島(てしま)にある小さな美術館「心臓音のアーカイブ」にあります。作者はクリスチャン・ボルタンスキー、フランスの作家です。
〈クリスチャン・ボルタンスキーは人々が生きた証として、心臓音を収集するプロジェクトを2008年から展開しています。
「心臓音のアーカイブ」は、これまで氏が集めた世界中の人々の心臓音を恒久的に保存し、それらの心臓音を聴くことができる小さな美術館です。
施設内にはインスタレーションが展示されている「ハートルーム」、希望者の心臓音を採録する「レコーディングルーム」、世界中から集められた心臓音をパソコンで検索して聴くことができる「リスニングルーム」の3つの部屋で構成されています。採録された心臓音は自身のメッセージとともにアーカイブ化され、作品の一部となります。〉
(ベネッセ アートサイト直島 ホームページより)
冒頭のメッセージは3年前の私からのものです。3年前にも私は豊島を訪れ、そして自分の心臓音を録音・登録しました。東日本大震災から約1か月半のことでした。今回、豊島を訪れた理由の一つが、「心臓音のアーカイブ」で自分の心臓音を聴くことでした。今回、「リスニングルーム」で検索すると、3年前の自分がメッセージを残していました。そのことをすっかり忘れていた私は、思いがけないプレゼントを過去からもらい、3年前の自分にちょっと思いを馳せました。
さて、「リスニングルーム」で聴いた私の心臓音は、ボンゴを叩くように心地よいリズムを刻み、今にも踊り出したくなるようなものでした。3年前のあの時、自分が生きていた証が気持ちよく耳から入ってきました。タイムマシンに乗って、過去の自分に会いに行ったような気持ちでした。
なんとその後、美術館の方のはからいで、自分の心臓音を「ハートルーム」で聴くことができました。大音量で聴こえる私の心臓音に合わせて暗闇の中、一つだけある電球が明滅します。その音は「リスニングルーム」で聴いた時よりも力強く、音が空から降ってくるようでした。懐かしさや、うれしさや、そして少し悲しい感じ、といったものたちが、胸の奥から浮かんできました。
今まで「ハートルーム」で、国内外の様々な方の心臓音を聴いてきました。この中には、すでに亡くなっている方の音もあるかもしれません。そしていつか、私が泉下の客となってからも、ここで私の心臓音を見ず知らずな方が耳にするかもしれない。そんなことを思いながら、美術館の外へ出ると目の前に、穏やかな海と空がありました。「また、来ますね」そうつぶやいて、自転車(もちろん電動!)を豊島美術館へと走らせました。
豊島美術館へ行く前に少し寄り道をして、島キッチンで行われている「島のお誕生会」をのぞいてみました。料理研究家の堀田裕介さんによる、豊島のフードスケープのお料理をいただいたり、5月の誕生日の方に拍手したりと、少しの時間でしたが、楽しくあたたかい時間を過ごすことができました。島のみなさん、観光で訪れている方、そして会を盛り上げる
ボランティアスタッフ「こえび隊」のみなさんの笑顔をみていると、アートが人をひきつけ、人をつなぎ、地域を元気にしているのだなぁと思いました。
この日は5月3日、この明後日の5日に、私は「こえび隊」の一員としてこの島キッチンで働かせてもらうのですが、緊張で笑顔がひきつっていたり、お客様を店長の指示とは違うテーブルに案内してしまったり、器を落として割ってしまったり、数え上げればきりがないほど滅茶苦茶でした。お客様にお料理を出しながらメニューや食材を説明するのですが、本当に自分に余裕がなくて、「魚のフリットです」というのが精いっぱいでした。お料理をお出しした後は、そそくさと逃げるように、その場から離れていきました。でも、店長と一緒に料理を運んだ時、店長はていねいに一つずつ食材やソースまで説明されました。その姿を見て自分のお客様への対応は、「なんて雑なんだろう」と恥ずかしくてたまらなかったです。日頃から、そしてもちろん対話型鑑賞でも、人と人とのコミュニケーションを大事にしているつもりなのに、まだまだ身についていないのだなぁとへこみました。こんな私ですが、ベテランこえびさんやスタッフの方が「大丈夫?」と声をかけてくださったり、私がもたついているところを、さっとカバーしてくださったり、ホントに頭があがりませんでした。「ありがたい」の一言に尽きます。迷惑をかけたり、山ほどお皿やトレイを拭いてふらふらになったりしたのだけれども、終わってみると「また、やりたい」と思っている自分がいました。それはまかないの魚の煮付けがおいしかっただけではなく、人とのかかわりが楽しかったし、今度はもっとお客様に気持ちよく過ごしていただきたいという思いがあるからだと思います。ある意味、散々な「島キッチン『こえび』デビュー」でしたが、またチャレンジします。7月の島のお誕生会はいつかしら(金谷は7月生まれ)、夏休みにも「こえび活動」ができるといいなぁと思っている今日この頃です。
豊島美術館への寄り道のはずが、ずい分紙幅をとりました。率直にいうと、豊島美術館はたいへんに気持ちの良いところです。受付をすませ、海からのさわやかな風を受けながら小道を歩きます。美術館はすぐそこに見えるのですが、美術館入口への道は少し遠回りをするように木立の中に続いています。美術館の中では、ゆったりと時間と音と風が流れていきます。この日(5月3日)は、とても天気の良い日でした。以前訪れたときも、快晴でした。ふと、「雨の日や雪の日はどうなんだろう」と思い、あとで島の方に聞くと、「雨も雪もいいよ」と。こんな、天候とのコラボレーションも楽しめる、豊島美術館に行ってみませんか?
その際、自転車はもちろん電動がお勧めです。
豊島美術館の後は気持ちよくサイクリングして、「いちご屋」にて、いちごたっぷりのクレープを食べ、フェリーの時間を気にしながら電動自転車を返し、レンタル自転車屋のおじさんに「横尾の美術館は、どうだった?」「のんびりしてたら行けんかった!また来るけぇ!」と言い、急いでフェリーのチケットを買い、乗船の列に並びました。豊島横尾館はレンタル自転車屋のおじさんのお勧めだったのです。次回、訪れる時にはぜひ行ってみたいです。
今回の豊島の旅では、「心臓音のアーカイブ」、「豊島美術館」、そして「島キッチン」でのこえび活動が目的でした。でも、豊島には豊島横尾館をはじめ、トビアス・レーベルガーのビックリするような内装のカフェもあるし、マイク+ダグ・スターンのビッグバンブーも行ってみたい(高いところはこわいけど)、そして豊島問題についても学び「豊島こころの資料館」にも行くことができたらと思っています。
島根県に住む私が、瀬戸内の島々に興味をもつきっかけとなったのが、2010年の瀬戸内国際芸術祭です。アートが私と、瀬戸内の島々や高松をつなぎました。そこから、少し足をのばして丸亀市猪熊弦一郎美術館へも行くことができました(春日さん、ありがとう!)。
アートが人と人をつなぎ、人と地域をつなぐ、そして人の内面を豊かにしていく。アートには、こんな力があるんだよ!ということを実感しながら、子どもたちやなかまと一緒に学びを深めていきたいと思っています。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございます!
さあ、みなさんも、アートな旅へ出かけてみませんか?
以上が彼女のアートな体験記でした。
今月末から今年度のみるみるの会の活動が始まります。浜田市世界こども美術館での「はまだの美術」展に協力しての対話型鑑賞の実践が皮切りとなります。初回の5月31日14:00~担当は春日です。詳細ははまびのHPでチェックしてみてください。
みるみる会員の金谷さんのGW豊島でのアートな体験記です。
今を生きている私。一歩ずつ前へふみ出そう。」
2011.4.30 Naomi kanetani @teshima
こんにちは、みるみるの金谷です。随分前の話になってしまい申し訳ありませんが、私のゴールデンウィークの小さなアートの旅におつきあいください。
皆さんは、自分の心臓音を聴いたことがありますか?検診などで聴いたことがあるかもしれませんね。私の心臓音は、アート作品の一部となっています。それは、香川県の豊島(てしま)にある小さな美術館「心臓音のアーカイブ」にあります。作者はクリスチャン・ボルタンスキー、フランスの作家です。
〈クリスチャン・ボルタンスキーは人々が生きた証として、心臓音を収集するプロジェクトを2008年から展開しています。
「心臓音のアーカイブ」は、これまで氏が集めた世界中の人々の心臓音を恒久的に保存し、それらの心臓音を聴くことができる小さな美術館です。
施設内にはインスタレーションが展示されている「ハートルーム」、希望者の心臓音を採録する「レコーディングルーム」、世界中から集められた心臓音をパソコンで検索して聴くことができる「リスニングルーム」の3つの部屋で構成されています。採録された心臓音は自身のメッセージとともにアーカイブ化され、作品の一部となります。〉
(ベネッセ アートサイト直島 ホームページより)
冒頭のメッセージは3年前の私からのものです。3年前にも私は豊島を訪れ、そして自分の心臓音を録音・登録しました。東日本大震災から約1か月半のことでした。今回、豊島を訪れた理由の一つが、「心臓音のアーカイブ」で自分の心臓音を聴くことでした。今回、「リスニングルーム」で検索すると、3年前の自分がメッセージを残していました。そのことをすっかり忘れていた私は、思いがけないプレゼントを過去からもらい、3年前の自分にちょっと思いを馳せました。
さて、「リスニングルーム」で聴いた私の心臓音は、ボンゴを叩くように心地よいリズムを刻み、今にも踊り出したくなるようなものでした。3年前のあの時、自分が生きていた証が気持ちよく耳から入ってきました。タイムマシンに乗って、過去の自分に会いに行ったような気持ちでした。
なんとその後、美術館の方のはからいで、自分の心臓音を「ハートルーム」で聴くことができました。大音量で聴こえる私の心臓音に合わせて暗闇の中、一つだけある電球が明滅します。その音は「リスニングルーム」で聴いた時よりも力強く、音が空から降ってくるようでした。懐かしさや、うれしさや、そして少し悲しい感じ、といったものたちが、胸の奥から浮かんできました。
今まで「ハートルーム」で、国内外の様々な方の心臓音を聴いてきました。この中には、すでに亡くなっている方の音もあるかもしれません。そしていつか、私が泉下の客となってからも、ここで私の心臓音を見ず知らずな方が耳にするかもしれない。そんなことを思いながら、美術館の外へ出ると目の前に、穏やかな海と空がありました。「また、来ますね」そうつぶやいて、自転車(もちろん電動!)を豊島美術館へと走らせました。
豊島美術館へ行く前に少し寄り道をして、島キッチンで行われている「島のお誕生会」をのぞいてみました。料理研究家の堀田裕介さんによる、豊島のフードスケープのお料理をいただいたり、5月の誕生日の方に拍手したりと、少しの時間でしたが、楽しくあたたかい時間を過ごすことができました。島のみなさん、観光で訪れている方、そして会を盛り上げる
ボランティアスタッフ「こえび隊」のみなさんの笑顔をみていると、アートが人をひきつけ、人をつなぎ、地域を元気にしているのだなぁと思いました。
この日は5月3日、この明後日の5日に、私は「こえび隊」の一員としてこの島キッチンで働かせてもらうのですが、緊張で笑顔がひきつっていたり、お客様を店長の指示とは違うテーブルに案内してしまったり、器を落として割ってしまったり、数え上げればきりがないほど滅茶苦茶でした。お客様にお料理を出しながらメニューや食材を説明するのですが、本当に自分に余裕がなくて、「魚のフリットです」というのが精いっぱいでした。お料理をお出しした後は、そそくさと逃げるように、その場から離れていきました。でも、店長と一緒に料理を運んだ時、店長はていねいに一つずつ食材やソースまで説明されました。その姿を見て自分のお客様への対応は、「なんて雑なんだろう」と恥ずかしくてたまらなかったです。日頃から、そしてもちろん対話型鑑賞でも、人と人とのコミュニケーションを大事にしているつもりなのに、まだまだ身についていないのだなぁとへこみました。こんな私ですが、ベテランこえびさんやスタッフの方が「大丈夫?」と声をかけてくださったり、私がもたついているところを、さっとカバーしてくださったり、ホントに頭があがりませんでした。「ありがたい」の一言に尽きます。迷惑をかけたり、山ほどお皿やトレイを拭いてふらふらになったりしたのだけれども、終わってみると「また、やりたい」と思っている自分がいました。それはまかないの魚の煮付けがおいしかっただけではなく、人とのかかわりが楽しかったし、今度はもっとお客様に気持ちよく過ごしていただきたいという思いがあるからだと思います。ある意味、散々な「島キッチン『こえび』デビュー」でしたが、またチャレンジします。7月の島のお誕生会はいつかしら(金谷は7月生まれ)、夏休みにも「こえび活動」ができるといいなぁと思っている今日この頃です。
豊島美術館への寄り道のはずが、ずい分紙幅をとりました。率直にいうと、豊島美術館はたいへんに気持ちの良いところです。受付をすませ、海からのさわやかな風を受けながら小道を歩きます。美術館はすぐそこに見えるのですが、美術館入口への道は少し遠回りをするように木立の中に続いています。美術館の中では、ゆったりと時間と音と風が流れていきます。この日(5月3日)は、とても天気の良い日でした。以前訪れたときも、快晴でした。ふと、「雨の日や雪の日はどうなんだろう」と思い、あとで島の方に聞くと、「雨も雪もいいよ」と。こんな、天候とのコラボレーションも楽しめる、豊島美術館に行ってみませんか?
その際、自転車はもちろん電動がお勧めです。
豊島美術館の後は気持ちよくサイクリングして、「いちご屋」にて、いちごたっぷりのクレープを食べ、フェリーの時間を気にしながら電動自転車を返し、レンタル自転車屋のおじさんに「横尾の美術館は、どうだった?」「のんびりしてたら行けんかった!また来るけぇ!」と言い、急いでフェリーのチケットを買い、乗船の列に並びました。豊島横尾館はレンタル自転車屋のおじさんのお勧めだったのです。次回、訪れる時にはぜひ行ってみたいです。
今回の豊島の旅では、「心臓音のアーカイブ」、「豊島美術館」、そして「島キッチン」でのこえび活動が目的でした。でも、豊島には豊島横尾館をはじめ、トビアス・レーベルガーのビックリするような内装のカフェもあるし、マイク+ダグ・スターンのビッグバンブーも行ってみたい(高いところはこわいけど)、そして豊島問題についても学び「豊島こころの資料館」にも行くことができたらと思っています。
島根県に住む私が、瀬戸内の島々に興味をもつきっかけとなったのが、2010年の瀬戸内国際芸術祭です。アートが私と、瀬戸内の島々や高松をつなぎました。そこから、少し足をのばして丸亀市猪熊弦一郎美術館へも行くことができました(春日さん、ありがとう!)。
アートが人と人をつなぎ、人と地域をつなぐ、そして人の内面を豊かにしていく。アートには、こんな力があるんだよ!ということを実感しながら、子どもたちやなかまと一緒に学びを深めていきたいと思っています。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございます!
さあ、みなさんも、アートな旅へ出かけてみませんか?
以上が彼女のアートな体験記でした。
今月末から今年度のみるみるの会の活動が始まります。浜田市世界こども美術館での「はまだの美術」展に協力しての対話型鑑賞の実践が皮切りとなります。初回の5月31日14:00~担当は春日です。詳細ははまびのHPでチェックしてみてください。