ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

みるみる会員、房野さんの授業実践レポートです!!

2015-05-24 09:04:32 | 対話型鑑賞


みるみる会員の房野さんが校内授業研を益田市内の小中学校の先生にも拡大して公開されました。校外からの参加者はみるみる会員の松田さんと、もう1名の2名の参加の様でした。
松田さんからの感想も聞きたいですね。
では、レポートの紹介です。

美術の授業と色覚特性
                              
先日、本校の中学1年生の美術で「色彩のひみつ」という題材で校内研究授業をしました。

「ひみつ」と銘打ったのは、単に興味関心を高めるためで、内容はいつもの色彩の要素など、デザインの基本です。今回は1回目なので、生活の中に生かされている色彩の効果をダイジェストで紹介し、今後の制作や自分の生活に取り入れようという意識を高めるための授業です。「色相環」を利用しながら「暖色・寒色」「補色」「衣・食・住」に関する色彩についてなど、スライドで視覚資料を見せながら、クイズ形式で進めました。
「どっちがあたたかく感じる?」「重いのはどっち?」「おいしそうなのはどれ?」など、色だけを変化させた同じ画像をみて、生徒に挙手をしてもらいました。トリビア的な内容に生徒は関心しながらスクリーンに釘付けです。特に補色残像を体験させたときには、「お~」「すごい!」とのざわめきが。

この授業で私が心がけていること…。それは「色覚特性のある生徒もこの中にいるかもしれない」ということです。大昔は「色盲」ひと昔前は「色弱」今は「色覚特性」と言います。様々な色を生徒に見せても、果たしてみんなが同じように見えているかどうかはわかりません。大きな特性を持たない人でさえ、同じ「赤」の色面を見ても同じ色相、明度、彩度を感じているとは限らないし、言葉でそれを確かめることもできません。それを10年前、他教科の先生に指摘されて以来、ず~っと心に引っかかっています。

たとえば、新緑の中に紅葉したモミジがある写真と、モミジが緑のままの写真・・・「この二つを比べて印象的なのはどっち?」との質問に、色覚特性のある生徒は戸惑うはずです。赤緑特性のある人にはほとんど違いを感じないからです。以前、「色覚特性のある人にはこう見える」という画像を見たとき、「同じものを見ても、人によってはこんなにも違って見えるものなのか!?」と驚きました。以来、デザインで色彩に関する授業をする際は、このことを心にとめるようにしました。

国が「学校で親の許可なしに生徒の色覚特性の検査をしないように」と決めて10年。学校では以前のような色覚検査はなくなりました。けれどその弊害も出ているようです。大学生がハンバーガー店のバイトで「レタスの傷んだ所をちぎるように」と言われて見分けがつかず、初めて自分に色覚特性があることを知る。希望した職業に特性があるために就けないことが分かった…など。
検査がないので学校ではどの生徒に色覚特性があるかわかりません。もしかしたら、本人や保護者も気づかないでいるかもしれないのです。そんなとき、美術の色彩の授業で、自分だけが人と違う色が見えていると初めて知ることになったら。「こう見えるはずです。」「こっちがきれいですよね。」という言葉はどんなに心を傷つけるでしょうか。それだけは避けたいと思うのです。

私は緑と赤が混在する画像を見せながら、「この補色の関係は互いを引き立てあって美しいですね。でも、そんなに色の違いを感じない人もいるかもしれません。色の感じ方は個人差があって、人と同じ見え方をするとは限りません。視力にも人によって違いがあるように、それはその人の個性でもあります。でも、もし、気になる人がいたら、後で私のところへ来てね。」と伝えました。
実際、それで色覚特性がわかった例もあります。養護の先生がこの授業を参観して、たまたま聞こえた生徒のつぶやきから気づいてくれました。

生徒には色をはじめ、感じ方には個性があり、決まりなんてないのだ、というメッセージを美術の授業で伝えたい。色彩をいかに生活の中で楽しめるか、自分なりの感性を磨くことの大切さを伝えたいと思っています。

生徒の感想には「色のひみつがいろいろわかった。」「補色は残像が起きたり、組み合わせると迫力が出たり、おもしろいと思った。」「夏は寒色のTシャツを選びたいと思った。」「おいしそうな配色でお弁当を作りたい」などがありました。偶然、その日はテニス部がユニフォームを新調するために配色を相談したそうですが、この授業を受けた生徒が「補色で行こう!」といったそうな…。さっそく学んだことを生かしてくれて、うれしいです。

ちなみに、色覚についてネットを調べていたら、こんな記事を見つけました!色覚特性を補正して、本来の色に見せるサングラスがあるそうです。この動画が、とても感動的です。興味のある方はチェックしてみてください。
http://matome.naver.jp/odai/2143150812720528501

この実践は、本当に示唆深いものがありますね。色覚特性については、検査を行わないようになってから、私も美術の時間に「ん?」と思う生徒に出会っても、そのことについてどのように対応するべきか悩むところです。「こうするべき」という正解は出ないのではないかと思います。手探りの日々が続きそうです。
房野さん、提案性の高い授業を公開くださいましてありがとうございました。
コメント
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