小学校・中学校の連携授業で、対話型鑑賞をしました。
私、房野は中学校の美術科教諭ですが、同じ校区の小学校との連携事業の一つとして、鑑賞の出前授業を計3回しました。初めて対話型鑑賞をするという生徒が対象でしたので、様々な学齢で実践経験のある春日さんの助言を参考に、徐々に積み上げ、深めていけるような構成にしてみました。
1回目:房野による対話型鑑賞:ゴッホ「ひまわり」を題材に「あなたはどのひまわり?」
これは、春日さんがされていた実践を参考にやってみました。(詳細は以前のブログを見てね!)
今回授業をさせていただいた6年生36名は、自分の意見を発表することに抵抗がある児童が多いと聞いていたので、始めは4人グループで図版を見ながら自分だと思うひまわりについて、ワークシートに記入してから選んだ理由を発表し合いました。小グループだと、苦手意識のある子も話しやすい雰囲気で気軽に発表ができたようです。ほとんどの児童が「自分の意見が言えた」と感じ「みんなそれぞれ自分に合ったひまわりを選んでいて、なるほどと思ったり、意外な面も知ることができたりして楽しかった。」という感想が多くみられ、手ごたえ、あり!でした。
2回目:ゴッホ「椅子」
房野がナビゲーターをし、一つの作品を見ながらのスタンダードな対話型鑑賞。
電子黒板に映した作品を見ながら、挙手をして発表。(今回はモチーフが少ないので、色がきれいな電子黒板を使いました。)途切れることなく挙手と発表がありましたが、口をつぐむ子も。けれど、ワークシートにはなかなか鋭い意見もあって、子どもたちが「よく見て」「考えている」ことはわかりました。あとは、「自分の感じたことをみんなでシェアできる」「そこからさらに考えを深める」というスタイルを定着させることが課題です。これは、一朝一夕にはできることではないですが、子どもたちの「楽しい」「もっとやりたい」という気持ちは伝わってきました。きっと、続けることで力は伸びていくことを確信しました!
3回目:草光信成「4人の子ら」
これまで房野の授業を参観してくださった小学校の先生のうち、お一人がナビゲーター、もうお一人がT2として児童の意見を板書にまとめました。房野はT3として、対話型鑑賞のルールの確認と、前回の「椅子」のワークシートに書かれていた内容について「根拠をもって発見したことを書いている」児童のワークシートを紹介。今回はさらに、「根拠を示しつつ、そこからさらにどう考えたか」について発表したり、ワークシートに書いたりできるように促しました。
ナビをされた先生の感想にもあるように、子どもたちの感想には、鑑賞の楽しさを知った喜びや、今まで意見を言ったり、書いたりすることがほとんどなかった子どもに回を重ねて変容が見られたことが分かり、出前授業をした甲斐があった!と私自身もうれしいです。また、このブログに情報提供を快諾してくださった校長先生、感想を寄稿してくださった小学校の先生にも感謝します。ありがとうございました。
小学校で、「対話型鑑賞をしたいけど、どうすればいいのかな?」と迷われている方がいらしたら、ぜひ!チャレンジしてみてください。3回できるなら、今回の実践は取り組みやすいと思います!詳しい情報提供も喜んでいたしますよ~!
3回目の授業実践をされた小学校の先生の感想
〇6年生36名の子どもを対象に「4人の子ら」をT3(中学校教諭1名、小学校教諭2名)で対話型鑑賞を行いました。私の授業までに、中学校教諭による授業を受けて、スモールステップで対話型鑑賞に慣れ、鑑賞を楽しむことを知った子どもたちでした。
私の授業では、時間配分がうまくできず、子どもたちの発想を共有し合う時間を持てなかったのがとても残念です。ワークシートに記入された子どもたちの感想は、今までの鑑賞より深まったものがある一方で、私のうまくいかなかったファシリテート(授業進行)のため、そうでないものもありました。
対話型鑑賞を通して、「自分の考えをもてる。自分の考えの根拠も示すことができる。」ように、子どもたちは変容した姿を見せてくれました。みんなの意見を聴くことの楽しさ。自分の意見を伝える楽しさも同時に体験できたと思います。私も、子どもたちの予想もしなかった発言を聴き、改めて子どもたちの発想の豊かさを感じました。また私自身、この授業を通して、子どもたちの多様な価値観を知ることができましたし、子どもたちも楽しかった、またやりたいという感想を書いてくれたので、やってよかったな、と思いました。
ワークシートに書かれたコメントは、本当に内容が豊かだったので、授業中にみんなで共有できなかったこと、自分の進行がうまくできなかったことが、本当に残念でした。
今回、授業の直前に、それまでの授業で記入していたワークシートに中学校教諭からのコメントつきで返却しました。どういう視点で鑑賞したらいいのか、そのコメントを参考にするよう事前の言葉かけもしました。また、授業中は、子どもの発言を内容ごと色分けしながら、T2が板書をすることもやりました。授業の終わりに振り返りをするときに、その板書を参考にする子どももいたことがワークシートからも伺えました。特に、何を書いたらいいのか悩む子どもにとっては、どんな意見が出たかを思い出すことができ、それについて自分の考えを書くことができていました。
今後の私の課題は、時間配分、発問(子どもの発言をつなぐ)など、ファシリテーターとしての技量を磨くことだと思いました。また、子どもたちと一緒に鑑賞を楽しみ、子どもたちの価値観が広がったり、深まったりするような作品を自分自身が見つけるべく、自分もたくさんの作品を美術館等へ観に行ってみたいと思います。
授業後の感想より。
・自分の意見は発表できなかったけど、みんなの意見を聞いてなるほどと思うことがたくさんありました。
・もっと自分の意見を言えるようになりたいです。
・中学校に入って、〇〇先生と勉強するのが楽しみです。
・来年も中学校で頑張りたいです。
・その絵が島根の人が描いた絵と聞いて、驚きました。次は、もっと島根の人の絵を見てみたいです。
・1枚の絵からたくさんわかることがあったので、すごいと思いました。また、このような鑑賞会をやりたいです。
・今日のこの鑑賞会をやって、はじめはよく分からなかったけど、自分の意見を言えるようになったし、人の意見を聞いてよく絵を見て分かったことや、知らなかったこともあって、すごくおもしろかったです。
・一人では何も思いつかなかったけど、みんなで考えるといろいろな意見が出てびっくりしました。もしこんな絵を見る時があったら、こんな発想をしたいです。
房野さん、ご苦労様でした。今回実践された小学校の先生は私たちみるみるの会の例会にも参加し、ナビ体験を行ったうえで実践をされました。その積極的な姿勢は素晴らしいと思います。このような連携が会員のいる地域で広まっていくよう28年度に向けてまた頑張りたいと思います。