「中高生のための鑑賞会」(2016.3.19)in 下関市立美術館 後半編レポート
前半編でも示していたように、後半編レポートでは、下関市立美術館で開催された中高生のための鑑賞会について、グループワークショックで私と一緒の班になった参加生徒の様子を詳しく紹介してみたいと思います。
その前に、事前の北野研究員のレクチャー内で、近くの人と意見を交換する時間が設けられていたのですが、私と隣に座っていた学生さんとのやりとりについても、ご報告したいと思います。
春日美由紀先生のレポートにも記されていたように、チンパンジーと女性の写った画像で、「みる・考える・話す・聴く」の簡単なレッスンが行われたのですが、私は、左隣に座っていた女子学生に話しかけてみました。知らない人には、少し大胆になれるものです。
私「私は、あの女性がチンパンジーに悩みを相談しているところに見えるけど、あなたはどう思いますか?」
彼女「私は、チンパンジーが女性に心の内を話しているように見えます。」
私「どうして、そう思うの?」
彼女「女の人はチンパンジーの方をしっかり見ていて、今朝は何を食べたの?などの質問をしていて、チンパンジーの視線は宙に浮いているので、何を食べたのだっけ?というように、いろいろと質問を受けて、考えているように見えます。」
彼女が根拠を示して見解を述べたことに感心しているうちに、近くの人との意見交換の時間はタイムアウト。北野研究員は、どう見えるかについて全体に問いかけたのでした。
北野研究員は、「マンガの感想を言い合う感覚で、話すこと。ただ、少し、根拠について考えて話すことがコツ。」と言って促しました。この人には、こう見えているんだ!というスタンスで聴くと面白いと、聴き手側へのアプローチもそっとアナウンス。
また、「何を考えているのかな。」と質問や疑問を考えながら見てみると、また面白いかもという言葉も添え、北野研究員は学生さんたちにマイクを渡しました。
Aさん「恋愛相談をしている。」
Bさん「親密な感じ。」
Cさん「葉が、額縁の様。」
Dさん「チンパンジー同士がケンカをした後に、飼育員さんが慰めている。」
北野さん「慰めている感じは、どこから?」
Dさん「チンパンジーが顎に、手を置いているところから。」
Eさん「女性の様子から、気遣いが感じられる。」
Fさん「さっきの意見とは逆に、女性がゴリラに悩みを打ち明けている。」
北野さん「これ、ゴリラじゃなくて、チンパンジーやで。」と突っ込み。(間髪入れずの、知識の訂正!嫌味にならない雰囲気で知識の訂正が試みられていて、もしかしたら、ここも、参考になるところかも、と思いました。)
Gさん「女の子のチンパンジーが、異性を見つめている。」
北野さん「女の子なんや?」と、確認したうえで、
北野さん「どうして?」
Gさん「口が、ニヤけているから。」
北野さん「なんか、うれしそうな表情。」
Hさん「問題をかかえた生徒が、先生に相談中みたい。」
北野さん「どうして?」
Hさん「後ろの壁から。壁が教室に見えるから。」
北野研究員は熱心に中高生に尋ね、その根拠についても問いかけ、聴き、また、他の人の意見を引き出し、10分くらいを経て言いました。「みんなの話を聞くと女性とチンパンジーの立場がぐるぐる逆転していて、面白かったね。」と小まとめ。そして、おおまかに二人のコミュニケーションについての話が出たと、それまでの話の共通項を述べたうえで、果たして二人のコミュニケーションは成立しているのかという問題も、そっと言葉にしたのは深遠な意図があったように思います。
その後、コミュニケーションを通して猿研究を行ったジェーンについての情報提供もあり、およそ10分間に学生たちが語ったそれぞれの話に、何かしらの説得力のようなものも添えたのでした。知識の提供「ネタバラシ」が、それまでの話題を台無しにせず、何かしら肯定的な説得力のようなものを漂わせる内容であれば、自分の直観も直感も、あながち間違いじゃないのかも、という自信につながるかもしれません。そのような経験から、もしかしたら身近に思える世界が広がるきっかけにもなるように思いました。
さて、レポート後半編の試みは、鑑賞会参加生徒のグループワークショップについてだ、と申しながら、助走が長くなりました。北野研究員によるレクチャー内で行われたやりとりも紹介したく、おおざっぱにお伝えしました。根拠もしっかり述べ、端的でありながら、二人のやりとりについて温かみのある素敵な見解だったなぁと感心したのでした。
いよいよ助走を始めます。
北野研究員の50分あまりのレクチャーを受けた後、中高生および大人勢合わせておよそ50名の参加者は、展覧会の会場の展示作品から自分のお勧めの作品を一点決め、後ほどグループ内で発表することが告げられました。みんなに「あなたのお勧め作品、見たい!」と思わせるようなプレゼンができるように、メモを取りながら鑑賞してもよい。グループ内でお勧め作品についての話をそれぞれ聴いて、自分も見たい!と思った作品をグループ内で一点決め、代表者一名が今日の参加者全体にむけて、発表する。以上のような指示を受け、
記述用のワークシートが配られ、学芸員からペンではなく鉛筆使用の旨も一言添えられ、館内で記述ができるようにボードも用意されていていたので必要に応じて受け取り、その後、およそ20分間、参加者たちは自由に館内を巡りました。(本当の後半へ続)
まだまだレポートは続くようです。楽しみですね!!
次回は、みるみるの会の今年度の活動計画をお知らせしたいと思います。