安来市加納美術館の特別展「名品と出会う」の関連イベント「みるみると見てみる?」の第2弾を5月27日に開催しました。
今回も3作品を、みるみるの会員3人がナビゲーター(ナビ)をさせていただきました。
その様子をナビのふり返りとともにお伝えします。今回は、トップバッターの金谷のレポートです。



安来市加納美術館特別展「名品と出会う」関連イベント「みるみると見てみる?」
5月27日(日)13:30~14:00 安井曾太郎 「女と犬」 1940年 油彩
ナビゲーター:金谷直美 参加者:10名(内みるみる会員3名)
<はじめに>
安来市加納美術館で第2回目となる「みるみると見てみる?」で鑑賞作品として金谷が選んだのは、今回の特別展のポスターやチラシになっている「女と犬」です。このメインビジュアルとなっている作品で、ぜひナビをしてみたいと思っていました。一見、犬と女性の何気ない暮らしの一場面のようですが、何かちょっとふしぎな感じがしたことも、この作品を選んだ理由の一つです。
今回ナビをする3人がそれぞれ作品を選んだ後、展示室への動線などを考慮して、この作品から鑑賞会をスタートしました。
<鑑賞会の様子>
まず初めに、この鑑賞会のルールや進め方「作品をまずよくみること。そしてよく考え、考えたことを挙手して指名されたら話してほしいこと。その話をよく聴いて、また作品をよくみて…と、いうことを繰り返しながら一緒に作品を味わっていくこと」を伝えました。
「この犬は、この人のものではないのでは?」と、犬の目の描かれ方から「よそよそしさ」を感じ、犬を触っている人との関係性についての発言がありました。続いても犬の目の感じから「病気なのかもしれない」「元気がなくて、触られるままになっている」。また、犬のポーズから「犬にとって安心できる人が近くにいるから寝そべっていて、ちょっと緊張しながらも触られているのでは」といった、作品に描かれているものから作品の外にも想像を拡げた意見も聴くことができました。
視点が作品の外まで広がったことから、描かれているこの場所はどこなのか「家のなか?そと?」と参加者の皆さんに挙手してもらいました。「そと」と思われた方が少し多かったです。どこからそう思われたのか、それぞれ語っていただくなかで、そとでもなかでもない、軒の下や玄関先のアプローチではないか。また「床材がタイルのようであることから、洋館ではないか」などのご意見がありました。
続いて「この女性に焦点をあててみてみましょう」とみなさんに投げかけて、はっとしました(女性って確認もせずに、自分から言ってしまいました!)。みるみる会員のフォローもあり、この人は女性ということを確認し対話を続けました。「着物や帯、お化粧の感じ等から若い女性」、また「作品が描かれた1940年という時代を考えるとずいぶん裕福な家庭の娘さんでは」というご意見もありました。また「きれいにお化粧もしているし、金糸の入った帯もしているから、お見合いでは?」「お見合い相手の家に行き、犬を手なずけようとしているのかも」などと、描かれているものと今までみてきた犬と女性の関係性なども含めながら想像も膨らんでいきました。
これまでに発見したことを踏まえ、全体をみてみることを提案しました。「1940年という時代を考えると不穏な時代の中でも平和なひと時を残したかったのでは」「洋館で、洋犬と着物姿の女性が描かれていることから、西洋化していく日本の姿も感じる」「作者は女性の美しさを描きたかったのでは」「着物を着た女性の所作が美しく、それを描きたくて犬を配置したのでは」等々、作者の意図につながるお話をたくさん語っていただきました。私自身、何気ない日常の一コマと思っていた作品が、和と洋といった文化や時代の流れも含んでいることに気づくことができて、みんなで対話しながらみることの面白さを感じました。
<振り返り>
「犬→場所→人→全体」という流れでこの作品を鑑賞しました。しかし、初めに犬の様子や人との関係性について話題があがっていたので、まずしっかり犬をみて、関係性を考えながら人をみるなどの、焦点化のタイミングと順番の判断が甘かったです。描かれている要素が少ないからこそ、一つひとつを大切にみて考え、思考をつなげていくことが必要でした。
また、対話型鑑賞は初めてという方もおられることや作品に描かれているものがはっきりしていることからも、「どこからそう思う?」という作品に根拠を求める言葉かけを意識してスタートしました。しかし、途中から鑑賞者の意図をくんで「~と思われたのは、○○からですか?」と補足や確認することが多くなりました。ふり返ってみると、発言された方に根拠となる部分を話していただき、それらを積み重ね合意形成をしたうえで、「では、そこからどう思う?」というところへ意図的にシフトチェンジした方が話し合いが整理されて、参加者のみなさんにより豊かな時間を過ごしてもらえたのではないかと思いました。今回は、キーワードとなる言葉の聴き落としも多かったので、基本に立ち返って「よく聴く」ことを、日々意識していこうと思いました。
ナビとしては反省することばかりですが、鑑賞者のみなさんのお力で、この「女と犬」を楽しく味わうことができました。参加してくださったみなさん、イベントを開いてくださった安来市加納美術館のスタッフのみなさんに感謝申し上げます。ありがとうございました。
<みるみる会員3名からナビへのコメント>
1、松田より
なんでも話せる雰囲気を作られるのは、毎回のことですがさすがだなあと思います。ですが、発言のなかったご夫婦もおられたので気になりました。自由に話せる雰囲気は大事にしながら、みんなが参加するような鑑賞を作るのは大人相手でも難しいなあと思いました。自分が話す時には、うまくまとめられない自分の考えをパラフレーズでまとめて返してもらうなど、聞いてもらえてよかったなあという気持ちになりました。
(金谷から)→ナビの終わり頃、そのご夫婦がちょっと時間を気にしておられました。1作品につき約30分位という時間の見通しについてもアナウンスしておけば、安心してその場にいたり離れたりすることができたように思いました。ナビや作品との相性などもあると思うので、発言していただければもちろん嬉しいですが、その場に居てくださることがありがたいなぁと思っています。
2、房野より
・今回の特別展のポスターになっている作品でもあり、参加者の期待も大きかったと思われます。30分強、一つの作品から様々な読み取りができ、初めて参加された方も満足されたのではないでしょうか。
・いつものように笑顔で話しやすいムードでスタートし、途中、発表者の意見を受けて作品のモチーフの犬へ話しかけるなど、ユーモアを交えつつ親しみやすい場面がありました。
・途中、話題が分散したときに、ナビに迷いがあったのか、パラフレーズを言いよどんだ場面が見られたように感じました。言いかえの言葉がスムーズに出にくかったのか、それまで出た内容とつなげようとされたのか、どうだったのでしょう?
(金谷から)→実は言いかえの言葉が出ませんでした。なるべくオウム返しではなく意図を汲んで返したいという思いと、自分の語彙量のアンバランスさが露呈してしまいました。あのときの微妙な空気感は、申し訳なかったです。
3、春日より
トップバッターで、笑顔で、和やかな感じを演出していただき、参加しやすい雰囲気をつくってくださった。ルールも簡単明瞭だが大事なところは抜かさず説明されていた。
描かれているものが明快で分かりやすい作品だったので発言が次から次へと出て、活発な鑑賞会となっていた。
描いている画家の視点について発言があったが、うまいパラフレーズの言葉が思い浮かばず、逡巡する時間があり、その間、鑑賞者がやや戸惑いを感じていたように思った。この時のパラフレーズは「俯瞰」が適切だったかと思う。
作品の描かれた年代や、ペットの犬が洋犬であることから様々な解釈がうまれ、「鑑賞者が作品を自由にみてよい」という安心感につながる鑑賞会となっていた。

安来市加納美術館の特別展「名品と出会う」の会期は、6月11日まで。「女と犬」この女性と犬の関係、あなたならどうみますか?本物の作品の犬の目は、なかなか印象的ですよ。ぜひ、会期中に足をお運びください。


6・7月のみるみるの会の鑑賞会は、浜田市世界こども美術館の企画展「はまだの風景画展」の作品で行います。
「みるみるとみて話そう」(展覧会の観覧料が必要です)
6月9日(土)14:00~15:00
7月7日(土)14:00~15:00
みるみるの会メンバーと一緒に話しながら、作品を自由にみてみませんか?