ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

加納美術館「愛しき島根」での対話型鑑賞会②の様子をお届けします(2019,3,31開催)

2019-05-05 20:20:19 | 対話型鑑賞
みるみるの会の金谷です。
3月31日に安来市加納美術館 企画展「木工芸作家 細田育宏+染織作家 細田和子 愛しき島根」の関連イベント
対話型鑑賞会でナビゲーター(ナビ)をさせていただきました。鑑賞会の様子をお伝えします。

日時:平成31年3月31日 13:30~14:00
場所:安来市加納美術館
作品:「千年桜」細田和子 2011年
ナビゲーター:金谷直美  参加者:4~10名

 「幽霊みたい」「もぐらがみえる」「キリンがおる」「恐竜だ」と様々な見立てが鑑賞者の方からあげられました。確かに、作品に近づいてみると、大変細やかに描き込まれたところや薄ぼんやりと描かれたところが、動物などいろいろなものにみえました。これはナビとしての反省ですが「そんな風にみえるんだ!すごいなぁ!面白いなぁ!」と思いつつ、はっきりと「もぐらはどこ?」「キリンはどっち向いてるの?」など、詳しく聞くことをしませんでした。自分のどこかに「桜」の話をしていかなきゃ!時間も限られているし…という焦りがあったように思います。

 鑑賞会後のふり返りでも、これらの場面が話題となりました。動物などの見立てが出た際に、詳細な確認があれば、鑑賞者全員がどこに何がいるか共有することができる。動物などの形がみえることについて、どう思うのかを鑑賞者に投げかけることで、もっと豊かに作品を味わうことができるのではないか。もっと、鑑賞者の話に耳を傾ける必要がある。と、いう意見を聞きながら、「鑑賞者ファースト」のつもりでいたのに、いつの間にか「自分(ナビ)ファースト」になっていたなぁと反省しました。
 もしも、「鑑賞者ファースト」で、動物などの見立てについてじっくり確認しながら鑑賞をしたら、「えっ、こんなふうにみていたの!」「おぉ、すごく細かくみてるんだ!」等々、同じものをみていても視点や見方に違いがあることを感じたり、「どんな見方もしてもいいんだ」という安心感や面白さを共有したりできたのではないかと思います。動物などがみえる!ということを共有した後で「これらのことから、どう思いますか?」「どんなことを考えますか?」と鑑賞者のみなさんに問いかけたら、「色々な生き物が、この木を作っている」「恐竜の時代からこの桜はあったのかもしれない」「枯れそうな桜なのに、命を感じる」など桜の中に流れている命や時間のことに話題が繋がっていったかもしれません。想像するだけでも、わくわくします。我ながら惜しいことをしました。

 と、ここまで読むと「一体どんな作品だったの?」と思われるかもしれません。鑑賞会の作品を選ぶために、事前に二部屋ある企画展示室を巡りました。そして「千年桜」の前で、この作品は何か心惹かれるなぁ、たくさん話ができそう、楽しみだなぁと思いました。はっきりとした感じの中央の幹とぼんやりとした花といった、それぞれの描き方の違いから現実と夢のようだなぁ、幹はどっしりしているけれど枝は流れるような曲線だなぁ、などと思いながら、いくつもの対照的なものが一つの作品をつくり上げていて面白いと感じました。また、対照的といえば、幹は生きているのか枯れているのかよくわからないけど、花はまるで輝いているようでとても生き生きとしている、花がこの桜の命を象徴しているのかもしれないとも思い、対話の中でこんな話ができたらいいなと思いながら鑑賞会に臨みました。
 ですが、私の中の「こんな話ができたらいいな!」という思いが強すぎて、今回の鑑賞会ではナビファーストになってしまいました。自分の思いをちょっと脇に置いておくことができたら、もっとみなさんの思いを素直に受け止め、対話の場をもっとホットにできたのではないかと思いました。そのような中でも、一緒に作品をみて、お話しをしてくださったみなさん、ありがとうございました。

 時に愉快に時にじっくりと、あたたかな雰囲気の中で、参加してくださるみなさんと一緒に作品を味わうことができるように、これからもナビゲーターとしての力をあげていきたいと思います。また、作品の前でお会いできたらうれしいです。


<みるみるの会からのお知らせ>

安来市加納美術館
平和運動開始70年 画家加納莞蕾 大回顧展 
関連イベント 対話型鑑賞会「みるみるとみてみる?」
6月2日(日)13:30~15:00(予定)

みるみるの会メンバーとともに、楽しく作品を味わってみませんか?
6月2日加納美術館でお待ちしております。
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