みるみるの会の金谷です。4月28日に安来市加納美術館 特別企画展 平和運動開始70年「加納莞蕾大回顧展」の関連プログラム 対話型鑑賞会「みるみるとみてみる」でナビゲーター(ナビ)をさせていただきました。鑑賞会の様子をお伝えします。
<浜田にゆかりのある作品がずらりと並ぶA展示室(一部)>
日時:平成31年4月28日 13:30~14:00
場所:安来市加納美術館
作品:「かくれんぼと魚」加納莞蕾 1934年
ナビゲーター:金谷直美 参加者:4名
今回の大回顧展は5章(5つの展示室)からなり、それぞれの部屋をめぐる中で加納莞蕾さんの作品はもちろん、莞蕾さんの思いに触れることができる展覧会となっています。美術館スタッフの方によると、今回展示されている作品の多くは地道な調査によって新たに発見され、洗浄や修復を経て今回初お披露目となったとのこと。莞蕾さんの作品を多くの方に知っていただきたい!という美術館の方の思いを胸に、どんな作品があるのだろうかとワクワクしながら会場を巡りました。
本展での「みるみるとみてみる」は第1回目ということで、第1章「洋画家加納莞蕾」と銘打たれたA室の作品を鑑賞することにしました。その中でも、柱か何かの陰からひょっこりと子どもが顔を出している、かわいいようなでも何だか不思議な感じのする「かくれんぼと魚」を鑑賞することにしました。
じっくりと作品をみていただいた後で、気づいたこと等話し始めていただきました。「場所がよくわからない」「前にあるのは魚らしいけど、後ろにあるものは一体何?」「右側の黄色い入れ物に入っているのは?」と、話し始めると謎だらけ!
「後ろにあるのも魚では?よく見ると目やえらがある」「前にある魚は並べてあるみたいだけど、後ろの魚は頭を上にして立てて入れてある。魚をこんな風に入れないのでは?」「黄色い入れ物に入っているのは色や形から、アボカドではないか」「いやいや制作年(1934年)から考えたら、アボカドはないのでは。イワシとかの小魚じゃないかな」「場所もよく分からないけど、地面の境にあるはずの水平な線もない。子どもの横にある縦の線も斜めになっていて何だかすっきりしない」等々と、新たな謎や「もしかしたら」といった会話がたくさん交わされました。
その中でも画面中央より左にあるのは長ネギだろう、それもモリモリっと新鮮な感じがするということについては、意見が一致したように思います。
どんどん話していただきながら、それを聞いてどう思うか、そこからどう考えるかを繰り返すなかで、「描きたいものを表すために、いくつかの視点を組み合わせて描いているのではないか」「手前の魚のように描く力はあるのだけれど、後ろの魚まで同じように描いたら描きたいものがぼやけてしまうのでは」「やっぱり描きたかったのは、あの子じゃないかな」「イエローオーカーが右の入れ物、手前のトロ箱、そして子どもの服に使われている。色の配置としても緑との補色が考えられている。ただリアルに描くのではなく、作家の意図がある」等々、はじめに不思議と思っていた色や形には作者の意図があるのではないかという話につながっていきました。
そして、この場所や黄色い服の子どもにも話題がつながっていきました。「もしかしたら、ここは作家のアトリエでは?ちょうどこのころ静物画も描いている(鑑賞者の斜め後ろの壁に展示中の「静物」)。ネギもあるし」「子どもが幽霊みたい。目が塗りつぶされているから」「口がへの字に結ばれている」「もしかしたら、キャンバスの裏からこちらをのぞいているのでは」「『おとーさーん、遊んでー』とか聞こえてきそう」といった子どもの声までも想像したところで約30分となり、鑑賞会を締めくくりました。
<「静物」1930年代>
参加された方から、「楽しかった」「見方がどんどん変わっていって面白かった」というお声を頂きうれしかったです。私自身も、始める前と終わってからはこの作品の見方が随分変わりました。私は朝まだ早い市場の一角か、ヤミ市みたいなところに子どもが潜り込んで遊んでいるのかなぁ、でも何かしっくりこないところがあるな、といった感じがありました。今回、語られたアトリエ説も面白くて、この作品がもっと好きになりました。それと、鑑賞会では名前が出てこなくて言えなかったのですが、右の黄色い入れ物に入っているのは「アーティチョーク」ではないかと密かに思っています。変化のある緑色と、つぼみの先のとがった感じがピッタリだと思ったのです。1930年代にアーティチョークは無いよなぁと我ながら思うのですが(2019年の今も食べたことはありません)。
このように作品から発見したことや感じたことを、どんどん言っても大丈夫!どんどん意見を言いたくなるようなあたたかくて安心な場を、これからも提供出来たらと思っています。しかし、そのような場も参加してくださる方がいないと始まりません。今回の鑑賞会に参加してくださった、ご夫婦と思われるお二人の方への感謝の気持ちでいっぱいです(実は鑑賞会が始まる際にちょうどA室にいらしたのでお声がけし、半ば強引に参加していただいていたのでした)。貴重なお時間をいただき、なおかつたくさんお話しいただけたこと感謝しています。ありがとうございました。
時に愉快に、時にじっくりと、あたたかな雰囲気の中で、参加してくださるみなさんと一緒に作品を味わうことができますように、これからもナビゲーターの力を磨いていきたいと思います。
あなたも、みるみるメンバーと一緒におしゃべりしながら作品を楽しんでみませんか。
【みるみるの会からのお知らせ】
安来市加納美術館
平和運動開始70年 画家加納莞蕾 大回顧展
関連イベント 対話型鑑賞会「みるみるとみてみる?」
6月2日(日)13:30~15:00(予定)
みるみるの会メンバーとともに、楽しく作品を味わってみませんか?
6月2日加納美術館でお待ちしております。
<浜田にゆかりのある作品がずらりと並ぶA展示室(一部)>
日時:平成31年4月28日 13:30~14:00
場所:安来市加納美術館
作品:「かくれんぼと魚」加納莞蕾 1934年
ナビゲーター:金谷直美 参加者:4名
今回の大回顧展は5章(5つの展示室)からなり、それぞれの部屋をめぐる中で加納莞蕾さんの作品はもちろん、莞蕾さんの思いに触れることができる展覧会となっています。美術館スタッフの方によると、今回展示されている作品の多くは地道な調査によって新たに発見され、洗浄や修復を経て今回初お披露目となったとのこと。莞蕾さんの作品を多くの方に知っていただきたい!という美術館の方の思いを胸に、どんな作品があるのだろうかとワクワクしながら会場を巡りました。
本展での「みるみるとみてみる」は第1回目ということで、第1章「洋画家加納莞蕾」と銘打たれたA室の作品を鑑賞することにしました。その中でも、柱か何かの陰からひょっこりと子どもが顔を出している、かわいいようなでも何だか不思議な感じのする「かくれんぼと魚」を鑑賞することにしました。
じっくりと作品をみていただいた後で、気づいたこと等話し始めていただきました。「場所がよくわからない」「前にあるのは魚らしいけど、後ろにあるものは一体何?」「右側の黄色い入れ物に入っているのは?」と、話し始めると謎だらけ!
「後ろにあるのも魚では?よく見ると目やえらがある」「前にある魚は並べてあるみたいだけど、後ろの魚は頭を上にして立てて入れてある。魚をこんな風に入れないのでは?」「黄色い入れ物に入っているのは色や形から、アボカドではないか」「いやいや制作年(1934年)から考えたら、アボカドはないのでは。イワシとかの小魚じゃないかな」「場所もよく分からないけど、地面の境にあるはずの水平な線もない。子どもの横にある縦の線も斜めになっていて何だかすっきりしない」等々と、新たな謎や「もしかしたら」といった会話がたくさん交わされました。
その中でも画面中央より左にあるのは長ネギだろう、それもモリモリっと新鮮な感じがするということについては、意見が一致したように思います。
どんどん話していただきながら、それを聞いてどう思うか、そこからどう考えるかを繰り返すなかで、「描きたいものを表すために、いくつかの視点を組み合わせて描いているのではないか」「手前の魚のように描く力はあるのだけれど、後ろの魚まで同じように描いたら描きたいものがぼやけてしまうのでは」「やっぱり描きたかったのは、あの子じゃないかな」「イエローオーカーが右の入れ物、手前のトロ箱、そして子どもの服に使われている。色の配置としても緑との補色が考えられている。ただリアルに描くのではなく、作家の意図がある」等々、はじめに不思議と思っていた色や形には作者の意図があるのではないかという話につながっていきました。
そして、この場所や黄色い服の子どもにも話題がつながっていきました。「もしかしたら、ここは作家のアトリエでは?ちょうどこのころ静物画も描いている(鑑賞者の斜め後ろの壁に展示中の「静物」)。ネギもあるし」「子どもが幽霊みたい。目が塗りつぶされているから」「口がへの字に結ばれている」「もしかしたら、キャンバスの裏からこちらをのぞいているのでは」「『おとーさーん、遊んでー』とか聞こえてきそう」といった子どもの声までも想像したところで約30分となり、鑑賞会を締めくくりました。
<「静物」1930年代>
参加された方から、「楽しかった」「見方がどんどん変わっていって面白かった」というお声を頂きうれしかったです。私自身も、始める前と終わってからはこの作品の見方が随分変わりました。私は朝まだ早い市場の一角か、ヤミ市みたいなところに子どもが潜り込んで遊んでいるのかなぁ、でも何かしっくりこないところがあるな、といった感じがありました。今回、語られたアトリエ説も面白くて、この作品がもっと好きになりました。それと、鑑賞会では名前が出てこなくて言えなかったのですが、右の黄色い入れ物に入っているのは「アーティチョーク」ではないかと密かに思っています。変化のある緑色と、つぼみの先のとがった感じがピッタリだと思ったのです。1930年代にアーティチョークは無いよなぁと我ながら思うのですが(2019年の今も食べたことはありません)。
このように作品から発見したことや感じたことを、どんどん言っても大丈夫!どんどん意見を言いたくなるようなあたたかくて安心な場を、これからも提供出来たらと思っています。しかし、そのような場も参加してくださる方がいないと始まりません。今回の鑑賞会に参加してくださった、ご夫婦と思われるお二人の方への感謝の気持ちでいっぱいです(実は鑑賞会が始まる際にちょうどA室にいらしたのでお声がけし、半ば強引に参加していただいていたのでした)。貴重なお時間をいただき、なおかつたくさんお話しいただけたこと感謝しています。ありがとうございました。
時に愉快に、時にじっくりと、あたたかな雰囲気の中で、参加してくださるみなさんと一緒に作品を味わうことができますように、これからもナビゲーターの力を磨いていきたいと思います。
あなたも、みるみるメンバーと一緒におしゃべりしながら作品を楽しんでみませんか。
【みるみるの会からのお知らせ】
安来市加納美術館
平和運動開始70年 画家加納莞蕾 大回顧展
関連イベント 対話型鑑賞会「みるみるとみてみる?」
6月2日(日)13:30~15:00(予定)
みるみるの会メンバーとともに、楽しく作品を味わってみませんか?
6月2日加納美術館でお待ちしております。