緑陰茶話   - みどりさんのシニアライフ -

エッセイとフォト

日々の発見と思いのあれこれなど

岐阜に行ってきました 新体操編

2022年10月11日 | 男子新体操
宿から大会が行われる「岐阜メモリアルセンター」まで、歩いて20分くらいです。
宿の人は、近辺の地図も載っている観光用パンフレットで一番迷わない道を教えてくれてました。
途中でコンビニにより、ランチ用のサンドイッチや飲み物を購入。
商品棚がほぼカラで、売れ残りみたいな感じのものでしたが仕方ないです。

「岐阜メモリアルセンター」まで行くのは簡単だったのですが、着いてからが大変でした。
というのも「岐阜メモリアルセンター」って、私の想像を絶した巨大な総合スポーツ施設だったからです。

「岐阜メモリアルセンター」の中にあるのは、屋外型の野球場と競技場。(それだけでも大きい!!)
ドーム状の会場が大小二つ、スイミングプラザ、テニスプラザ、弓道場に武道館等々…と、スポーツ関連の施設が幾つも入っていたのでした。

帰ってから調べて分かったのですが、たとえばスイミングプラザといっても競泳やアーキスティックスイミングにも対応した屋外と屋内の複数のプールがあり、テニスプラザの方も屋内と屋外があり、屋外のテニスコートだけでも12面ありました。
傍に長良川もあるし、その気になればオリンピックでも開けるんじゃないかと思うほど。

そんな「岐阜メモリアルセンター」の中を、私は大きい方のホールを探してウロウロオタオタ。
時間を気にしながら、なんとかホールに辿り着きましたが、観客用の2階の入口が分かりません。
辿り着いたのは選手など関係者が入る1階の入り口。
そこで観客用の入り口を尋ねるべく近づくと、いたのは青森大学の学生達。
(揃いのTシャツのロゴで分かった。)

青森大学の男子新体操部といえばインカレで21連覇中の最も強いチーム。
そこの部員さん達が大会のお手伝いに駆り出されて1階の関係者用の受付をやってたみたいです。
そこで若い子(全員若い!!)を捕まえて2階の入り口への行き方を聞きました。

私は歩き回って汗だく状態だったせいか、その子には『このバーサン、大丈夫か』と思われたみたいで、心配そうに「分からなかったら戻ってきてください、付いて行きます」みたいなことを何度か念を押すように言われました。
でもその子、気が付くと足を引きづっていて故障中みたいで、そっちが心配。

辿り着いた2階の入り口にいたのは、2番目に強い国士舘大学の学生達。
他のスポーツでも、そんなことがあるのかどうか知りませんが、日頃 YouTubeで演技を見ている大学の新体操部の部員さん達(もちろん動画のご当人ではないのですが)を間近で見るのはなんとなく嬉しいことでした。
皆さん、とにかく若~い!!
というわけでやっとホールの中に入れました。

何を隠そう私は、スポーツ観戦なんてほとんどしたことのない人。
どう振る舞ってよいのかも分かりません。
ヒヤヒヤドキドキでした。

一番良い、カメラの後ろ側の席はほとんど埋まっていたのですが、一人でしたので上手い具合に一番前の空いていた席を確保。
落ち着いて観察すると、思っていた通り、来ていたのは選手以外の同じクラブの人とか家族とか、選手の身内みたいな人達が多そうでした。
でも私の隣の二人組は身内ではなく男子新体操のファンのようでした。
もう一方の隣は若い男性で一人で観てました。

カメラは正面から撮りますので、その後ろ辺りが正面から見られる場所になります。
審査員も(線審を除いて)フロアの正面で見て審査します。
選手は審査員アピールの為に、審査員から見て一番カッコいい位置で演技します。
例外は井原高校で、監督は「観客は四方にいます。ですから四方のどこから見ても美しく見られるように演技する」んだそうです。

前正面席と後ろ正面席以外は観客はまばらでした。
遅く来てもそういう席なら座れます。
向かい側になる後ろ正面の席は、よく分からないのですが出場者のチームの人達が座っているみたいでした。

私が席に着いた時には9時を少し過ぎていて、競技はもう始まっていました。
ところがやっていたのは個人が演技するキッズ選手権でした。
小学生を主とした徒手の演技で、一生懸命なのはよく分かるのですが、家族でなければ敢えて見たいとは思わない「千里の道も一歩より」という感じの演技なのでした。
もちろん、励ましの拍手は惜しみませんでしたけど。

3日目は団体の筈なのに、ネットで調べていた情報と全然違う。
購入したプログラムによると団体は午後からだったのです。
それだったら1泊する必要はなかった・・・。

この大会は、そもそもNPO総合体操クラブと全日本シニア体操クラブ連盟の主催でしたので、クラブ選手権の中に事前に私が知らなかったキッズ選手権も含まれていたみたいです。
民間の体操クラブに通っているのは小学生くらいの子供が多く、そういう子供達の晴れ舞台になる競技会がキッズ選手権だったんでしょうか。
この大会、見るのは無料でしたので文句は言えません。
それに一泊したおかげで鵜飼も見られたし。

付け加えると、民間の体操クラブ主催にはそれなりの面白さがあって、公的なルールに縛られない色んな実験的な試みをしているのでした。
私が今回どうしても見たかったミックスの団体演技もその一つでした。

スポーツでミックスという場合、男女のミックスを思い浮かべるのですが、男子新体操の場合、それだけではないようです。
他のスポーツでもそうなのか知りませんが、異なる年齢層のミックスというのもありました。

たとえばユースというと、男子新体操の場合、個人選手では中2から高3、団体では小4から高3なんだそうです。
そして、団体ミックスの場合、4、5歳の幼児が団体のユースの年齢の選手と一緒に演技することもあるのでした。

以前見た動画では、4歳の子でもお兄ちゃん達に合わせてちゃんと演技できていました。
ある意味、一人で出場するキッズの選手よりもしっかりしていて、“お兄ちゃんと一緒効果”みたいなものがあるのかもしれません。
今回も出場していましたが、身長差が倍近く違ってました。

そしてもう一つのミックスは健常者と障碍者です。
残念ながら今回はエントリーされていませんでした。

今回の男女のミックスでは、女子の新体操の選手が入っていたチームがありました。
私が以前に動画で見ていたのは小学生の女の子が入ったミックスでしたので、成人女性というのは初めてです。(もちろん男性も成人)
さすがに巧かったですし、可能性を切り開くという意味でも面白かったです。

ずっと見ていて気になったこともあります。
男子新体操のファンらしい私の隣の二人組の女性。
新体操の会場には男性用と女性用の二つのマットが並んでいて、男女順番に演じられるのが通例で今回もそうでした。
(観客席も男子新体操と女子の新体操は、大まかですが分けられています。)
一人は女子の新体操の演技の時もそれを見ていて拍手したりするのですが、もう一人は女子の新体操にはまるで関心がない様子。

私が思ったのは、関心がないから見ないし拍手もしないって、観客のマナーとしてどうなんだろうということ。
最初から見もしないわけです。
こういうのって新体操の大会の場合、ありなのでしょうか。
競技フロアに出ていた女子の選手の中には、男子の演技が終わると拍手している人達もいたので余計そう思いました。

私がそんなふうに考えたのは、男子新体操の歴史を調べていて分かったこととして、例の統一教会の件で再び名前が出てきた山崎浩子さんや、秋山エリカさんが活躍していた頃の話です。
当時、女子の新体操は割と人気があって、テレビのようなメディアでもよく報じられていました。
(だから当時の主力選手の名前を私でも知っているわけですし、統一教会の広告塔にもなり得たのです。)

ところが同じ会場で、かわりばんこに演技していた男子新体操については完全に無視で、まるで存在さえしていないような扱いでした。
ですから大半の人は女子の新体操については主力選手の名前まで知っていても、男子新体操についてはその存在すら知らないことになってしまったのです。

メディアの報道というのは受け手の知識や意識に物凄い影響を与えるものだと思う一方、やはり報道の姿勢としてちょっと極端すぎたのではないかと思います。
もちろんそれは視聴者の要望に沿った判断だったと言われるかもしれませんが、存在さえ知らされないのなら要望も何もないです。

そういう過去があったので、私は男子新体操を見にきたのだけれど、一観客としては女子の新体操も見ようと思っていました。
実際、私が見た「2022新体操フェスタ岐阜」について、新体操関係の記事を専門に書いておられる記者の椎名桂子さんは、神谷梨帆選手の演技を取り上げながら次のようにレポートしています。⇒ここ

普通の競技作品であれば、もっと難度を入れなければ高得点にはならないのかもしれないが、この作品においての難度は、体も手具も物語を描き、感情を伝えるためのツールとしてのみ存在していた。もしかして、新体操って本来はこうだったのかもしれない、この演技を見ながらそう思った。
今大会のマスターズ部門では、こういった「新体操ってこれでいいんじゃない?」「むしろこれがいいんじゃない?」と感じる演技をたくさん見ることができた。
手具を扱い、音楽にのせて演技をする、ということはこんなにも素敵で可能性に満ちたものなのだ、と確信させてくれた。


椎名さんの指摘は男子新体操にも通じる凄く大切なことだと思います。
男子新体操でも、やっていることは凄いと思うけど、見てて感動しない演技が高得点だったりすることもあるからです。(そういう意味で新体操では点数や順位は絶対ではないと思う。)

そうではない、感動する演技が目の前で繰り広げられているのに、男子新体操しか興味ないからそれしか見ないというのは視野が狭すぎるし、もったいないし、選手に失礼だし・・・、と考えたわけです。
私なんか男子新体操を見に行って長良川の鵜飼まで見たのにね。

てな調子で他人を冷たく見ていた私のスタンスが、あっさり覆ってしまったのが井原ジュニア新体操クラブがウォーミングアップ場に現れた時です。

井原ジュニア新体操クラブというのは、井原高校の系列の新体操クラブで、井原高校と同じ場所で練習していて、彼らは中学を卒業したら井原高校の男子新体操部に入るみたいです。
そして井原高校男子新体操部は、圧倒的に美しい演技をすることで国際的に有名なのです。

次に演技するチームはフロアの隅にある衝立で囲まれたウォーミングアップ場でウォーミングアップするのですが、井原ジュニアはウォーミングアップだけでも美しい。
ジュニアでそのクオリティかと思う程の、いわゆるレベチ、レベルが違うってやつです。

マット上では別のチームが本番の演技をやっているのですが、私の目は井原ジュニアのウォーミングアップに吸い寄せられてしまう。
それって、マット上で演技している選手達に失礼でしょ。
私のスタンスはどこに行ったのかと思い、無理無理マット上の演技に意識を集中させました。

そして感嘆ものの井原ジュニア新体操クラブの演技も終わった後、私にとってのサプライズがありました。
井原ジュニアの選手達が競技用のレオタードを着たまま、観客席のちょうど私の斜め前あたりにやってきたのでした。
どうやら私の隣の一人置いて並んでいた女性達は、井原ジュニア新体操クラブの関係者だったみたいです。(お母さん達?)

この時の私の心境は、バードウオッチングしていて突然、滅多にお目にかかれないサンコウチョウかイスカみたいな野鳥が目の前の枝に留まった、みたいな感じでした。
ジュニアですから若鳥ですね。
もう食い入るように見つめるしかない・・。

6人の選手達は一様に朱を刷いたみたいに頬を紅潮させていました。
「さっきとは表情が違う」と言われていました。
たぶん、自分達でも満足のいく演技だったのでしょう。

私は、たぶんあまりにも見つめていたのでしょう。
3回くらい選手の人と目が合ってしまいました。
『アカン、失礼や』と思ったのですが、どうしても目が離せない。
マスクで呆けたような顔の半分が隠れていて本当に良かった。

とまあ思いがけないこともあったりしましたが、午後の4時20分くらいに競技は終わりました。
問い合わせた電話で午後の8時に終わると言っていたのは1日目と2日目のことだったみたいです。
ですから余裕をもって帰宅することができました。

この大会は写真撮影は禁止ですので写真はないです。
いずれ演技の動画がYouTubeでアップされる筈で、それが楽しみです。