写真:氷河湖レイク・テカポ 湖畔に「善き羊飼いの教会」と、サザンアルプスの山並み
←ニュージーランド星空旅記2009~3、クライストチャーチ・街外れの駅からの続きです
2009年6月16日
朝8時、ホテルをチェックアウトすると外はみぞれのような冷たい雨と、強い風。
いかにも冬の荒れた朝という感じで、余り気分の良いものではない。
増してや、これから山の上まで星空を見に行こうというのに、初っ端からこんな天気では気分も萎えるというもの。
今日は、クライストチャーチからクイーンズタウン行きのバスに乗って、途中のサザンアルプス山中にある氷河湖レイク・テカポへと向かう。
レイク・テカポは景色がとても美しいことで名高い観光地だが、昼間の景色と同じくらい、いやそれ以上に夜空、星空が素晴らしく美しいところなのだ。
標高の高いサザンアルプス山中にあり、空気が澄みきっている上に周辺の人口が希薄な為に光害もなく漆黒の夜空となり、更に天候も比較的安定していて晴天率が高いとされる。
このようにスターウォッチングの好条件を見事なまでに備えたレイク・テカポは世界中の天文ファンから注目されている場所である。その素晴らしい星空を世界遺産に登録しようという声もあり、やがて世界初の星空の世界自然遺産が誕生するかもしれないという。
またテカポ湖畔に聳えるマウントジョンの山頂には世界最南端(南極の観測基地を除く)に位置する天文台があり、日本の名古屋大学をはじめとする研究機関により“重力マイクロレンズ効果”を利用して太陽系外惑星などの暗い天体を探す「MOAプロジェクト」が実施されていることでも知られる。
天文ファンから天文学者まで、世界中の星好き・宇宙好きが憧れ集う「星の町」レイク・テカポへ行って、世界遺産になる星空を見てみたい。また、地球上で最も深宇宙に近い場所の一つ、太陽系外惑星系への入り口であるマウントジョン天文台を訪ねてみたい。
今回のニュージーランド旅行の、それが一番の目的でもある。
クイーンズタウン行きのバスは日本からネットで予約しておいたが、バス会社のホームページの予約フォームに日時と乗車区間等とクレジットカード番号を入力するだけで完了し、えらく簡単で便利だった。「早割り」料金が適用できたので格安だったし。
バスに乗車する前に、運転手に確認メールのプリントアウトを見せるだけでチェックインもすんなりOK。何事も簡便でスマートで、中々いい感じ。
運転手のおっちゃん、僕が日本人と判ると「Japan?Moshimoshi?モシモシ!?Hahaha!!」
…日本人が電話する様子でも見たことがあるんだろうか?ちなみにおっちゃん、以前に観光旅行で京都に来たことがあるそうな。
モシモシおっちゃんが運転するバスは、クライストチャーチの街を抜けてハイウェイを快調に飛ばしていく。
やがて空も晴れ渡り、遥か彼方に雪を頂いたサザンアルプスを見ながらの気持ち良いドライブになった。
途中、何度か踏み切りを渡る。鉄道と併走しているようなのだが、列車は姿を現さない。
レイク・テカポのような山岳リゾート地、それも清らかな空気が売りの場所へは、本当は環境に優しい鉄道でアクセスしたいところなんだが…
スイスのように、山地へのアクセスは鉄道を活用するようには出来ないもんだろうか?
ニュージーランドは環境先進国というイメージがあるのだが、これだけ鉄道が冷遇されて自動車社会になっているのは何だか意外な気さえする。
バスは段々と山道に入っていく。サザンアルプスがどんどん近付いて来る。
標高が高くなるにつれ山道はどんどん険しくなり、所々路面が凍結している箇所にも出くわす様になった。モシモシおっちゃんの腕の見せ所のようなスリリングな山越えルートである。
車窓には迫力ある山並みが連続して、見ていて飽きない。
不意に車窓に碧い不思議な色の水を湛えた湖面が広がり、昼過ぎに無事レイク・テカポへ到着。
「うわー!綺麗なところだなぁ!そして、寒いなー!!」
バスはここで昼食休みのようで、他の乗客は皆道路沿いに軒を連ねたレストランの方へと歩いて行く。僕の予約していたホテルは、そのレストランの先。
と言うより、レイク・テカポの町は湖岸の国道沿いの数十メートルに店舗やホテルが密集しているだけで、実に小さいのだ。
時季外れのせいかがらーんとしたホテルに入り、チェックイン。
空いているからか、1人客なのにレイクビューの広い部屋に通してくれた。
部屋から、この眺め。
ラピスラズリを想わせる不思議な碧い水面と、宇宙へ直結しているかのような暗いまでの青空。
「うーん…このままずっと見ていたいよ。」奇麗だなぁ…
湖岸をちょっと歩いてみる。
湖面に突き出した岬にある、「善き羊飼いの教会」と呼ばれる石造りの小さな教会。
中に入ると、白髭の神父さんが出迎えてくれた。
この教会には祭壇がない。あるのはテカポ湖に面した大きな窓だけ。
窓に広がる景色が、そのまま自然の祭壇になっているのだ。
「こんな素晴らしい祭壇を持っている教会は、きっと世界でもここだけだね。」
教会の傍に立つ、開拓時代の牧羊犬の像。
牧羊王国ニュージーランドの功労者を讃えている。
それにしても、ちょっと外を歩き回っただけで身体が芯まで冷えてしまうほど寒い!
それに僕は手袋を持ってくるのを忘れてしまったので、手がかじかんで切れそうに痛い。こりゃ堪らんと、“目抜き通り”にあるガソリンスタンド兼スーパーマーケットでモコモコした暖かそうな手袋を買う。
ついでに、スーパーの数件隣にある「マウントジョン星空ツアー」の事務所に寄って、予約の再確認。明日の夜、マウントジョン天文台で実施される星空観測ツアーに申し込んでおいたのだ。世界一の星空を、宇宙への入り口である天文台で見るなんて何とも贅沢で、今から楽しみだ。
さて、今日はもう部屋でゆっくり休んで、日が暮れて星が出てくるのを待とう。
日本から持参した宮澤賢治の「銀河鐡道の夜」を読みながら。
→ニュージーランド星空旅記2009~5、天の河に続く
←ニュージーランド星空旅記2009~3、クライストチャーチ・街外れの駅からの続きです
2009年6月16日
朝8時、ホテルをチェックアウトすると外はみぞれのような冷たい雨と、強い風。
いかにも冬の荒れた朝という感じで、余り気分の良いものではない。
増してや、これから山の上まで星空を見に行こうというのに、初っ端からこんな天気では気分も萎えるというもの。
今日は、クライストチャーチからクイーンズタウン行きのバスに乗って、途中のサザンアルプス山中にある氷河湖レイク・テカポへと向かう。
レイク・テカポは景色がとても美しいことで名高い観光地だが、昼間の景色と同じくらい、いやそれ以上に夜空、星空が素晴らしく美しいところなのだ。
標高の高いサザンアルプス山中にあり、空気が澄みきっている上に周辺の人口が希薄な為に光害もなく漆黒の夜空となり、更に天候も比較的安定していて晴天率が高いとされる。
このようにスターウォッチングの好条件を見事なまでに備えたレイク・テカポは世界中の天文ファンから注目されている場所である。その素晴らしい星空を世界遺産に登録しようという声もあり、やがて世界初の星空の世界自然遺産が誕生するかもしれないという。
またテカポ湖畔に聳えるマウントジョンの山頂には世界最南端(南極の観測基地を除く)に位置する天文台があり、日本の名古屋大学をはじめとする研究機関により“重力マイクロレンズ効果”を利用して太陽系外惑星などの暗い天体を探す「MOAプロジェクト」が実施されていることでも知られる。
天文ファンから天文学者まで、世界中の星好き・宇宙好きが憧れ集う「星の町」レイク・テカポへ行って、世界遺産になる星空を見てみたい。また、地球上で最も深宇宙に近い場所の一つ、太陽系外惑星系への入り口であるマウントジョン天文台を訪ねてみたい。
今回のニュージーランド旅行の、それが一番の目的でもある。
クイーンズタウン行きのバスは日本からネットで予約しておいたが、バス会社のホームページの予約フォームに日時と乗車区間等とクレジットカード番号を入力するだけで完了し、えらく簡単で便利だった。「早割り」料金が適用できたので格安だったし。
バスに乗車する前に、運転手に確認メールのプリントアウトを見せるだけでチェックインもすんなりOK。何事も簡便でスマートで、中々いい感じ。
運転手のおっちゃん、僕が日本人と判ると「Japan?Moshimoshi?モシモシ!?Hahaha!!」
…日本人が電話する様子でも見たことがあるんだろうか?ちなみにおっちゃん、以前に観光旅行で京都に来たことがあるそうな。
モシモシおっちゃんが運転するバスは、クライストチャーチの街を抜けてハイウェイを快調に飛ばしていく。
やがて空も晴れ渡り、遥か彼方に雪を頂いたサザンアルプスを見ながらの気持ち良いドライブになった。
途中、何度か踏み切りを渡る。鉄道と併走しているようなのだが、列車は姿を現さない。
レイク・テカポのような山岳リゾート地、それも清らかな空気が売りの場所へは、本当は環境に優しい鉄道でアクセスしたいところなんだが…
スイスのように、山地へのアクセスは鉄道を活用するようには出来ないもんだろうか?
ニュージーランドは環境先進国というイメージがあるのだが、これだけ鉄道が冷遇されて自動車社会になっているのは何だか意外な気さえする。
バスは段々と山道に入っていく。サザンアルプスがどんどん近付いて来る。
標高が高くなるにつれ山道はどんどん険しくなり、所々路面が凍結している箇所にも出くわす様になった。モシモシおっちゃんの腕の見せ所のようなスリリングな山越えルートである。
車窓には迫力ある山並みが連続して、見ていて飽きない。
不意に車窓に碧い不思議な色の水を湛えた湖面が広がり、昼過ぎに無事レイク・テカポへ到着。
「うわー!綺麗なところだなぁ!そして、寒いなー!!」
バスはここで昼食休みのようで、他の乗客は皆道路沿いに軒を連ねたレストランの方へと歩いて行く。僕の予約していたホテルは、そのレストランの先。
と言うより、レイク・テカポの町は湖岸の国道沿いの数十メートルに店舗やホテルが密集しているだけで、実に小さいのだ。
時季外れのせいかがらーんとしたホテルに入り、チェックイン。
空いているからか、1人客なのにレイクビューの広い部屋に通してくれた。
部屋から、この眺め。
ラピスラズリを想わせる不思議な碧い水面と、宇宙へ直結しているかのような暗いまでの青空。
「うーん…このままずっと見ていたいよ。」奇麗だなぁ…
湖岸をちょっと歩いてみる。
湖面に突き出した岬にある、「善き羊飼いの教会」と呼ばれる石造りの小さな教会。
中に入ると、白髭の神父さんが出迎えてくれた。
この教会には祭壇がない。あるのはテカポ湖に面した大きな窓だけ。
窓に広がる景色が、そのまま自然の祭壇になっているのだ。
「こんな素晴らしい祭壇を持っている教会は、きっと世界でもここだけだね。」
教会の傍に立つ、開拓時代の牧羊犬の像。
牧羊王国ニュージーランドの功労者を讃えている。
それにしても、ちょっと外を歩き回っただけで身体が芯まで冷えてしまうほど寒い!
それに僕は手袋を持ってくるのを忘れてしまったので、手がかじかんで切れそうに痛い。こりゃ堪らんと、“目抜き通り”にあるガソリンスタンド兼スーパーマーケットでモコモコした暖かそうな手袋を買う。
ついでに、スーパーの数件隣にある「マウントジョン星空ツアー」の事務所に寄って、予約の再確認。明日の夜、マウントジョン天文台で実施される星空観測ツアーに申し込んでおいたのだ。世界一の星空を、宇宙への入り口である天文台で見るなんて何とも贅沢で、今から楽しみだ。
さて、今日はもう部屋でゆっくり休んで、日が暮れて星が出てくるのを待とう。
日本から持参した宮澤賢治の「銀河鐡道の夜」を読みながら。
→ニュージーランド星空旅記2009~5、天の河に続く