打ち上げ直前の“金星ロケット”H-IIA17号機 平成22年5月18日早朝
←翔べ、金星ロケット!~H-IIA17号機打ち上げ見送り紀行~ その2からの続きです
平成22年5月18日 打ち上げ予定日
夜明け前に起床。
外に出ると「雲が流れてる…」
更に悪いことに、クルマに機材を積み込んでいると「今、雨粒が顔に当たった…」
でも、この程度なら打ち上げに影響はない筈。
とにかく、打ち上げ見学場所へと急ぎます。

現場に到着。
夜明け前の暗い海から打ち寄せる波の音と、そして轟々と吹き付ける海風と横降りの雨…
打ち上げをじっと待ち続けるにはちょっときつい、かなりハードな現場です。
堪らず現場を離れ林道に避難。
やがて朝6時頃、小雨の中に朝陽が昇ります。

「雲が多いね。」
打ち上げを待つ誰もが心に一抹の不安を覚えながら見上げる、緊張感漂う夜明けです。
それでも6時44分14秒の打ち上げに向けて、カウントダウンは予定通りに進行中。
悪天候下での打ち上げにもだいぶ慣れてきた感のあるH-IIAロケットです。この程度の雨風なら、きっと打ち上がる筈。
皆、じっと耐えて「その時」を待ちます。

写真提供:しないつぐみさん
写真提供:金木犀さん
しかし…
運命は無情でした。
打ち上げ時刻が目前に迫り、誰もがこのまま金星ロケットが嵐をついて飛び立つことを確信していたであろうその時、
アマチュア無線で打ち上げの準備状況を確認していたメンバーの
「今日の打ち上げは中止!!」という声が現場に響きます。
打ち上げ6分前の、本当に直前の打ち上げ中止でした…
「仕方がないね…まぁこんなこともあるさ」
無理に打ち上げを強行して結局不具合を被るより、中止を決断して再チャレンジする事の方が遥かに良いこと。
すべては、「あかつき」と「IKAROS(イカロス)」、そしてあいのり衛星たちを無事に宇宙へ、金星へと送り出すために、この打ち上げはあるのですから。
とは言え…
やっぱりちょっと、いや相当ガッカリしますねこれは(苦笑)。
でも、これはロケット打ち上げ道楽に身を投じてしまった者の宿命。打ち上げ中止は覚悟の上なのです。
打ち上げは中止になりましたが、僕は今日までしか休暇を取得していないのでこのまま離島します。
帰る前に、宿の近くの海岸にある千座の岩屋(ちくらのいわや)に皆んなで遊びに行きました。


砂浜に半分埋まった鳥居。何か寺山修司の映画のワンシーンにこういうのが出てきたような…
「この鳥居がすべて砂に埋まったら、この島は滅ぶと云われておる…なんてこと無いよね?」(ゴメンナサイ、冗談です)

これが千座の岩屋の内部です。
海蝕された砂岩の洞窟で、中に千人が座れると言われていることからこの名がついたそうですよ。

今も波に打たれ続けているので、やがて侵食され尽くして無くなってしまうんじゃないかと心配になります。
今週一杯ねばって種子島に滞在し打ち上げを待つというロケット打ち上げ見学遠征隊のメンバーに西之表の港まで送ってもらって、
「H-IIA17号の打ち上げが次の日曜日まで伸びたら、土曜日にまた来るよ。日曜まで待ってて!」
などと軽口を叩きながら高速船「ロケット」に乗船。
さらば種子島。
さて次のH-IIAロケット打ち上げは…準天頂衛星初号機「みちびき」の打ち上げか!僕が名前を付けた衛星の打ち上げは、是非見たい!
この次は必ず、「みちびき」の打ち上げをこの目で見るぞ…
また行くぞ、待ってろ種子島!!と、新八代へと向かう新幹線「つばめ」車中でひとりささやかに乾杯。
そういえば、九州新幹線の全線開業に備えてか、いつの間にか「つばめ」でも車内販売のワゴンサービスを始めたんだねぇ…

ただいま、リレーつばめ。
新八代駅で君に出迎えてもらえるのも、あと10ヶ月か…
※後日談
上空に規定以上の氷結層を含む雲が観測されたために打ち上げを直前で中止したH-IIAロケット17号機はその後、
液体燃料を抜き取った上で5月18日のうちに大型ロケット組立棟(VAB)へと戻され、機体の再整備を受けました。
そして3日後の5月21日6時58分22秒(日本標準時)、改めて打ち上げられ、
「あかつき」と「IKAROS(イカロス)」、あいのり衛星たちを軌道に投入することに見事に成功したのです。
現在、「あかつき」と「IKAROS(イカロス)」は順調に金星へと向かって飛行しています。
もう、「はやぶさ」よりも遠くにいます。
(翔べ、金星ロケット!~H-IIA17号機打ち上げ見送り紀行~ 完)
←翔べ、金星ロケット!~H-IIA17号機打ち上げ見送り紀行~ その2からの続きです
平成22年5月18日 打ち上げ予定日
夜明け前に起床。
外に出ると「雲が流れてる…」
更に悪いことに、クルマに機材を積み込んでいると「今、雨粒が顔に当たった…」
でも、この程度なら打ち上げに影響はない筈。
とにかく、打ち上げ見学場所へと急ぎます。

現場に到着。
夜明け前の暗い海から打ち寄せる波の音と、そして轟々と吹き付ける海風と横降りの雨…
打ち上げをじっと待ち続けるにはちょっときつい、かなりハードな現場です。
堪らず現場を離れ林道に避難。
やがて朝6時頃、小雨の中に朝陽が昇ります。

「雲が多いね。」
打ち上げを待つ誰もが心に一抹の不安を覚えながら見上げる、緊張感漂う夜明けです。
それでも6時44分14秒の打ち上げに向けて、カウントダウンは予定通りに進行中。
悪天候下での打ち上げにもだいぶ慣れてきた感のあるH-IIAロケットです。この程度の雨風なら、きっと打ち上がる筈。
皆、じっと耐えて「その時」を待ちます。

写真提供:しないつぐみさん

しかし…
運命は無情でした。
打ち上げ時刻が目前に迫り、誰もがこのまま金星ロケットが嵐をついて飛び立つことを確信していたであろうその時、
アマチュア無線で打ち上げの準備状況を確認していたメンバーの
「今日の打ち上げは中止!!」という声が現場に響きます。
打ち上げ6分前の、本当に直前の打ち上げ中止でした…
「仕方がないね…まぁこんなこともあるさ」
無理に打ち上げを強行して結局不具合を被るより、中止を決断して再チャレンジする事の方が遥かに良いこと。
すべては、「あかつき」と「IKAROS(イカロス)」、そしてあいのり衛星たちを無事に宇宙へ、金星へと送り出すために、この打ち上げはあるのですから。
とは言え…
やっぱりちょっと、いや相当ガッカリしますねこれは(苦笑)。
でも、これはロケット打ち上げ道楽に身を投じてしまった者の宿命。打ち上げ中止は覚悟の上なのです。
打ち上げは中止になりましたが、僕は今日までしか休暇を取得していないのでこのまま離島します。
帰る前に、宿の近くの海岸にある千座の岩屋(ちくらのいわや)に皆んなで遊びに行きました。


砂浜に半分埋まった鳥居。何か寺山修司の映画のワンシーンにこういうのが出てきたような…
「この鳥居がすべて砂に埋まったら、この島は滅ぶと云われておる…なんてこと無いよね?」(ゴメンナサイ、冗談です)

これが千座の岩屋の内部です。
海蝕された砂岩の洞窟で、中に千人が座れると言われていることからこの名がついたそうですよ。

今も波に打たれ続けているので、やがて侵食され尽くして無くなってしまうんじゃないかと心配になります。
今週一杯ねばって種子島に滞在し打ち上げを待つというロケット打ち上げ見学遠征隊のメンバーに西之表の港まで送ってもらって、
「H-IIA17号の打ち上げが次の日曜日まで伸びたら、土曜日にまた来るよ。日曜まで待ってて!」
などと軽口を叩きながら高速船「ロケット」に乗船。
さらば種子島。
さて次のH-IIAロケット打ち上げは…準天頂衛星初号機「みちびき」の打ち上げか!僕が名前を付けた衛星の打ち上げは、是非見たい!

また行くぞ、待ってろ種子島!!と、新八代へと向かう新幹線「つばめ」車中でひとりささやかに乾杯。
そういえば、九州新幹線の全線開業に備えてか、いつの間にか「つばめ」でも車内販売のワゴンサービスを始めたんだねぇ…

ただいま、リレーつばめ。
新八代駅で君に出迎えてもらえるのも、あと10ヶ月か…
※後日談
上空に規定以上の氷結層を含む雲が観測されたために打ち上げを直前で中止したH-IIAロケット17号機はその後、
液体燃料を抜き取った上で5月18日のうちに大型ロケット組立棟(VAB)へと戻され、機体の再整備を受けました。
そして3日後の5月21日6時58分22秒(日本標準時)、改めて打ち上げられ、
「あかつき」と「IKAROS(イカロス)」、あいのり衛星たちを軌道に投入することに見事に成功したのです。
現在、「あかつき」と「IKAROS(イカロス)」は順調に金星へと向かって飛行しています。
もう、「はやぶさ」よりも遠くにいます。
(翔べ、金星ロケット!~H-IIA17号機打ち上げ見送り紀行~ 完)