←#029:さらばエストニア、また来る日までからの続き
スキポール空港からアムステルダムの街までは、空港のターミナルビルの直下にあるオランダ鉄道のスキポール駅から電車に乗って20分足らずで行くことが出来ます。
ただし、空港ターミナルビル内にある駅の窓口は慣れない外国人旅行者で大混雑しているし、チケット自販機も微妙に使い難いせいで人だかりが出来ており、チケットを購入するのに一苦労…
しかもスキポール駅からアムステルダム中央駅までは往復割引きっぷでも7.80ユーロもします。物価の安かったエストニアから来ると、余りの高額にちょっとしたカルチャーショック(苦笑)

大枚叩いてやって来た、ここがアムステルダム中央駅。
威風堂々としたネオゴシック様式の赤レンガ造りの駅舎は、東京駅の丸の内駅舎のモデルとも言われていました。
実際にはビクトリア様式の東京駅とは建築様式が全く異なるそうで、建築学上は縁が無いそうなのですが、それでもやはりどこか東京駅に似ているような気もします。

アムステルダム中央駅の駅前広場からは、市内各方面へと向かうトラム(路面電車)が発着しています。
トラムに乗ってのんびりアムステルダム散歩を楽しみたいところですが、あいにく今日は時間がありません。中央駅の周辺を少しだけ、徒歩で見て回ることにしましょう。
駅前広場から伸びる大通りを道なりに進んでいくと、大きな建物に囲まれた広場に出ます。
ここがアムステルダム旧市街の中心、ダム広場です。

ダム広場で一際目を引くこの重厚な建物がオランダ王室の王宮です。こんな街のど真ん中に王宮があるんですねぇ。
しかも、つい3日前の4月30日にはこの王宮でウィレム・アレクサンダー新国王の即位式が行われたばかり。
日本からも皇太子ご夫妻が出席されたので話題になりましたね。
ダム広場の周辺には王宮の他にもアムステルダム新教会や老舗のデパート、そしてマダム・タッソーの蝋人形の館やレストラン等が並んでいます。
観光客も多く集まり、まさにアムステルダムの中心地といった賑やかさです。
でも、喧騒のダム広場と大通りから一歩、路地裏に足を踏み入れると、そこには静かに流れる運河が…


アムステルダムの街の象徴でもある運河。
元々アムステル川に築かれた堰を中心に発展してきたという歴史を持つ水の都アムステルダムには、網の目のように運河が巡らされており、水辺の美しい都市景観を作り上げています。
世界遺産にも登録されているアムステルダムの運河の穏やかな流れを楽しみながら、暫し散策…


運河に係留された船や水面で遊ぶ水鳥たち。
まるでアムステルダムの街そのものが水辺公園のようです。


しかし、美しい運河のすぐ脇には混沌とした裏町が広がっています。


狭い路地の奥に彷徨い入る時は要注意!何故なら…
そこは飾り窓地区かも知れないからです!

王宮とダム広場のすぐ近く、静かな運河から通り一本隔てた場所には、先進国とされているオランダの首都の中心部であるにも関わらず無秩序に広がる売春地帯…

飾り窓などと言うときれいに聞こえますが、実際には、まぁ目を背けたくなるようなおぞましさが漂う場所です。
何しろ、通りに面して並ぶショーウィンドウの向こうから本物の、気迫漂う「売春婦」がガラス窓を叩いて、ぼんやりと歩いていた僕に向かって商売を持ちかけてくるのですから…
あの気持ちの悪さ、居たたまれなくなるような気分は、とても言い表せません。
しかもここは、アムステルダム旧教会の聖堂の真横なのです。
…真っ昼間に、観光客や子どもも普通に入って来られる場所で、しかも教会のすぐ隣で、売春が合法的に堂々と行われているというアムステルダムの現実。
僕には全く理解出来ません。オランダの人々は、これを本当に21世紀の当たり前の光景だと思っているのでしょうか?
聞いてみたい気がします。
日本では売春は禁止されていますが、ヨーロッパでは合法である場合が一般的です。
しかし、例えばドイツの港街ハンブルグにも歓楽街レーパーバーンがあり売春が行われている地帯がありますが、そこは事情を知らない観光客や一般市民、ましてや子どもや女性が間違っても入り込まないように明確に区切られ、入り口には見張りの警官まで立っています。
アムステルダムのように通り一本隔てて売春地帯などという街は、かなり異常だとしか思えないのですが…

オランダでは飾り窓の他にも街中に公然と大麻や一部の薬物を提供するいわゆる“コーヒーショップ”と呼ばれる店もあり、まあそういう国なんだと言ってしまえばそれまでですが、やはり僕はオランダのこういうところが根本的に理解出来ないのです…
アムステルダムの運河があれ程美しいだけに、その光と影の落差と混沌に考え込まざるを得ません。
考えても解答は出そうにないのですが…

少々考え疲れてうつむき加減で歩いていたら、こんな素敵な窓を見つけました。
こういう窓ばかりなら、もっと楽しい街になるでしょうね。僕も元気が出て来ました。
そろそろ中央駅に戻ろうかと思い、ダム広場の大通りへと向かう途中、
路地の向こうが一面、桃色に染まっているのに気が付きました。


路地の奥は幼稚園で、その庭に八重桜のような花が咲いていたのです。
…清濁併せ呑む、混沌としたアムステルダムの街にも春の花が咲く。
色々とあるこの街もまた、大きな空の下の広い世界の一部なり。
さあ、帰りましょうか。
→#031:オランダ・アムステルダム中央駅で高速列車タリスを眺めるに続く